洗礼
「私がどうかしたの?」
お約束の定番アリルさんがあらわれて受付嬢がアワアワするような展開はなかった。
かわりになのか別な定番で、自称『アリル親衛隊』が絡んできたけれど、なんか違うんだよ。
だって僕と同年代の女の人達なんだもん。
「アリルさんに何の用?」
「話しがあるなら私達が聞くわ」
「ここじゃ何だからあっちの隅へ行くよ」
数人の女冒険者達が次々と言葉を発して、母さんとヒルテを連れて行く。
僕は気づかれなかったのか、置きざりだ。
多分母さんやヒルテは姉妹に見られ、アリルさんに近づくファンか何かと勘違いされたのだろう。
母さんは母さんでアリルの所に連れて行くと勘違いしてそうだ。
ただ母さんが切れるとギルドがなくなるから、ヒルテが僕にも付いて来てと目で訴えている。
おじいちゃんや父さんは、きっと母さんが可愛くて仕方なかったろうな。
物知りなのに世間知らずというか、我が母親ながら純真過ぎて困る。
女冒険者の人達に囲まれた所にようやく本命の冒険者がやって来た。
サンドラおばさんが探していた知り合いの中に彼女もいた。
「レーナ、帝国に来ていたのね。サンドラさんから聞いて驚いちゃったよ。
ヒルテもいるのね、元気そうで何よりね」
そう言ってアリルさんが母さんを抱きしめる。
母さんは可愛らしい感じだが、アリルさんは綺麗な人だ。
凄味もあって、囲んでいた女冒険者達がオドオドしながら離れる。
「色々あってね。レガトを連れて冒険者に復帰しに来たの」
そう言って母さんは僕を手招きした。




