新たな鳥ガーハッピー
「へっ、一難去ってまた一難ってか……?」
「あのワームを一瞬で倒すなんて……このモンスター普通じゃない」
「ねぇ! 本当に何が起きてるの!? いい加減状況教えてほしいんですけど!」
「嗚呼、なんて神々しい……ミミズから私を救ってくれたあなたはもしや神の御使い様では?」
リーフは相変わらずうるさいし、野郎共はありがちな勘違いをしているから良いとして……エイルはどうしてこうなった!? 少し前までの大人しい普通女子はどこに消えた!
「なぁライリーフ、とりがーはっぴー?ってことはライリーフがテイムしてるモンスターと同じ奴なのか? 全然見た目違うじゃん」
「ああ、こいつら進化……退化か? すると見た目がめっちゃ変わるみたいなんだよ。おい、お前らもビビってないで安心しろ。この鳥は俺の知り合いだからさ」
(早くキラキラを、ハリーハリー)
「分かってるって。ほれ、この宝石辺りでいいか?」
(エクセレント、実に見事な輝きです。さっそくいただきます)
「食べるのかよ!?」
巣に飾るとかじゃなかったのか。まさか砂肝に貯める石の代わりにしてるのかこいつ? なんて贅沢な鳥なんだ……。
「本当に安全なのかそいつ……? てか普通に会話してるけど言葉通じてんのかよ」
「雷、エイルターナーさんはきっとモンスター言語のスキルをセットしてるんだよ」
「正解だぜターナー君。持ってるとなんだかんだでかなり便利なスキルなんだぜ?」
「モンスター言語……御使い様の御言葉を正確に理解する為にも取得しなくちゃ」
「やっと目が開け……なにこの鳥!? 本当に目を閉じてる間に何があったわけ!?」
声は聞こえてたんだから大体の状況は分かっててもいい筈なのにこれか。まあ彼氏のターナー辺りがきっと説明してくれるだろうから俺はスルーしておこう。
「とりあえずドロップアイテムの分配しておこうぜ」
「んなもん面倒くせーし取ったもん勝ちでいいだろうが。ターナーもいいだろ?」
「うん。結構な数の素材がドロップしてるし、分配するってなると結構時間掛かりそうだしね」
「そっちがそう言うなら俺らも別に構わないよ」
「見て見てライリーフ! 素材系のアイテム殆ど☆4だよ!」
「うわ、ファフニールの鱗よりレアリティ高いのか……そりゃ強い訳だ」
牙、皮、体液が☆4で涎が☆3。ついでに俺にはレアドロップっぽい暴魔蟲の眼宝晶とか言うアイテムがドロップしていて、そのレアリティはなんと☆6! インテリアの魔改造の素材にも使えそうなのでかなり嬉しい。
(ジー……)
「……やらんぞ」
(あれを倒したのは私です。獲物の一番価値ある部位を占有する権利が私にはあるのでは?)
「さっき宝石あげたろ」
(それはそれ、これはこれです。宝石は助太刀の対価であり、戦果とは別に支払われた物であると判断します)
「くっ、他の連中より賢いなお前……」
機嫌を損ねて穴だらけにされてはたまらないので渡すしかないが、タダでくれてやる程俺は甘くはない! ダンジョンに隔離するための交渉材料として使ってやらぁ!
「渡してもいいが1つ条件がある」
(ほう、聞きましょう)
「俺は今ダンジョンを作ってるとこでな、そこで働いて欲しい」
(ダンジョンと言うことは私をボスにしたいと?)
「いや、ボスはノクティス……あー、お前の兄弟にしてもらう予定なんだわ。それが気に入らないってんなら交代でボスしてくれてもいいぞ」
(むむ、私より先に貴方と再会を果たした兄弟がいようとは。もしやキラキラをいっぱい貰えるのでしょうか?)
「そんな要求してきたのはお前だけだよ……。他の連中は飯目当てでついて来たな」
(貴方の作る餌はとても美味しかった。ジュルリ、思い出したらお腹が空いてきました。キラキラと美味しい餌を約束してくれるなら貴方についていきましょう)
「おっしゃ、契約成立だな!」
これで残る鳥ガーハッピーは後2羽。隔離計画も順調に進んでダンジョンの強化まで出来るなんて今日は中々ついてるんじゃないか?
《つまらん、実につまらんぞ!》
「「「「「「!?」」」」」」
(?)
《あの程度のモンスターを自力で退ける事も出来んとは、我に挑むまでにどれ程の時が掛かるか分かったものではないな! 弱き者よ、武器を鍛えるだけではなく体と技も鍛えるがいい!》
いつの間にか俺の右肩の上空辺りに出現していた3頭身のグーヌートに向けて剣を構えながら俺は問いかけた。
「て、テメェまた出てきやがったなグーヌート! まさかあのワームはお前の仕業か!」
《フハハ、誤解するな弱き者よ! 我が仕向けるならばあの程度のモンスターで済む筈がなかろう! あれは悪神の力により生じた空間の綻びより此方側に迷い混んだものだ。故に! 我は高みの見物を決め込んだに過ぎん!!》
「……つまり前みたいに悪神の気配がしたから出てきたと?」
《その通りだ弱き者よ。更に言うなら前回感じた気配よりも今回の気配の方が数段強い》
「それって最近ここに来てたからなんじゃねーの? エイルターナー邸に現れたのは随分前なんだしさ」
《神気とはそう簡単に薄れる物ではない。十数年であれば誤差の範囲よ》
となると悪神の力が増してるって事? でもシリウス君(仮)のフードの男は暴れてるモンスターを倒して回ってるって話だったよな? あ、モンスター倒してるから強くなってるのか。
まてよ……? そもそも最初にフードの男とニアミスした時もクラーケンなんて強力なモンスターが出てきてたんだよな。もしかしてあれも悪神の影響だったりするのか?
「なんか壮絶なマッチポンプの気配が……」
《さて、悪神も居らず戦いも終わったこの場にもう用はない。さらばだ!》
「あっ! ちょっと待て! まだ聞きたいことが……クソ、帰りやがったか」
出来れば封呪の洞穴について聞き出しておきたかったんだけどなぁ。まあエイルターナー公爵に丸投げすれば後で知らせてくれるだろうしいいか。
「お、おいエイルターナー? 今のちっこいのって戦神のグーヌートだよな?」
「うん? そうだけど?」
「何でそんなの連れ回せてるんだよ!?」
「失敬な、あんなの好きで連れ回す訳ないだろ? なんか勝手に出てくるんだよなぁ。たぶんジョブのせい……ハッ!」
SDグーヌートが出てきたってことは、ワームとの戦闘中ジョブは戦神の神徒になっていたってことだから……やっぱりかチクショウ! 経験値持っていかれたせいでダンジョンマスターのジョブレベルが上がってない! あのワームなら3~5レベルくらい上がったと思うのに、ぐぬぬ……。やっぱりグーヌートの奴は絶対に許せん!
おまけ
主人公が鳥ガーハッピーと会話中の他メンバー
「やベーなこの素材! 売ったら結構な額になるんじゃね?」
「ダメだよ雷、今は黄金竜のイベント中なんだから装備の強化に回した方がいいよ」
「私の方には装備がドロップしてたわよ! さっそく装備してみたわ!」
リーフが手に入れたアイテム、それは全身を覆うピッチリラバースーツだった。ふざけた見た目をしているが、これでもれっきとした☆4装備である。
「えっと……こ、個性的だね」
「うわぁ……お前よくそんなの着れるな」
「ミミズ製のスーツで近寄らないでもらえる……?」
「皆酷くない!? 確かに見た目はちょっとあれかもだけど、性能は凄いんだから!」
「ほーん、見せてみろよ?」
ワームスーツ・ブラック ☆☆☆☆
DEF400 耐久値220/220 AGI+20
物理ダメージ軽減・小 地中潜行
黒く艶やかなラバー質のスーツ
全身を加圧することでスピードが上昇する
短時間であれば地中を掘り進むことも可能
「お~、ホントに見た目除けば強いなこの装備」
「さすが☆4の装備だね。あ、これ上から他の装備着ければ見た目もマシになるんじゃないかな?」
「それナイスアイデア! 私の彼氏天才すぎ!」
「重ね着してもそれ着けて近寄らないでね?」
「分かったってば! ねーえ? マロンちゃんだっけー? どうよこの装備! 羨ましい?」
「え? ライリーフの作ってくれた武器の方がカッケーから別に……」
「エイルターナーの作った武器ぃ? そんなのどうせ見た目だけで……やだ、何この高性能!?」
《つまらん、実につまらんぞ!》
「「「「「!?」」」」」




