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素材集め

 昨日はひどい死に方をしたが、気持ちを切り替えてランク上げをしていこう。


「よっすフィーネ。今日はどのクエストやる?」

「ごめん。今日は外せない用事がある」

「ありゃ、そうなのか」

「ん。食スレの食材交換会。ライも来る?」

「止めておく。フィーネもまたクルャヌメメポスみたいな謎食材貰って来るなよな?」

「くりゃ……? 何それ?」

「え? いや、昨日俺に渡して来たアイテムじゃん」

「知らない。私、昨日はリリィとダンジョン行ってたからライとは会ってない」

「えぇ……?」


 そ、そんなバカな。俺は昨日確かにフィーネとBランククエストを受けまくってた筈……。


「じょ、冗談だろ? そういうの怖いから止めてくれよ」

「それ、おいしいの? 食べてみたい」

「いやいや、いやいやいや! 昨日チーズリゾット作ったじゃん! 昨日会ってないなら、このストレージに入ってるクルャヌメメポスはいったいなんなん……ひぃっ!?」


 ストレージが、クルャヌメメポスで埋め尽くされている。

 オブジェクト化のボタンを押してもいないのに、次から次へと現れて増えていく。


「ど、どうなってるんだ!?」

「ふふふ、変なの。見てライ、私の体もクルャヌメメポスになってくよ」

「フィーネ!?」

「あはは、あはははは!」


 フィーネだけじゃない、目につく物全てがクルャヌメメポスへと変わっていく。


「う、うぅ……」


 何もかもがクルャヌメメポスに変わっていく中で、俺だけが人のカタチをしている。


「う、あ……?」


 そんな俺を見つめる巨大なナニか。星よりも、銀河よりも大きなナニか。気が遠くなるほど離れた距離から此方を覗き見ているのに、直ぐ近く、耳元から声がした。


 オマエジャナイ。









「って夢をみたんだけどさ。大丈夫だよね? 昨日俺と一緒に遊んだよね?」

「ん。大丈夫、チーズリゾットも美味しかった」

「だよな! いやぁ、この歳でもう耄碌し始めたのかと思ってビビったぜ」

「そこなの!? 明らかにそれより怖いの出て来てたわよね!?」

「いや、あいつお前じゃないって言ってたし。なら平気だろ。それに俺、宇宙の夢は割りとよく見る方なんだ。リリィはみないのか?」

「夢自体そんなにみるものじゃないでしょ?」

「そ、そもそも今の話、宇宙とか関係無く悪夢なんじゃないでしょうか!?」


 今日のメンバーは俺、リリィ、フィーネ、ティナだ。ルルは部活の助っ人を引き受けていて、今日明日と県外にいるらしいので不参加だ。県外遠征に参加するレベルの助っ人とはいったい……。

 そしてこのパーティーの本来のリーダーであるライトは、ウォーヘッドと共に新たな漢のロマン (意味深)クエストの噂を入手したため不在だ。奴らの湯煙見返りゴリラハーレムの傷も、もう癒えたとみていいだろう。

 俺も本当ならそっちについて行きたかったんだが、残念なことに先約が入っていたので泣く泣く諦めざるをえなかった。そのおかげで今はハーレム状態な訳だけど、それももう少しで終了な悲しみ。


「それでライ君、もう一人のメンバーってまだ来ないの?」

「ログインはしてるみたいだからそろそろ来ると思う……っと、来た来た」

「ぬおおっ、拙者とした事が集合に遅れてしまうとは……! あっ、ライリーフ氏! 拙者からお願いしたと言うのに遅れてしまい誠に申し訳ない!」

「このくらいは誤差みたいなもんだろ、気にすんなよ」


 本日の五人目のメンバーはオタ丸だ。今日の目的は、オタ丸が作るパワードアーマーに使えそうな素材の入手である。道すがらランク上げ用の討伐依頼もこなすけどね。


「パーティーにあと一枠空きがあるけど、まあ平気だろう」

「ですな。彼女達の実力は聞き及んでおります故、拙者達が足を引っ張る事にならねば余裕でしょうぞ」

「えっと、はじめまして……よね?」

「おお、自己紹介が遅れてしまいましたな。拙者、オタ丸と申しまする。ライリーフ氏にパトロンとなってもらい、とある装備の開発を進めている最中でして、本日は開発に必要な素材を入手するべくライリーフ氏に同行を求めたのですぞ」

「そうなんだ。私はリリィよ、よろしく」

「は、はじめまして! ティナです!」

「ん、フィーネ。よろー」


 軽く自己紹介も終わった所で、さっそく狩場へ移動する。

 オタ丸の求める素材は、つい最近見つけられた物だ。とは言っても、それがゲットできるフィールド自体は随分前に解放されていて、王都まで転移すれば移動にそう時間のかかる場所ではない。

 ……本当は獣王国から向かった方が早いんだけど、俺とオタ丸が転移門の使用条件を満たしていないので遠回りになってたりする。


「えっと、王国側からだから……先ずは境界山脈まで行って、そこから南西に進む感じか」

「ですな。道中のモンスターのレベルは王都の周辺とそう変わりませぬ故、苦戦する事もないでしょう」

「獣王国に行くのも久しぶりだね、フィーネ」

「ん。久しぶりにシフォンの所のスープ食べたい」

「あれ美味しいもんね! 調理風景はともかくとして……」


 ああ、獣王国ではシフォンとシフォンにテイムされたクッキングバード・レギオン達の店があるんだったっけ。気になってはいたんだが、立地的に一人で足を伸ばすには遠かったので後回しにしていたチキンスープ。良い機会だし素材集めの後で寄ってみるか。


「それにしても、ここのマップ名は謎だよな。境界山脈とか言う割に山なんて見当たらないし」

「あ、それ私も気になってました!」


 マップに境界山脈と表示されるエリアは広大で、幾つかのエリアに別れている。しかしその全てのエリアにおいて、山らしき物は影も形も無く、あるのは荒れ地に岩場、湖と平原くらいである。


「ぬふふ、実は拙者その辺りについて軽く知り及んでおりますぞ」

「お、マジで?」

「リブレスにある図書館で、装備作成用にいろいろと資料を読み漁っていた時に偶然知ったのですが、この場所は遥か昔、確かに世界を隔てる雄大な山脈であったのだとか」

「そうなんだぁ。でも、なんで無くなっちゃったんですか?」

「それはですなティナ氏、なんと神々と一匹の龍との争いの余波で消しとんでしまったのだというのですぞ」

「うわぁ……凄い規模の戦いだったんだろうなぁ。神様達が協力して戦うくらい強いドラゴンなんて、ちょっと想像できないです」

「もっとも、それも神話の話。誇張して書かれた物だとは思いますがな。帝国のトップが倒された龍の子孫だと言う話もありますし、何よりスプルドの世界では神が実在する訳ですから、直接当時の事を聞いてみるのもアリでしょうぞ」


 手っ取り早くて間違いない手段ではあるだろうな。レーレン辺りなら簡単に捕まるだろうし、後で詳しい話を聞いてみよう。

 山脈を更地に変える戦い、か。おそらく、いや、確実にグーヌートの野郎も参戦していて、尚且つ生き残ってるって事になるよな?

 もとよりインテリアの改造は最低でもエンドコンテンツにも通用する物にしようとは考えてはいたが、そのレベルの戦闘に耐えられるようにするには厳しい気がする。当初のプランでは、あのインテリアを本物以上の性能に改造するだけだったが、他にも同じレベルのサポート用装備も作らないとグーヌートに対抗できなさそうだな。少なくとも、戦闘職を育てないなんて舐め腐った縛りは解除しよう。絶対瞬殺される。


「その凄く強い龍、ちょっと心当たりあるんだけど」

「ん。たぶんあれだよね」

「え? リリィさんもフィーネも知ってるの?」

「ティナも知ってる」

「私も? すっごく強いドラゴンなんて……あ!」

「むむ? 皆さん何か心当たりがあるご様子。ライリーフ氏も何か知っていたりするのですかな?」

「んー、たぶんだけどな」


 まあ、十中八九件の龍は龍帝の事だろう。

 俺達は災厄に取り込まれた状態の龍帝ドラグニスと戦い勝っている。しかしあれはかなり特殊な戦闘だったし、神話での暴れっぷりと比較すると超絶弱体化状態って事になる。そんな状態の奴を倒して、称号とスキルと鎧を入手できたのはまさに幸運と言う他無いだろう。本来のスペックなら対グーヌートよりも無理ゲーだろうしな。


「なんだったかな……そう、太古の龍骨片だ! こんな感じの名前のアイテムゲットしたら注意するといいぜ?」

「それは……災厄案件になる怨嗟系統の素材と似た素材である、と?」

「……」


 黙ってニッコリ。これ以上喋ると災厄発生させたのが俺だとバレかねん! 急いで話題を逸らさねば。


「そう言えばオタ丸さ、普通に女子と喋れるのな」

「ぬふ、もしや拙者の見た目からキモオタムーブを期待していたのですかな? 残念ながら拙者、これでもリアルではそれなりにモテる方でしてな」

「は?」

「彼女もおりまするぞ」

「なんだとぉ!?」


 ば、バカな! オタ丸が彼女持ちだとぉ!? い、いったいこいつの何処にモテる要素があると言うんだ!

 ……いや待てよ? そういえば合宿で委員長達の部屋に侵入した時、戸隠さんが重石君がいいと話していたじゃないか。


「ぽっちゃり系の時代なのか……?」

「あ、拙者リアルではガリガリなのでそれは関係無いかと」

「えっ、そこも違うのかよ!」

「なんでわざわざ太った見た目にしてるの?」

「ぬふふ、知りたいですかなフィーネ氏?」

「少し」

「先ほども言ったかもしれませぬが、拙者作りたい装備がありましてな。その為にもこの体型(スタイル)が必要なのです」


 オタ丸が作りたい装備と言えばパワードアーマーだ。けど妙だな、装備の性能にアバターの見た目は関係無いような……。

 訝しげな目でオタ丸を見ると、ニヤリと笑い返して来た。


「ゴツく厳つくメカメカしい重厚感溢れるパワードアーマー、その実現にはどっしりとした土台から始めるべし! 拙者の本来の体型でパワードアーマーを装備しては、装備サイズ自動調整のせいで貧相な見た目になってしまいますからな」

「ふーん」

「理由浅っ!」

「拙者にとっては性能と同じくらい大切な要素です故!」


 装備の見た目拘りたいのは分かるけど、その為だけに体型を決めるのはやり過ぎじゃなかろうか。ま、それはそれとして……。


「お、着いたな」


 マップ名『爆裂荒野』。ここに出て来るのは地属性で動きが鈍いモンスターと、岩に擬態するトラップモンスターだ。

いやぁ、今回の目的地がここで本当に良かったぜ。


「そうだオタ丸、一つだけ言っておかなきゃいけない事があったわ」

「むむ? なんですかな?」

「リア充爆発しろ」

「ほわっ!?」


 オタ丸の背中を蹴り飛ばす。パーティーを組んでいるのでもちろんノーダメージである、しかし蹴りで生じる衝撃まで消える事はない。

 さっきここには岩に擬態するトラップモンスターが出ると言ったな? 奴らこそがこの荒野に爆裂の二文字を添える元凶にして今回の回収目的をドロップするモンスター、爆団子とボム饅頭である! そして当然、オタ丸を送り出した先に待ち受けている!


「ぐわーっ!?」チュドーン!!

「ふっ、悪は去った」

「何やってんのよ!?」

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― 新着の感想 ―
[一言] たかがチーズ(?)の癖して災厄案件レベルに厄ネタ臭させてるの草 そして忘れた頃にリア充スレイヤー発動させるのやめーやw
[良い点] 待ってました! [気になる点] 大丈夫だ、作者様は正常…作者様は正常…セイジョウ………www 悪夢の続き、ありがとうございます!! [一言] オタ丸…いい奴だったよw
[良い点] 待っておりましたぞ! 自茹で鳥さんの子供たちはクッキングバード・レギオンが正式種族名だったのか… [気になる点] 開幕悪夢やめーやw [一言] なん・・・だと・・・!? ていうか店主に…
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