鉄道網拡大に向けて
我がヤマシタ鉄道の経営は、幸いなことに貨客ともに安定している。そして、戦後は旅客面で苦戦していた国鉄も、俺の提言を受けるまでもなく、異世界から得た地球における鉄道経営の歴史を参考に、矢継ぎ早に新施策を打ち出して、旅客の拡大に努めていた。
夜行列車の設定や、企画乗車券の発売、或いはイベント時や長期休暇時の臨時列車の運転、そしてそうした施策を新聞広告に出しての積極的な宣伝と言った具合だ。
その甲斐もあってか、なんとか乗客数は増加し始めたらしい。おかげで、棚上げになっていた新線の建設も、ようやく一部で予算が手当てされて再開されたそうだ。
加えて、うちの鉄道と同じく将来的な国鉄による買収を前提とするものの、一定期間の自主経営を認める形で鉄道の敷設を許可する策に、ようやく一部の貴族や商人が乗っかり出したらしい。これは国による積極的な働きかけに加えて、我がヤマシタ鉄道の経営が好調なのも理由の一つだった。
我がヤマシタ鉄道は開業以来、幸いなことに黒字経営。しかも鉄道に加えて、周辺事業も少しずつ始めているので、意外と売り上げは大きい。
そんなわけで、開業から1年が経過すると、方々の貴族様や商人の視察が相次いでいる。うちや国鉄の成功を見てのことだけど、この視察の旅に俺は再三、鉄道が輸送のみでは利益は産み出しにくいことや、大規模な公共工事を伴うゆえに、広い視点での開発や運営が求められることを説明した。
戦前の日本みたいに、投機目的で鉄道会社を作って免許を取得されたり、完成前から資金面や運営面で問題を抱えた鉄道会社を作られては、堪らない。
もちろん、免許を出す側の鉄道省にも、口酸っぱくこの点に関しては注意してあるし、法整備もしてある。
そう言うわけで、有象無象の連中は早々と除去されていき、結果的に厳格な審査を通った数社に敷設免許が交付された。
さて、そうした免許を交付する鉄道省の役割は増々大きくなっているわけで、当然ながらそれに伴い人材も必要になってくる。
この人材育成に必要な教材は、俺が地球から取り寄せた資料を参考に作成しているが、それだけでは不十分だ。鉄道の何たるかを知るには、例え短期間であっても実地研修が必要。
なので、我がヤマシタ鉄道では、この鉄道省の研修生の受け入れを開始した。
これに関して、一部の社員からは「鉄道省へ露骨な便宜をはかっていると受け取られるのでは?」と危惧する声もあったが、鉄道省側から猛プッシュされたのだからやむを得ない。何せ、研修できるのは国鉄かうちの路線くらいしかないのだから。
そこで、俺は鉄道省からの人材受け入れと同時に、これから新線を作る各鉄道会社からの研修生も同時に受け入れ、技術や経営ノウハウをオープンにした。
自分の手の内を晒すのは商売としては、失格かもしれないけど、このルーレ王国の鉄道網拡大に貢献できるなら、俺はそれで構わない。
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