夏休み・・・なのか?
難民受け入れから4カ月、季節は夏本番。色々と忙しかったけど、それも一段落したので、俺はアイリを連れて夏旅行に出かけることにした。
行先は高原の避暑地であるツイマゴ。もちろん、現地までの移動手段は鉄道だ。しかも、タダの定期列車で行くのは芸がないので、身分特権を発動して団体列車を仕立てた。
4両編成の列車は一等車と食堂車、そして荷物車の超豪華編成で、俺たち夫婦以外に、日々俺たちのために奉仕してくれている屋敷の使用人たちもほぼ全員(ほぼなのは、どうしても屋敷の維持と警護役に人が必要だったため)も誘っている。
「畏れ多いです!」と言われたけど、こんな時くらい偉い人ぶらして欲しいのと、鉄道旅普及のために強制とした。
列車はトセ駅を発車すると、オジリシ駅から国鉄線に入り、途中のサタキカ駅でスイッチバックし、開業してから日が浅い支線に入った。
「随分と登りますね」
機関車は喘ぐような走りとなり、その勾配は客車に乗っていてもわかる。
「高原の避暑地だからね。にしても、まだまだだな」
現代日本人からすれば、これくらいの勾配電車にしろ気動車にしろ、悠々と登っていくのに、出力の小さい蒸気機関車は文字通り喘ぐような状態だ。
この世界での鉄道発展はまだまだだ。
そんなこんなで、トセを朝に出たにも関わらず、目的地のツイマゴ駅に着いたのは、夕方近くになっていた。
俺たちは馬車に乗り換え、林の中の1本道を進んでいく。すると、15分ほどして視界が一気に開けた。目指す別荘地に着いたようだ。
この辺りは貴族向けの別荘地で、さらに奥に進むと国王陛下が夏の静養に使う離宮もある。ツイマゴへの鉄道が通された理由は、そこにある。以前だったら馬車で片道3日の行程を、汽車なら1日で来れるというわけだ。
だからこの路線、支線なのに走る2往復の列車は全て王都からの直行で、しかも一等車連結と来ている。上流階級の利用を狙っているわけだ。
ちなみにこの路線の建設自体は、夏の離宮への最寄り路線と言うことで、鉄道建設の初期段階から策定されていたが、軍事輸送が優先されて、建設は行われたものの、優先順位が低かった。
まあ、それはさておき。そんな路線を、俺たちは国王陛下よりも前に利用させてもらった。というか、国王陛下から「路線できたから乗ってこいよ!」的な手紙もらったから、て言うのも大きいんだけどな。
今回宿泊するのも、さすがに離宮ではないけど、本来は王族が招待した賓客向けの迎賓館だし。これも国王陛下の差し回し。何でも、最近改築が終わったから、是非とも泊まって感想を寄越せと・・・
あれ、今さら思い返すと路線の試乗をさせられて、迎賓館に泊めさせられる。全然休みじゃないような・・・
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