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追放された村娘に《魔神の瞳》は荷が重い  作者: 佐藤悪糖
2章 それでも、幸せになってほしい誰かがいるから
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2-6 こういう仕事を回されるくらいには信用がある

 アルタの呪いが解けなかったことは、私にとってはいいことだったのかもしれない。

 だってアルタは呪いを解くために迷宮に潜っているのだ。呪いが解ければ、彼が迷宮に潜る必要もなくなってしまう。そうなればパーティも解散という話になるだろう。


 私一人で迷宮の最下層へと至るのは無理だ。アルタ以外に迷宮攻略なんていう命がけの馬鹿につきあってくれそうな探索者の知り合いもない。結局のところ、私にだってアルタという助けが必要なのだ。


「ルーク。今日はどうするんだ」


 翌日の朝、私たちは再びギルド酒場で顔を突き合わせていた。

 今日は迷宮探索に出ようと約束していた。前回の探索から二日も空けてしまったのだ。あんまり日を空けると身体が鈍ってしまう。


「それなんだけど、とりあえずの目標として第二迷宮を目指そうか」


 私たちの目的は第一迷宮ではなく、もっと深いところにある。いつまでも第一迷宮の浅い層で安全に稼いでいたいのはやまやまだったが、そうも言っていられない事情ができてしまったのだから。


 第二迷宮に挑むにあたり、課題となるのは戦力だ。第二迷宮の入り口は第一迷宮の最深部にある。聞くところによると、第二迷宮の最深部には第三迷宮の入り口が、第三迷宮の最深部には第四迷宮の入り口があるらしい。そんな風に、アルザテラ大陸の大迷宮はいくつもの迷宮が縦に連なって作られている。


「第二迷宮に行くには第一迷宮の一番奥まで行かなきゃいけない。そこには第二迷宮に至る道を塞ぐ門番(キーパー)がいる。それを倒せないようじゃ次の迷宮には行けない」

「強いのか?」

「強い。挑んだことはないけど、迷宮深層の魔物に手こずるようじゃ歯が立たないって聞いた」


 それを聞いて、アルタは特に動じることなく言ってのけた。


「俺たち、倒せるんじゃね?」


 それについては、わからないというのが答えになる。

 アルタの戦闘力は底知れないし、私の念動力(サイシス)だってまだロクに試していない。念動力抜きでも深層の魔物と戦えていたのだから、今なら門番相手でも渡り合える可能性は十分にある。


「かもしれないね。だから今日は、連携のすり合わせのために深いところまで行ってみたいと思う」

「いきなり挑んじゃダメなのか?」

「今日は様子見まで。攻略戦はまた今度。僕、慎重派」


 この男と一緒に行動する時は一切の楽観視は許されない。警戒しすぎるくらいで丁度いいのだと、私は前回の探索で十分に理解させられた。あんな大冒険、二度とごめんだ。今回こそは普通に探索して普通に帰るのだ。


 アルタが装備の点検をしている間、私は一人で受ける依頼を選んでいた。深層の依頼を探したが、いまいちピンと来るような依頼がない。どれにしようかと掲示板の前をうろうろしていると、スノーベルさんに声をかけられた。


「ルークくん。こっちおいで」

「? はーい」


 呼ばれたのでカウンター前に出頭する。何用だ。


「今から依頼受けるとこ?」

「はい、そうですけど」

「ちょうどよかった。君たちに任せたい依頼があるの」


 お、指名依頼か。探索者として実績を積んでいると、時々こうやってギルド側から指名されて依頼を紹介されることがある。この手の依頼は特殊技能を求められる分、割がいいのだ。


「あそこにいる二人組のことなんだけど」


 スノーベルさんが指差したのは男二人のパーティだ。男というか、少年というか。装備には使い込まれた跡がなく、雰囲気もどこか浮ついている。きっと初心者なのだろうということは一目でわかった。


「あの子ら、今日が初探索なのよね。しかも二人とも初心者」

「見たところそんな感じですね」

「今日中に第二迷宮まで行くんだって言ってるわ」

「あー。じゃ、最低でもどっちかは死にますね」


 どんなに才能があったとしても、はじめて迷宮に潜った日は剣を持っただけの一般人の域を出ない。迷宮に行って帰ってくるだけでも上出来なのに、第二迷宮を目指すなんていうのは自殺と同義である。


「ルークくん。お願いがあるんだけど」

「あの二人の後ろをこっそりつけて、危ないことがあればフォローすればいいですか?」

「あら、話が早いじゃない」

「この洗礼、僕も二年前に受けましたから」


 慎重であろうと無謀であろうと、なりたての探索者の死亡率はとても高い。特に最初のうちは、先輩探索者が初心者の後ろをこっそりついていくというのは、お決まりの通過儀礼だったりする。かくいう私だって、二年前に同じ洗礼を受けた覚えがある。


 今日は第一迷宮の深層に再挑戦するつもりだったけれど、そういうことなら仕方ない。連携の再確認くらいなら浅層でも十分可能だ。


「急に依頼押し付けちゃってごめんね。今度いい仕事紹介するわ」

「いいですよ。でも、紹介はお願いします」

「ちゃっかりしてる」


 頼み事を断るのは苦手だけど、こういう依頼はそもそも断ろうと思えない。私だって、初心者の頃は散々お世話になったのだから。なので私は、二つ返事で依頼を受けた。

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[気になる点] 全話のラストでサラッと流れ星作ってるけどこっちに来ないだけの隕石魔法って魔力凄ない?
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