専属護衛のスルースキル
ロモロス馬車組合の運用する乗り合い馬車は、停車する街が決まっていて、利用客も途中から乗ってくる事もある。
僕とヒルテが乗る馬車には専属冒険者も三人乗っていて、三泊目で入れ替わった。
ヒルテを見て一瞬緊張するけど、僕もヒルテもただの新米冒険者、一般人です御免なさいと心の中で謝る。
トラブルの匂いを嗅ぎ分けて、そっと触れないようにしてくれる護衛のかた達は、接客能力がかなり高いと思う。
僕はヒルテと違って暇なので、護衛の人達と世間話をして、この辺りの冒険者の暮らしぶりを教えてもらう。
八歳で冒険者をやるというのも大きな街なら珍しくないようだ。
これから向かうラグーンにも、見習い冒険者が毎日依頼を受けに来るそうだ。聞いた限りだと、ラズク村でただ同然にやっていたような雑務が多い。
でも報酬は小遣い稼ぎになるくらいはあるから需要はあるそうだ。
話す内に気づいたんだけど、この護衛の人達は知り合いの知り合いだった。
『海竜の鱗』のメンバーだった三人はロモロス馬車組合に請われて籍を移したという。
リーダーだったウロドさんが、ロドスに職場を移した話しをすると、非常に喜んでいた。
僕がガウツおじいちゃんの孫だと知ると都市国家群時代の話しをいっぱい話してくれた。
おじいちゃん、無口で固い人な姿を想像していたけど、結構冒険者時代は暴れてた?
乗り合い馬車はヒルテの思惑を外して順調に進みラグーンへ無事に着いた。
ドレム、デニク、ソロンの三人は、そのまま折返しの馬車の護衛をするので名残り惜しいがお別れだ。
冒険者の現実的な視線で、中級や上級パーティーの話しはとても参考になる。
僕がパーティーを作る事になったらどうしようか、そんな将来の想像が出来て楽しい。
冒険者にもいろんな人がいるんだなと思う。
最後に伯爵によろしくと言っていたけど、辺境伯が彼らと同じクランの盟友なのを思い出した。
まあ、僕は新米の冒険者だし、挨拶に行く気はないけどね。
母さんから聞いた話しよりも、領都ラグーンは更に大きく発展していた。




