運び出して、持ち込んで
我がヤマシタ領の主要な産業は、以前であればトセ周辺での家庭内手工業の範囲を出ない小規模な製造業と、ワジフラ岳での石灰石の産出を除けば、基本的に林業と農業が中心であった。そして、俺がこの領地をもらい受けるまでは、基本的にそれらの産業で産まれた産物は地産地消するだけであった。
これは生産量が少ないというのもあったけど、保存技術や輸送技術がないために、例え多量に生産(収穫)できたところで、外へ売るのが困難だったからだ。
しかし、ヤマシタ鉄道が開通するとともに、発電所が稼働して工場の建設に目処が立ったことで、状況はガラリと変わった。
これまで領内でしか消費する目処がなかった産品は、領外への産出が容易になり、また発電所の建設と工場の稼動は、それらを加工することも可能とした。
特に林業は、一気に有望な輸出品になった。それまでは馬車で運ぶか、増水期の川を使った舟運という少量かつ不安定な輸送手段しかなかったのが、貨物列車を使うことで定期的に大量に運び出す目処がたったからだ。
という訳で、開業2年目から木材輸送可能なようにレール運搬車を改造した長物車を利用して、木材の領外への輸出を開始した。
この輸出は好調で、木材の伐採が追い付かないくらいだ。もちろん、野放図に伐採を続ければ禿山だらけになってしまうので、新たに森林管理公社を創設して、計画的な伐採制限や、伐採後の植林と言った計画も定めた。もちろん、数十年のスパンを見ての計画だ。
現代日本の様に、スギやヒノキを大量に植えたはいいけど、放置プレイして花粉症大国にするような愚は犯さないぞ!
さらにそうした作業を行いやすくするため、森林鉄道の建設も開始した。日本の森林鉄道を参考に、軽便規格のSLやトロッコを使用する予定だ。
また農業に関しても、領内に乾燥野菜や缶詰工場を建設して、加工品を売り出す体制を着々と整えている。
そしてそうした工場の建設で必要となる資材や燃料で足りない分は、逆方向の貨物列車で領内へと持ち込むという寸法だ。
貨物輸送で一番厄介なのが、片方向にしか貨物がない事態が発生することだ。往路は荷物を満載した貨車が、復路では空っぽでは輸送効率が悪いということだ。
さすがに現状の輸送品目では、往復路どちらも満載と言うのは虫が良すぎる話だけど、少なくとも空っぽと言う事態は、これで避けられるようになった。
そしてこうした貨物需要の増加は、必然的に機関車や貨車の増産を促すことになる。これまでは国鉄の工場に生産を依頼していたけど、国鉄の方も輸送量がようやく伸び始めたことや、国内での新線計画が動き始めたことで、車両の製造需要が増加した。つまり、うちの鉄道で発注しても、完成して納品されるまでの時間が伸びるし、もちろん価格も上がる。
こうなってくると、いよいようちの鉄道も、自前で鉄道車両の生産を視野に入れなきゃいけない時が、来たということになる。
森林鉄道用の車両も用意しなきゃいけないし、国内の鉄道の新線計画もようやく動き始めて今後の車両需要もある。
自前で鉄道車両を製造できる工場の整備をする時が、いよいよ来た!
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