第25回配信 幼女(おっさん)は新しい装備が欲しい 〜武器編〜
「新しい装備が羨ましい」
「ん?何か言ったかい?」
しまった。心の声がダダ漏れになっていた。姐御が武器を仕舞ってこっちを見ている。
只今姐御との特訓が終わってからの休憩時間。ぼーっとしていたら心の声が漏れ出てしまった。
あぁ、あのイベントの後からなんだが、何故か姐御から積極的に特訓を行うように言われたんだ。
姐御との特訓は楽しいからこちらとしても願ってもない事だから即OK出して今ではログインしたら結構な頻度で行っている。
それと姐御との特訓を繰り返してたら周囲のNPC冒険者が妙に優しくなったんだよな。お菓子を貰うことが多くなった。
お菓子もいいけど酒をくれって言ったけど誰もくれなかった。代わりにお菓子の他にツマミもくれるようになった。
余計に飲みたくなるだけなんですけど!?
まぁ、そんなことはどうでも良いんだがね。装備だよ、装備!この前のイベントで俺以外の全員が装備変わってるんだぜ!あのゴブプリですら変わっていやがった。
自分の装備に不満はないさ。ないけどさ、やっぱりオニューなおべべが羨ましくなるんだよ。分かるだろこの気持ち!むしろ分かれ!
「澪、ちょっとそこに立ってごらんよ」
はっ!?つい興奮してしまった。気付いたら姐御が近くにいるし。
しかし突然何を?まぁ、断る理由もないので立ちますけど。
姐御が指定した位置に立つと姐御がじっと見つめてくる。何だろうな。とりあえずなんかポージングでも取ってみるか?
「あぁ、変な動きはしなくて良いから。黙って立ってな」
変な動きって言われた。モスト・マスキュラーはダメか?超良い笑顔でやってみたんだが。
「今の装備は似合ってるけどね?」
何が不満なんだい?と首を傾げる姐御。
似合ってると言われると悪い気はしないですよね!まぁ、このパーフェクトなキャラクターの俺が着てるから似合うのは当たり前なんですけね!!
「装備に不満はないんだよ」
これははっきりと伝えておこう。
「つまりあれだ。お洒落をしたいとかそんな感じのやつかい?」
姐御の言葉がしっくり来た。うん。まさにそんな感じだな。俺もお洒落がしたい!
姐御の言葉に何度も頷く。
「まぁ、澪ぐらいの歳ならお洒落の一つでもしてみたいものか」
そう言って姐御は何か考えるような仕草をする。
いや、すんません。歳は関係ないです。どちらかというとゲーマーの気質といいますか、オタクの魂とでもいいましょうか。
「そうさね。服ならロジャーに聞くのが一番なんだよね」
うん。確かに防具は親方に聞くのが一番だ。というか俺は親方以外知らないという事実もあるけどな。
「しかしロジャーだけがあんたの装備に関わるのもなんだね」
親方だけが関わるってそりゃ親方の防具使ってるからね。
「私も何かやろうかね」
「いや、別に何か欲しいとかではなくてね。姐御」
なんか違う方向に行ってませんか?新しい装備は欲しいけどくれとは言ってないのよ?
「あんたを私の妹分だ。ここは姉貴分の顔を立てるもんだよ」
あ、はい。そういえば前回妹分って言ってましたもんね。
「それにあれだ。いつ馬鹿どもが澪に絡んでくるとも限らないからね。ここははっきりと目に見える形にしといた方がいいね」
姐御から達人の闘気のようなものが見えるんですけど。何考えてるんですか?
しかしあれだな。姉貴分ということはだ姐御が姉貴にランクアップしたって事だな。これは今度から姐さんって呼んだ方がいいのか?
う〜ん。姐御の方がしっくりしてるんだよな。姐さんも合ってるけど。やっぱり姐御だな。
姐御の妹分(公式)になったという事は、これはもしかして俺は最強のカードを手にしたのではないか?
これは無双が出来る案件なのでは?
よし、ちょっとどうなるか妄想してみよう。
不良冒険者に囲まれる俺パターン
俺のバックには姐御がいるんやぞ?お前ら覚悟はえぇんか!?
強敵に遭遇した俺パターン
姐御。こいつ等です。お願いします。
…………ダメだ。圧倒的三下にしかならん。人様の力をアテにするのはダメだな。人脈も力ではあるが俺は上手く使えそうにないな。調子に乗って破滅する三下になる未来しか見えんわ。
やっぱり俺は自分の力で何かをする方が好みだな。圧倒的パワーで粉砕するのが好物です。物量でゴリ押すのとかも大好きです。
「おい。おい!澪!聞いてるのかい!?」
はっ?しまった。妄想の翼を広げ過ぎていた。
「お、おう。なんだ、姐御?」
「その反応は聞いてなかったね」
姐御がジト目で見てくる。
「はい。すみません。ちょっと翼を広げて妄想の大空を飛んでいました」
「ん?ちょっと何言ってるか分からないけど。まぁ、相手の話はしっかりと聞いておきな」
「うす」
ここはしっかりと頷いておく。聞いてなかった俺が悪いしな。
「防具はロジャーの領分だからね。私からはあんたにこれをやろう」
そう言って姐御はでっかい両手斧を持ち出す。
「か、カッケェ……」
両刃の斧だ。刃の大きさと柄の長さが大体同じぐらいか。柄の部分には無作為に包帯の様なものが滑り止めの代わりに巻いてある。刃の部分は鈍色で装飾など一切ない。だけど曇りや汚れなど一切なく澄んだ色をしている。
無骨で正に漢の武器って感じがしてとても趣味に刺さります。
えっ?これをくれるの?マジで?
「気に入ったみたいだね。これは私が使ってた両手斧で名前を星堕としという。これをあんたにやるから使いこなしてみな」
こ、これをくれるというのか?こんな性癖モロ刺さりの武器を。
喜びで震える手で姐御から星堕としを受け取る。
「この手の武器は持ち主の力量で発揮する力が変わるからね。努力してそれの本当の力を引き出してみな」
「おう!」
うわぁ、ちょっとマジで嬉しいんだけど。よし!ちょっとこの喜びを全身で表してみよう。
「ははっ、なんだい?そのどっかの部族の狩猟の踊りみたいなのは?」
「いや、この喜びを全身で表してみたんだけど」
それがどっかの部族の狩猟の踊り……だと。
「ま、まぁ、獲物を獲れた喜びを表していると思えばそうなるのかねぇ……?」
なんか姐御に変なフォローされた!?しかも可哀想な子を見る目で見られてるし。
「人には得手不得手があるしね」
やめろ、そんな目で俺を見るなぁ!!
「その武器は今のあんたには完全に能力を引き出すことは出来ないからね。使いこなせるように努力するんだよ」
ほっ?何?これってそういう種類の武器なの?どれちょっと確認。
名前 星堕とし
武器種 両手斧
ステータス ATK ★★⭐︎⭐︎⭐︎
STR ↑↑↑
DEX ↑↑
能力 破壊不能
専用武器(所有権移行不可)
おぉ、なんか、武器の能力が知らない記号になってるし。これはあれか姐御が言う完全に能力を引き出せてないからこういう表示なのか?プレイヤーの能力で値が上下するって本当みたいだな。
上昇値とかどうなるんだろうな?こういうの見ると検証班が燃えるんだろうな。俺はあんまり検証には興味ないけど。
能力に破壊不能と専用武器とかあるし。多分これはオンリーワンな武器ってことだよな。こんなに漢の子の燃える要素をぶっ込んだ武器だなんて。マジで最高過ぎる。
これは早速モンスター相手にブンブンしてこなきゃいけないな。




