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目指すは海!

「う~ん」


 開業から4年目を迎えてしばらく経ったその日、俺はルーレ王国の地図を睨みながら唸っていた。


 現在我がヤマシタ鉄道の経営は順調だ。開業以来ダイヤを改正する毎に列車の運行本数も増え、貨客ともに輸送量は右肩上がりだ。


 とはいえ、路線自体は開業以来変わっていない。駅の増設や駅施設の増強とかはあったけど、とにかく路線延長は変わらずだ。


 こうなると、収益はいずれ頭打ちになる。というより、前から言ってるけど、鉄道の輸送事業のみで稼げる額はタカが知れている。


 なので、周辺事業の多角化も進めて来た。駅構内での店舗経営に、バスの先駆けとしての乗合馬車事業、発電事業、小荷物運送、さらには鉄道車両の製造だ。これにいずれは森林鉄道や、トセ市内の路面鉄道も加わる。


 とは言え、本業のヤマシタ鉄道自体は路線が伸びたわけでもない。せいぜい、工場などへの引き込み線が多少伸びたくらいだ。


 そして忘れてはいけないが、このヤマシタ鉄道本線はいずれ国への買い上げと国鉄への編入が決まっている。


 その時に備えて、買収を免れる線の建設をそろそろ始めてもいいだろう。鉄道に精通した人材や車両も揃ってきた。


 とは言え、新規線の建設計画時代は以前から温めている。その案は3つある。


 一つは現在終点となっているワジフラ岳麓から、東に線路を伸ばす案。これはどっちかと言うと領内の開発を目的とした路線で、延伸先は森林地帯だ。なので、大規模な開発とセットにしないと乗客は見込めないし、加えて国鉄に買収されると完全な盲腸線になる。


 2つ目は、トセ中央駅からやはり東に向かう路線で、第一案よりは開発しやすい平坦な地区に路線を伸ばす案。


 こちらについては、トセの市域の拡大を狙って敷設する路線。ただし、市域内の路線となると路面電車として敷設した方が、後々良い可能性もある。


 3つ目は現在の終点ワジフラ岳麓から、南下して海を目指す路線。


 うちの領地は内陸にあるけど、お隣の男爵領を抜けて、辺境伯領に入れば港町がある


 港まで路線を繋げれば、その効果は計り知れない。とくに貨物の増加が期待できる。そこで海上輸送網と直結できるからだ。


 港町からは新鮮な魚介や、海外からの輸入品を。逆に港町へは輸出品を。


 さらに旅客輸送もだ。沿線の移動のみならず、海路を使って国内外へ向かう人々を運べるし、有事には兵員輸送にも活かせる。


 2人の領主を説得する必要があるが、他の2案に比べて路線長があるので、今後期待できる収益も大きい。


 さらに嬉しいことに、辺境伯領の港町への路線敷設計画が国鉄も策定しているが、今回うちが計画する路線とは競合しないルート。つまり、買収の心配もない。


「やっぱりこれだよな・・・よし!アイリ!」


「はい、旦那様」


「キエシャ辺境伯領に行くぞ!」


 こうして、次なるビッグプロジェクトは動き出し。

 

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― 新着の感想 ―
海への道てすか。 もし河川交通が有ったりしたら、舟運組合と揉めるでしょうな。 まぁ、平野部や山岳部を開発する第一案と第二案も、河川交通が有ったら、同じですが。
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