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王都に向かえ!

 開業から4カ月を迎えたある日、俺は妻のアイリや本社勤務の数名の社員とともに列車に乗って首都へと向かっていた。毎日1往復運転される国鉄直通列車の1等車に乗車している。


 今回は、鉄道省のクマラギ大臣からの呼び出しによる。その要件は、二週間前に届いた国鉄からの早急な経営改善策の提言を求めるものだった。


 戦時体制下で敷かれた国鉄は、戦争が終わると当然民需輸送中心に転換したのだが、戦時輸送第一に敷設された路線だから、需要の発掘に苦戦しているとのことだった。


 そこで最初は、提言策を書類にまとめて、ついでに向こうの世界における鉄道経営の歴史に関する本をつけて、送付した。


 言っておくけど、この世界に来る前の俺は、鉄オタのしがない地方公務員で、別に鉄道経営のプロでも何でもない。だから行くまでもなく、これで充分と思ったわけだ。


 ところが大臣からすぐに返信が来て「口で直接聞きたいので、御足労願います」とあったので、やむなく直接行くことにした。


 列車はオジリシ駅の連絡線から、国鉄線へと進入した。


 ちなみに、列車はそのまま直通するけど、機関士をはじめとする乗務員は全員交代となる。


「検札です。御協力お願いいたします」


 オジリシ駅を出発した直後、国鉄の車掌が検札にやってきた。


「はい、切符お願いします」


 俺は隣のアイリの分と合わせて、切符を差し出した。


 車掌は切符を一瞥し、さらに座席番号を照合し、正しいのを確認すると入鋏した。


「はい、ありがとうございます」


 車掌は一礼すると、次のお客の元へと向かう。


「合格点だな」


「旦那様?」


「いや、国鉄の社内サービスのレベルを見たんだよ。一応鉄道学園の養成じゃ、接客術も入れてあったけど、ちゃんと教育が行き届いているみたいで、何よりだよ」


 どこかの国鉄じゃあ、国の鉄道と言う立場に胡坐をかき過ぎて、乗客へのサービスレベルが著しく落ちたなんてことがあったからね。


 そうならないように、国鉄(ついでにうちの鉄道もだけど)では、車掌や駅員への教育に接客術を含めている。対価を貰ってサービスを提供する以上、最低限の礼節と言うものは、やっぱり守らないとね。


 その後列車は、無事に王都の中央駅へと到着した。


 無事に到着したいのは、いいんだけど。


「う~ん。これじゃあな・・・」


 目の前の光景に、暗澹たる気分になる。


 王都中央駅は将来、このルーレ王国の鉄道網の起点となるべく、現段階で5本の長い島式ホームを備えているし、さらに拡張する余地を残している。


 しかし、今俺たちが降りた中央駅は、その広大な設備を完全に持て余して、閑散としていた。


 俺たちが乗って来た列車から降りた乗客も、あまり多くない。


 列車の本数がまだ少ない上に、比例して乗客も少ない。閑古鳥が鳴いているというやつだ。


 俺のヤマシタ鉄道も、決して四六時中賑わっているわけじゃないけど、地方領を走る盲腸線と、国の基幹幹線がこれでは、話にならない。


「確かにこれは、梃子入れが必要だな」


 これから向き合う問題に、俺は思わず舌打ちした。

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