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次なる野望

 アイリの妊娠判明と言うハプニングはあったものの、俺たちは予定通り避暑地でのバカンスを楽しんだ。


 喧騒や人の柵とかから離れて、湖畔で静かに体を横たえるだけでも、心と体が随分と落ち着く。やはり定期的にこうした長期休暇は必要かもしれない。今後は社の厚生制度にも盛り込むかな・・・と、いかんいかん。また仕事のことを考えていた。


 で、バカンスは恙なく終わり、俺たちはトセに向かって再び列車に乗り込んだ。


「アイリ、大丈夫か?」


「もう、旦那様。その質問何度目ですか?行も無事に来たじゃないですか。大丈夫ですよ」


 当人が言うのだからそうかもしれないけど、ようやく娶った奥さんの初妊娠となれば、こっちも色々心配になるんだよ。


 特に今回特別車を仕立てているとはいえ、まだまだ軌道も車両も発展途上で、揺れはヒドイ。アイリの体に障らないかと心配になってしまう・・・これは早めに寝台車を用意した方がいいかな?


 ちなみに、このルーレ王国の鉄道には寝台車どころか、夜通し走って目的に向かう夜行列車の設定も、まだない。戦争中に兵員や物資を輸送するために、夜行列車の設定はあったけど、あくまで非常時に措置で、しかも兵員輸送列車はとにかく兵士を前線に早く送るだけの列車で、乗り心地とか居住性は二の次三の次だった。


 そんな戦争中、すなわち鉄道開通初期段階から旅客向けの夜行列車や寝台車の運転計画は、あるにはあった。しかし結局のところ、鉄道の旅客需要がまだ十分ではないため、計画段階止まりだ。


 ただ今回訪れたツイゴマのような避暑地に向けて、富裕層をターゲットにした寝台車なら、需要が既にあるかもしれない。


 今度王都の鉄道省に行った時に、クマラギ大臣に相談してみようかな。ついでに、ツイマゴで思いついたケーブルカーやロープウェイについても、相談しないとな。技術的な書籍は地球から取り寄せ放題とはいえ、通常鉄道とはまた違う乗り物だから、敷設するには準備をしっかりしておかないとね。


 そんなことをあれやこれやと考えていた時、突然列車に急ブレーキが掛かった。


「どうした!?事故か?」


「わかりません!」


 と、外を見ると明らかに武装した怪しい集団が列車に駆け寄って来た。


「賊の襲撃だな・・・アイリ。殺さない程度に倒せる?」


 身重だけど、魔法使えるかな?ダメなら、使用人たちにお願いして戦ってもらうしかないけど。


「御安心ください旦那様。これくらいなら、お腹の子供にも影響ないでしょう」


 そして、彼女が軽く魔法を詠唱すると。


「「「ギャアア!!??」」」


 列車に駆け寄って来た賊どもが、悲鳴を上げてぶっ倒れた。


「大丈夫です。失神させただけですから」


 と、笑顔で言い放つ我が妻・・・絶対夫婦喧嘩しちゃダメだと、俺は再確認するのであった。


 ちなみに、賊どもはその後縛り上げて次の駅で警察に引き渡した。急ブレーキの原因は、連中が線路上に置いた倒木に気づいてのことだと、後から知った。


 しかし、こうなると鉄道警察隊も早急に作る必要がありそうだな。

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