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鉄道の治安を守れ! 上

「列車が襲撃された!?」


 開業4年目突入を目前にしたある日、走行中の貨物列車が賊に襲撃されたという、ショッキングなニュースが届いた。


 我が領地は誇るべきことに、このルーレ王国内でも1・2を争う治安良好な地域だ。もちろん、殺人や強盗を完全に防げているわけではないが、それでも事件の発生率は他所の領地よりは少ない。


 ちなみにルーレ王国の軍隊は、戦争前まで各々の領地で編成された領軍の一部が有事の際に提供され、王家直轄軍隊の指揮下に入るという体制だった。つまり、各領主は自前の軍隊を自分の領地に抱えていた。


 それが、戦争中に抜本的な改革を実施し、全て国王陛下に献上して王国軍に編入としている。戦争に勝つため、軍とその指揮系統の一体化は必要不可欠だったからだ。


 もちろん、領地貴族からは反発を持たれたが、代わりに各領主には補償金の支払いの上で、新たに領地警察の編成権が付与されている。


 この領地警察の権限は、基本的に領地内の治安維持に限定されているが、領主が直接の指揮下における武装集団であることに変わりはない。


 なお、この領地警察の監視を兼ねて、全国規模の事件捜査を行う王立警察も別に編成されている。


 で、我がヤマシタ領内はといえば、戦争後に下賜された領地なので、軍隊は当初からなくて領地警察が基本的に治安維持を行っている。ただし、領内での犯罪に迅速に対応できるように、基本的に全警官が騎乗もしくは馬車の扱いができるように訓練してある。


 この警察が対応できない程の事態が発生した場合は、領地内に駐屯する国防軍に出動要請を依頼する。


 しかしながら、俺がこの領地に入って以来、そんな事態は起きなかった。


 それだけに、列車襲撃は衝撃だった。


「で、列車の被害は?」


「幸いなことに、機関士が機転を利かして速度を上げたことで、ふりきったとのことです。応戦した車掌と機関助士が負傷しましたが、死者は出ていません」


 貨物列車の場合、基本的に乗員は機関車の機関士、機関助士、投炭士に前後の車掌車に2~4名の車掌が乗り込む。電気機関車の機関士1名で運転し、なおかつ高度な安全装備に守られた現代の貨物列車と違って、蒸気機関車とほとんどの安全を手動で行っている初歩的な貨物列車ゆえに、関わる人間は多い。


 人件費がバカにならないと現代では言われそうだが、今回はその人数の多さが賊の襲撃を撃退する原動力になったようだ。


「わかった。負傷者には万全の治療を行い、あとで俺も見舞いに出る」


「畏まりました」


「しかし、そうなると賊は我が領地内を徘徊中か・・・」


「既に、領地警察は動いていますが?」


「いや、万が一被害が拡大してからじゃ遅い。至急領内駐屯の国防軍にも出動要請。それから、列車の運行を停止し、至急線路設備の点検と駅や列車の警備強化を。賊が再びの列車妨害をやらかさんとも限らん」


「畏まりました」


 部下に指示を出し終えて、その退出を見送ると、俺は思わず机を叩いた。


「忌々しい!俺の鉄道を傷つけるやつは何人たりとも許さん!場合によっちゃ、最終兵器(奥さん)を出さないとな」


 賊が骨まで残らんことになるかもしれんが、我が鉄道の平和を守るためには、やむを得ん!

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