第28回配信 幼女(おっさん)は新しい装備が欲しい 〜今度こそ防具編〜
はい。結局親方に店まで引きずられました。街中の人たち誰も止めないの。プレイヤーもNPCどちらも止めないんだぜ。
幼女が髭もじゃに引きずられてるんだぜ。絵面的に犯罪だろ。
確かに全員最初は俺を引きずる親方を見てギョッとするんだよ。なんかその後に全員が竜子さんを見て納得した顔してるんだぜ。納得してないで俺を助けろよ。何に納得してるんだよ。全く意味が分からんかった。
で、その竜子さんは店の入り口付近の広いスペースで静かにお座りしてる。お利口さんである。
「で、小娘。新しい防具が欲しいってのはあれか?状態異常対策のアクセサリーを揃える気になったか」
状態異常対策?
「何でキョトンとしてるんだ。リオから聞いたぞ。小娘のステータスは偏り過ぎてるから装備で状態異常対策をするしかないからその内買いに来るってな」
あぁ、あれな。確かにイベント前に姐御に聞いてたわ。まぁ、すっかり忘れてたけどな!
忘れてたって言い辛い雰囲気だな。視線が明後日に行っても仕方がないと思うんだ。ついでに口笛でも吹いておくか。吹けないから形だけだけどなっ!
親方から呆れたような視線を向けれれてる気がする。
「小娘。お前忘れたな」
深い溜め息まで吐かれた。
「何故ばれたし!」
「普通に分かるわ馬鹿もん!」
髭もじゃの一喝ってよりビックリするよな。ほら竜子さんも………欠伸してるし。全く驚いてねぇな。
「いや、すっかり忘れてたわ」
「大事なことだから忘れるな」
ジト目で呆れる親方。今日の親方は百面相だな。需要があるのかは分からんけど。
「小娘。これからお前にアクセサリーは絶対に必要になるが買わなくていいのか?」
「えっ、絶対に必要になるの?」
そこまで言い切りますか。
「お前にというか冒険者でもなんでもだが上に行けば絶対に必要になる」
親方が腕を組み頷きながら話す。
「そもそも装備すれば必ず何かしらの能力が上がるんだぞ。それなのに装備しないでいるヤツがいるか?」
「成る程。確かにそんなヤツいねぇや」
装備整えるのは大事だ。縛りプレイ大好きマンだったら裸でクリアとかやるんだろうけど。残念ながら俺は縛りプレイに興味はないからな。
「しかも、お前はMINが低いだろ。今のままだと絶対状態異常にかかるぞ」
あ〜、状態異常の耐性ってMIN判定なんだ。それだと俺は間違いなくかかるな。
MIN上げてないしなぁ。かといってこれから上げる気もないしなぁ。
「その表情は理解したようだな。だからお前には状態異常対策のアクセサリーは必須なんだ。分かったか?」
「おう。分かった」
納得の説明だな。俺には状態異常対策は必須って事だな。
「分かればいいんだ」
親方が大きく頷く。
「さて、それじゃ何が欲しいんだ?」
そうだな。俺が求めているのは。
「なんか新しい防具が欲しい」
「お前は話を聞いていたのかぁぁ!!」
親方の一喝リターンズ。ちょっと額に青筋が浮いててお顔が危ない感じになってるぞ。
「話は聞いていた。確かに状態異常対策は必要になる」
「だったらわかるだろうが!」
「だが!俺が欲しいのはオシャレな防具なんだ!」
必要なのと欲しいものが一致するとは限らないだろう。そして一致しないなら俺は欲しいものを選ぶ!
あっ、流石に現実なら必要なものを買うぞ。
「はぁ、なんか疲れたな」
「大丈夫か?歳なんだから体調には気を付けろよ」
まぁ、俺も体調には気を付けないといけない年齢ではあるんだけどなっ!
「もう、いい」
なんか面倒臭くなって流された感じがするんだが。
「じゃあ、何が欲しいんだ?」
「防具」
「今のローブで不都合でもあったか?」
「全くない」
「じゃあ、なんで新しいのなんて欲しがるんだ?」
なんで欲しがるかって?そんなの決まっているじゃないか。
「他の奴らが新しい防具になってて羨ましかったからな!」
腕を組んで胸を反らす。
「そんな理由か?」
何故呆れる?そんな理由ってかなり大事な理由だと思うんですけど。
「まぁ、理由なんてなんでも良いか」
親方が顔を左右に振る。
「よし。じゃあ、どんなのが欲しいんだ」
うん。気持ちを切り替えたようだ。流石親方。
「今着てるローブみたいなのがいいな」
両手を広げてローブ全体を見せる。
「ローブ系か。そうなるとあるのは2種類ぐらいか。ちょっと待ってろ」
親方が頭を掻きながら奥に引っ込む。
2種類あるのか。どんなのだろうな。
すぐに親方が奥から戻ってきた。
結構ものが置いてありそうなのに戻って来るの早いな。
「よし。今あるのはこの2種類だな。どっちが良い?」
親方が2種類のローブを見せてくれる。
「おぉぉおお!!」
これは!?
防具
純白のウサギさんローブ 耐久値100%
物理防御力 25
魔法防御力 15
VIT +1
DEX +8
MIN +4
漆黒のクマさんローブ 耐久値100%
物理防御力 30
魔法防御力 10
STR +5
VIT +10
随分ファンシーな名前になってるな。今のローブって真紅のローブって名前だったけど。ウサギさんとクマさんって。
いや、でもしっかりフードにウサ耳とクマ耳ついてるな。確かにウサギさんとクマさんだな。
しかし、この髭もじゃがウサギさんとかクマさんって………。
「ん?どうした?俺の顔に何かついてるか?」
親方をジト目で見ても仕方ないと思うんだ。しかし何かついてるかと言われれば…ねぇ。
「髭」
それしかないよな。
「俺の髭はついてるんじゃなくて生えてるんだ」
なんか必死になってる。
「おぅ、そうだな」
親方にとってはデリケートなところなのかもしれないな。
「俺の髭はつけ髭なんて邪道ではない!」
あぁ、そういうやつっすか。
「親方。確かに俺はローブって言ったけどさ。なんでどっちも耳ついてんの?」
「なんだ、嫌だったか?普通のもあるぞ」
普通のあるんだ。
「いや、こっちの方が良いんだけどさ」
「じゃあ、問題ないだろ」
いや、俺が問題に思ってるのはそこじゃないんだけどさ。
「………………」
「……………………」
うん。闇が深そうだからこれ以上ツッコむのはやめておこう。
よし。気を改めてどっちが良いか選ぼう!
う〜む。どっちも可愛いよな。
「分かってるとは思うが装備によってステータスの上昇値が違うからな」
うん。分かってる。だが今の俺はステータスよりも見た目の方が重要なんだ!
二つのローブの周りをグルグル回る。後ろからの見た目とかも大事だからな。
おっ、どっちも尻尾がついてるのか。今のやつは尻尾はなかったからな。腕を上げたな親方。
ちょっと尻尾触ってみよう。
おぅ。どっちもフワフワしてるな。でもクマさんの方がちょっと硬いか?
「決まったか?」
「う〜ん……」
悩む。超悩むぞこれは。
「ちなみに今着てるやつもだがな。ここで買ったやつなら素材かソルを持ってくりゃ、俺が強化してやるぞ」
「マジで」
「おう。マジだ」
強化してくれるってことはだ。強化さえすればいつまでも現役で行けるってことだろ。これは良いことを聞いた。
「新しいのを買わないで今のを強化しても良いんだぞ」
「いや、新しいのは買う」
それとこれは話が違うからな。
「よし!決めた!」
折角だから俺はこのウサギさんローブを選ぶぜ!!
「よし。それだな。値段は7000ソルだな」
うむ。パパン狩りをした今の俺には金があるのだよ。
問題なくお支払いです。
「よし。確かにお代をもらったぞ」
よし!早速着用だぁ!!はい装備ボタンをポチっと。
「着心地抜群だぜ。相変わらず親方は腕がいいな」
ふわふわ触感だ。思わずその場でクルクル回ってみる。回る度にローブの裾がフワってなるのいいな。見てて飽きないぞ。
おぉう、調子に乗って回りすぎたら目が回った。
これはあれだ。一回メニュー画面の方で自キャラを見てみよう。おおぉ、ウサ耳がゆらゆらしてる。おっ、片耳が垂れる時もあるのか。芸が細かいな。
うん。初めからこっちで見ればよかったな。
「どうだ。気に入ったか?」
「おうよ!」
渾身の笑顔でサムズアップする。
「今回のも似合ってるじゃないか」
まぁね!まぁね!幼女にケモ耳は反則級だぜ!
これは良い買い物をしたぜ!これからは気分によって猫耳とウサ耳で分けていこう。
あぁ、困るなぁ、俺の可愛さが暴力級だぜ!
「あと小娘。お前にこれをやる」
「ん?」
親方が指輪を渡してくる。
アクセサリー
耐毒の指輪Ⅰ 耐久100%
毒耐性(小)
「えっ、いいの貰って?」
「お前は頭で考えるのは苦手そうだからな」
いきなりディスられましたけど。
「言って分からんからな。装備して効果を体感すれば状態異常対策もするだろ」
あぁ、そういうことですか。
「いや、分からなかったんじゃなくってだね。ただそれよりも今は新しい装備が欲しかったってだけなんだけど」
言っても分からん馬鹿みたいに言ってますけど違うんですよ。必要性は十分理解してますよ。
「必要だと分かってて買わないんだったら余計にタチが悪いぞ。黙って貰ってろ」
「はい。ありがとうございます」
これは反論してもダメなやつですね。
まぁ、いいや!新しい防具も買えたんだからな!
「親方ありがとうな!」
「おう、次はアクセサリーを買えよ」
「ははははは。それは気が向いたらな」
よし。では装備も整えたからこれからは武器振り回しタイムじゃあ!!行くぜ!竜子さん!




