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新たなビジネスと雇用

 ムーホ男爵から無事に車両製造工場建設の許可を取りけた俺は、まず新たにヤマシタ鉄道の子会社としてヤマシタ車両製造所という新会社を作った。鉄道の直営工場と言う形態も考えたけど、将来的に各鉄道会社に車両販売するなら別会社の方が良いかと思い、このようにした。


 ちなみに、出資比率は俺個人(つまり山下公爵家)が45%でムーホ男爵が5%に国鉄が10%で、残りの40%は全てヤマシタ鉄道とした。将来的に別の出資者が出て来た場合は、俺個人やヤマシタ鉄道からの出資分を分与する予定だ。国鉄の出資は、王都まで行って鉄道省と交渉して取り付けた。


 国鉄に出資てもらったのは、もちろん製造した車両の国鉄への買い上げを前提にしたものだ。今後全国に路線を拡張し、将来的には国鉄の車両工場では間に合わなくなることを見越して、こうした。


 会社の設立を終えると、工場の建設を開始。我が奥様の魔法で、土地の整地はものの数時間もあればできるので、あとは工場棟をはじめとする建物の建設や、線路の敷設、機械類の取り付けになる。流石にこれは魔法ではどうにもならないので、完全な完成までは1年を見込むことになる。


 さて、そうなると社員の養成が必要不可欠だ。


 車両の製造や修理を行うとなれば、工場で働く多数の労働者や、その労働者の労務を管理する事務職員、健康を管理する医療従事者、そして全体を統括する幹部職が絶対に必要だ。


 工場が稼働するまでの1年の内に、これらの人材を集めるなり育成するなりする必要がある。


 そこでまず、ヤマシタ鉄道から一部の人間を引き抜く。引き抜くのは車両の修理などの経験を有する人間や、労務管理経験のある事務職員たちだ。もちろん、その数はほんの数名だ。工場に必要な人間を全員引き抜いたらヤマシタ鉄道が立ちいかなくなるからね。


 続いて、鉄道車両の製造や修理に必要な金属加工技術を有する人間や、事務経験者を募集した。この世界では少数派の人々だが、それでも数名の応募があった。


 これで20名程の人間が集まり、彼らを工場稼働後は幹部職にすることを前提とした技術指導職とした。つまり、これらの人々は先生だ。となれば、次に集めるべきはその生徒たち、つまり工場稼働後は大多数を占めることになる工員たちだ。


 さて、前にも言ったけど、この世界では最近になってようやく、初等教育制度が整備されたばかり。なので、文盲であったり、簡単な計算すら出来ず、単純な作業や農業や鉱業に就く人が多い。


 なので、そうした人たちへの教育も必要だ。これには、故郷日本にあった夜間学校みたいなものを整備しようと思う。ぬるい現代日本人の自分がこんなことさせるなんて罰当たりだけど、昼間は工場勤務に備えた仕事の勉強、夜は教養をがんばってもらうとしよう。


 将来的には電車の製造も目指すんだから、これくらいはしてもらわないと。


 もちろん、その苦労に見合うだけの給料と各種厚生制度はちゃんと整備する。ブラック企業とは呼ばせないぜ。



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