第8回配信 グッバイおっさん。フォーエバーおっさん
ギルドの説明をしたらすぐに3人ともギルドを変えていた。黎は神殿ギルド。虎ちゃんは騎士団に加入した。まぁ、この二人は順当だと思ったが、まさか白桜が魔法使いギルドに入るとはなぁ。思わず「お前魔法使えないじゃん」ってツッコんでしまった。
「エルフと言ったら魔法でしょ。だから試しに行ってみたのよ。そしたら問題なく加入できたのよ。勿論今はシーフだから魔法は使えないっていうのも説明したわよ。でも問題ないって言うからね」
そしたらこの返答である。魔法が使えないのに入れるって大丈夫か魔法使いギルド。もしくはあれかプレイヤーだからいずれ魔法は使えるからいいかっていう青田買い的なやつなのか。
とりあえず分かる事は俺たちは全員が所属するギルドが変わってしまったって事だな。これが今後どう影響するのか少し楽しみでもある。
それはさておき今日こそは配信をするか。前回初ソロ配信をしてから定期的にとか言っておきながらやってなかったからな。おっさんになるとに何かをやるというのはそれだけで凄い労力がいるんだよ。知っておいてくれ。
何をするかは全く決めていないが別にいいだろう。まずは東の草原にでも行くか。
今日も東の門ではスルーされますよ〜っと。
「お、嬢ちゃんじゃないか。久しぶりだな」
スルーされなかったよ。いつもはスルーされるのに今日はどうしたおい。
「おっさんか久しぶりだな」
おっさんと会うのは最初以来か。しっかり仕事してたのか?
見るとおっさんから疲労と哀愁が漂ってるのが分かる。
「おっさんは元気そうでは……ないな」
「そうだな。一部のぷれいやーが問題を起こしててな。俺たちは門番だってのに街の警備にも駆り出されてよ。人手が足りないんだよ。おかげで最近休みがなくてな」
ブラック企業まっしぐらだな。そしてプレイヤーが原因とはね。
「大きな問題は起きてないんだけどよ。住民から通報されれば無視は出来ないからな。最近その頻度が多くてな。はぁ、休みが欲しい」
深いため息だなおっさん。休みが欲しいって気持ちは俺も分かるぞ。
「おぉ、それで思い出した。姐御がシメるって言ってたぞ」
「はぁ?シメるって俺をか?そして姐御って誰だよ」
「冒険者ギルドのリオさん」
「はっ!?何で俺がシメられないきゃいけないんだ?よりによってリオだと?待て待て待て待て待て待て待て待て」
周囲の門番がおっさんから距離を取っている。
「隊長、リオさんにシメられるって何やったんですか?」
「何もやってねぇよ。あいつに何かする程俺は命知らずじゃない!」
おっさんが門番Aに詰め寄っている。この前の坊やではないな。他の門番はゆっくりと離れてってるな。まぁ、姐御怒ると怖そうだもんな。
「ちょっと、近づかないでくださいよ。俺も同じだと思われてシメられたくないんで」
「何だそれは!?俺が何したっていうんだ?おかしいだろ。俺は何もしてないぞ!っていうかお前ら俺から距離を取るな!」
おっさんの周りに空白が出来てるな。心なしか門番ズのおっさんを見る目が冷たい気がする。おっさん人徳がないのか?職場の上司が人徳がないってことか。うん、控えめに言って最悪だな。冷たい目で見られてろ。
「おい、嬢ちゃん。どういうことだ?どうして俺がリオにシメられなきゃいかんのだ!?」
おぅ、こっちに来た。涙目のおっさんのドアップはちょっとやめて欲しい。
「そんなに姐御が怖いのか?」
なんか震えてるけどさ。
「馬鹿野郎!リオだぞ。今では冒険者ギルドのフロアチーフなんてやってるけどな、前はギルドランクSの女傑だぞ!そんなのにシメられたら一般人の俺なんてすぐに死んでしまうだろうがっ!?」
門番ズを見てみると顔を青くして頷いている。へぇ、姐御って凄い人だったんだな。
「そんな奴に何で俺がシメられなきゃいけないんだ?理由を説明しろ、理由を!」
必死だなおっさん。ちょっと離れてくれないかな。
「おっさんがプレイヤーに冒険者ギルドしか教えなかったのが駄目だったらしいぞ」
「はっ?どういうことだ」
こうして見るとおっさんのキョトン顔ってキモいな。俺も気をつけよう。
「だからプレイヤーに魔法使いギルドとか神殿ギルド、騎士団を何で教えなかったんだってさ。おかげでプレイヤーが全員冒険者ギルドの所属になっただろ。だから苦情が全部冒険者ギルドに来て困るって言ってたな」
おっさんの顔から血の気が引いていくのが分かる。おっさん百面相だな。画面越しとかならいいけど直接はみたくないな。
「待て、ぷれいやーって言ったら冒険者になりたいんじゃないのか?」
「それは個人で違うんじゃないのか?」
他人の事は知らんし。
「あぁ、隊長やっちゃいましたね」
門番ズが憐れみの目で見てる。あぁ、おっさん頭抱えて崩れ落ちちゃったよ。
「マジかよ。確かに上からはぷれいやーが来たらギルドを紹介しろとは言われたけどよ」
あぁ、ギルド=冒険者ギルドって思ったやつか。よくある確認不足によるエラーだな。ドンマイおっさん。次があるといいな。
あぁ、ガクガク震えちゃってるよ。仕方ない。ここは少し言葉をかけといてやるか。
おっさんの肩に手を置く。深刻にならないように笑顔で言ってやろう。
「完全におっさんのミスだ。隊長なんだから責任とってシメられてこい」
「いやぁぁあああああ!!」
うん。いい事をすると気分がいいな。
「じゃぁ、俺は出るけどいいよな」
「あっ、はい。大丈夫です。情報提供ありがとうございました。これからはぷれいやーが来たら他のギルドも説明しようと思います」
そうだな。これからしっかり説明すれば君らはシメられる事はないだろうよ。
門番ズはおっさんには触れない。触れないことも優しさだからな。良い部下を持ったじゃないかおっさん。頑張れよ。明日があるかは知らんがな。




