新線建設と土木技術
キエシャ辺境伯領における新線敷設の最大の懸念だった、舟運関係者との交渉は、最終的に開始から半年で決着した。
業種転換者には、新たな仕事への斡旋と、教育期間中の賃金の保障を。そして、舟運を続ける人には他の領地での舟運業への転職や、海運業への転換の全面支援と定着までの賃金保障をした。
最大の壁であったキエシャ辺境伯領内での舟運継続希望者に関しては、うちの鉄道開通後に設ける渡し船事業や観光船事業(川下り)への採用と、これまで以上の賃金の支払い、そしてこれまで長年にわたり辺境伯領の河輸送の功績を顕彰する事業を行うことで妥結した。
顕彰事業は、具体的には博物館の設置と記念碑の設置だ。
かなり頑固な人も、自分たちの功績と歴史を未来永劫伝えるという文句に、最終的に折れてくれた。
もちろん、約束を履行するためには多額の費用が掛かるが、これは将来への必要経費と割り切れば、決して高くはない。
とにかく、こうして仮称南部線の建設はようやくスタートした。
経路は現在の終点であるワジフラ岳の麓から、シバシン男爵領をとおってキエシャ辺境伯領の領都バトに向かうルートだが、現在使用している機関車が、改良を続けているとは言え蒸気機関車であるために、なるべく勾配を緩和した線形である必要がある。
将来的に速度向上や、災害対策を考えれば、トンネルで貫いていくのが理想だが、長いトンネルは煤煙の問題があるので、いくらうちの奥さんの魔法が使えると言っても、さすがに現状では適合しない。
なので、路線は川沿いの勾配が緩やかな地域を選びながら、時に山を開削して線路用地を確保し、時に渡らずの橋を通し、さらに列車の交換や蒸気機関車の補給地を兼ねた駅や信号場を設置していく。
山の中に設けられた駅の多くは、付近に人家もない場所だ。しかし、川を挟んだ反対側にはいくつもの集落があり、これまでは不安定な舟運に頼る生活を送っていた。
それも、この鉄道の開通で変わる。
駅の近くには船着き場が設けられ、対岸の集落との間に列車の時刻に合わせて渡し船が運航されるからだ。
さらに、渡し船を運航するまでもないほどに、川幅が狭いところには橋が架けられることとなった。
これまでも鉄道用に橋を何本も架けてきた我が鉄道の技術チームに掛かれば、これは造作もないことだった。
今回の新線建設は、これまで敷設してきた路線よりも遙かに長く、付帯設備も多い。
だから我が鉄道の建設チームに加えて、キエシャ伯爵領内の土木業者や技術者、さらには国鉄からも人を出してもらって建設を行っている。
さらに人だけでなく、機械の方も数々の新兵器を導入している。何せ、これまでと違って建設現場に人が入りづらい場所が多く、人海戦術など出来ない。
だから最新型の蒸気クレーン車や、蒸気ショベル、ベルコンベアーを導入して、省人化と作業スピードのアップを図った。もちろん、既存の魔法技術も使える部分では使っている。
おかげで、新線建設の工事は1年で完了した。
いよいよ、南部線の開通だ!
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