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最初の難民輸送列車を走らせろ!

 王都に赴き、国王陛下と内務省を訪ねた俺は、さっそくガーナノからの難民受け入れの許可をもらった。


 ついこの間まで敵国だった地域の人間を迎え入れるのだから、国王陛下はともかく、総督府の上位組織とも言うべき内務省(総督府長官は国王任命だけど、構成人員のほとんどは内務官僚)からは、反発が出ると予想した。


 ところが、行ってみると内務大臣のドキ大臣からあっさりと「大丈夫です」と言われ、拍子抜けしてしまった。


 なんでも、内務省でも旧魔王国の統治は色々と四苦八苦して行っているようで、そんな中での大規模災害による難民発生は、手に余る事態だったようだ。だから、他の貴族たちが難色を示すであろう難民受け入れを、自分からやってくれるのは、むしろ歓迎するべきことだったらしい。


 とにかく、こうして国王陛下からのお許しと、内務大臣名での同意文書をその日のうちにもらうと、翌日早朝には鉄道省に行ってクマラギ大臣と会って、難民輸送列車運転のための根回しをしておく。


 戦争中に魔王国の前線に向かって敷設された線路は、現在ルーレ王国と総督府領(旧魔王国)を結ぶ幹線の役割をしている。そして幸いなことに、この路線はガーナノの近くを掠めるように走っていた。


 だから難民の輸送を、俺は鉄道ですることを考えた。1000人だと3~4本程度の列車を走らせれば充分な筈だ。


 最初俺は、この難民輸送列車が一からダイヤを新たに設定する特別運転列車になると思っていた。だから、時間もコストも相応に掛かると覚悟していた。


 しかし、鉄道省で幹線の運行担当をしている者から言われたのは「臨時列車のスジを利用できます」とのことだった。


 この臨時列車のスジは、本来は軍隊の輸送用の復路用に割り当てられているものとのことだった。つまり、総督府領で大規模な反乱や騒乱が発生した際に、本国から軍の部隊を派遣する。そして往路で軍隊を運んだ列車は、復路では避難民や負傷者の輸送が考慮されているとのことだった。


 まったく、本来総督府領で旧魔王国民を抑えつけるために、軍隊を運ぶことを想定していた列車でその魔王国民の避難をすることになるとはね。


 だから俺の隣に座るアイリは、何とも言えない顔をしていた。


 だけどまあ、使えるものを使わない手はない。詳細は今後詰めるにしても、これで難民を俺の領地まで運ぶ目処が立った。


 こうして鉄道省での打ち合わせを終えた俺たちは、そのままトセにとんぼ返りして、国鉄から乗り入れる難民輸送列車の運行準備と、難民の受け入れ準備に入った。


 難民輸送列車はオジリシ駅からスイッチバックして直通するので、そのためのスジの確保や、要員の確保の準備が慌ただしく策定された。


 そして肝心の難民の受け入れ先だが、うちの優秀な行政官の手早い仕事により、トセ中央駅からオジリシ方5km地点にある森林地帯を開拓地として提供することに決定した。


 この場所はトセの市街地の端から遠すぎず近すぎず、今後学園都市として建設する候補地の一つとなっていたので、ちょうど良い場所と言えた。


 ここまで要した時間は3日。一部の行政官には不眠不休を強いてしまったが、まあそれはあとで特別休暇とボーバスで相殺させてもらおう。


 そしてこのタイミングで、王都の内務省と鉄道省から難民の移送準備が出来たという報告が来た。


「よし、やるぞ!」


 我が領地最初の難民受け入れ大作戦は、こうして始まった。




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