聞き込み調査
明けましておめでとうございます。
投稿遅れてしまい申し訳ありません。
だっていつも通り体験クエだけだと思ってたらがっつりイベントあるんだもん仕方ないよね?
学校から帰りログインするとマロンが待ち構えていた。ウォーヘッドとアケノさんはまだいないみたいだ。
「で? なんで昨日の連中とクエストすることになってんだよ! アタシのランク上げ手伝ってくれる予定だったじゃんか!」
おっと、ウォーヘッドにメールで聞いたのか? 既にその事を知っているとは思わなんだが、ここは素直に謝るのが吉だぜ。
「すまんマロン! でも俺のやってるクエストに関係ありそうでさ、ちょろっと現地まで聞き込みに行くだけだから許してくれよ?」
「……分かった。けどアタシも一緒に行くからな」
「え、なんで?」
「兄貴から聞いてるぞ。ライリーフと約束すると高確率で何かに巻き込まれてすっぽかされるって」
実に酷い言われようだ。だけどそんなに約束すっぽかしたっけか? 約束した回数自体が少ないから行けなかったり遅れたりすることが目立ってるだけでそんなには無い筈…………ダメだ、結構な頻度だったわ。
「うん……そうだな、何故か予定通りにゲームをプレイ出来た事が片手で数えられる程度しかないし付き合って貰えると助かるわ」
「よろしい。それじゃちょっと待ってて、ポーションとか買い足してくるからさ!」
「別にそんなもの買わなくてもいいだろ? ちょっと話聞きに行くだけだぜ?」
「備えあれば無礼無しって言うじゃんか。何もなくてもその後でクエスト色々受けるんだからいいんだよ!」
「それ憂いの間違いだぞー」
一応間違いを訂正してやったが、振り返らずに走って行くマロンに通じたかどうか……まあ間違ったままでもギリギリ意味は通じなくもない気がするしいいや。今のうちにアケノさんにメール入れておこっと。
アイテムの補充を済ませたマロンと共に、例の四人組との待ち合わせ場所に向かうとうるさい方の二人に絡まれた。
「ちょっと! なんで昨日あのまま帰っちゃったのよ!」
「俺達二人だけで村まで移動しちまったじゃねーか!」
「目的地に着くまで気づかなかったのかよ……」
大人しい方も途中でメールでも送って知らせてやればいいのに。
「二人共? 昨日ちゃんと話したこともう忘れちゃったのかな?」
「自業自得って納得した筈だよね?」
「「ひぃっ、ごめんなさい!」」
「謝るのは私達にじゃないでしょ?」
「「そうでした! ごめんなさいエイルターナーさん!」」
「あ、うん」
なるほど、大人しい方の二人もあれで結構怒っていたみたいだ。
おそらく勝手に突っ走って行ったうるさい方の二人が目的地に到着して、誰もついて来ていないことについて条件反射的にメールかチャットで文句を言ってしまい大人しい方の二人をプッツンさせたのだろう。
たしかエイルとターナーだったか? あの手の普段気弱で大人しいタイプは怒らせると恐ろしいと言うことくらい俺にも分かる。だがそれ以上にうるさい方の生態が分かってしまう。
きっとこの二人は話を聞かない上に調子に乗りやすいタイプだ。俺も似たようなタイプなので断言出来る、調子に乗りまくった挙げ句に何度もエイルとターナーから雷を落とされていると!
俺の場合は光介と共に行くとこまで行って双方自滅するのがパターンなので自主的にやらかすギリギリの匙加減を学習出来ているが、この二人は友人が止めてくれるからええやろの精神で何度も同じ事を繰り返していそうだ。きっとエイルとターナーはとばっちりでさぞ面倒な事に巻き込まれて来たに違いない。
「苦労してんだな、あんた達」
「そうなんだよ! 二人共怒るとマジ怖くてさ」
「顔は笑顔なのに目が全然笑ってないのよね。ハイライトも消えててホラーテイストだから夜中に不意に思い出すとトイレ行けなくなっちゃうのよ」
「いやお前達に言ったつもりはねーよ!」
「なんでもいいから早く案内してもらってパパッと要件終わらせようぜライリーフぅ……」
そう言えばマロンは若干人見知りな所があったんだったな。普段より勢いがない。少しすれば普段通りになるけどなるべく急いでやった方がいいか。
「分かってるって。んじゃ早速目的地まで案内してもらおうか」
「はい、えっと、場所はここから少し離れた所にある村なんです」
四人組の先導に従いアドベントの北東にある小さめの林を抜けると、実に慎ましやかな村が見えて来た。
「へぇ、こんな場所があったなんて初めて知ったわ」
「はぁ? 納品系のクエスト受けてりゃ普通立ち寄ったりするだろ。村なんて王都とかリブレスの側にも幾つかあるしな」
「いい装備してる癖に基本がなってないんじゃないのエイルターナー? あ、もしかして寄生プレイってやつぅ? だっさ~へぶ!?」
「リーフだっけか? そのニヤニヤ顔止めてくれ、思わず顔面に木刀叩き込みそうになるから」
「あの、攻撃してから言っても遅いと思うんですけど……あと一応それ僕の彼女なんで手荒なことしないであげて下さい。代わりに謝りますんで……」
「あ、ごめんつい」
自分でもびっくりするくらいスムーズに抜刀して顎を打ち抜いていたみたいだ。この動作の滑らかさ、もしや試験官を追い詰める為に色々やった結果スキルレベルが結構上がってる? 確認は……面倒だから後でいいや。
「ちょっと! 謝るなら私にじゃないの!?」
「今のはリーフが悪いだろ? 俺でも分かるぜ」
「なによ! ちょっとからかってみただけじゃない!」
「リーフ、私から見てもちょっとイラッとくる顔してたよ」
「エイル!?」
「あ、ほらあそこの緑色の屋根の家。あそこがクエストを出してたお婆さんの住んでいる家ですよ」
ターナーが指さす方に目を向けると確かに緑色の屋根をした二階建ての家がある。しかし俺の目がおかしくなったのでなければ、それはどう見ても俺の背丈より少し大きいくらいのサイズで……。
「なんかちっちゃくね?」
「あんなサイズで住めるのかな?」
「婆さんは小人族だからな。あのサイズで十分なんだよ」
「ふーん」
基本の四種族以外にも色々な種族があるって話ではあったけど、意外と簡単に出会えるものなんだな。まあ出会えるってだけで簡単に転生クエストを受けられるって訳じゃないんだろう。
「おーい、婆さんいるかー?」
「お婆さんにお客さん連れてきたよー!」
「はいはい、どなたかね? おやまぁ、あんた達また婆の所に遊びに来てくれたのかい? そっちの二人はお友達かしら。待ってておくれ、今お茶とお菓子を用意してあげるからねぇ」
「遊びに来たんじゃねーよ。こいつがあのモンスター倒した奴について聞きたいんだってさ」
「エイルターナーさんの事をかい? そうさねぇ、婆も名前しか教えてもらえなかったからねぇ」
それからお婆さんに色々と聞いてみたが、昨日四人組から入手した情報以上の物は得られなかった。かろうじて収穫と言えそうな事は、強力な魔法を使っていたって事が判明したのでエイルターナーを名乗るフードの男の正体がシリウス君である可能性が更に高まったってことかな。
「お婆さんサンキュー。話が聞けて良かったよ」
「たいして役に立てなくてごめんなさいねぇ。あぁ、そう言えば……封呪の洞穴って場所を探しているみたいだよ。婆が場所を知っていれば教えてあげられたんだけど、生憎とそんな場所聞いたこともなくてねぇ」
封呪の洞穴! 俺も聞いたことないけどこの情報は実に素晴らしい!
シリウス君がそこを目指しているのなら此方も同じように封呪の洞穴を探し出せば自ずと出会えると言うものよ。最悪自分で探さなくてもこの情報をエイルターナー公爵に届けるだけで一気にクエストが進むかもしれないしね!
「お婆さんナイス! あ、これお礼のスパイスセットね」
「おやまぁ、別にこれくらい気にしなくてもいいのに……ヒョバ!?」
「おっし、次は現場で手掛かりが残ってないか調べるか! さっさと終わらせて帰るぞー!」
「おー!」
返事を返してくれたのはマロンだけだったがそんな事は気にしない。そんな事でやることリストが次々と達成されていきそうな予感に浮かれる俺のハートにダメージは入らないからな!
「なあエイルターナー。さっき婆さんになに渡したんだ? ヒョバ!?って言ってたぞ。ヒョバ!?って」
「お婆さんすんごい顔で固まってたけど変な物渡してないでしょうね!」
「あん? 変な物とは失敬な。あれはただの自家製スパイスだっての」
「スパイスなんかであんな顔するわけないでしょ!?」
「たぶん婆ちゃんがびっくりしてたのは予想の10倍くらいスパイスが強烈な物だったからだぜ。ライリーフの作るスパイスは人気商品だからな」
「えっ……? スパイスを売っててそれが人気商品ってことはまさか――」
エイルがマロンの言葉で俺=店主さんであると言うことに気がつきかけ、そして件のレアモンスターをマントの男が倒したと言う場所に差し掛かった時だった。
グゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「あ? 地震?」
「バカね~雷。ゲームの中なんだから地震な訳無いじゃな~い」
「アァ? こんだけリアルに作り込まれてんだから地震くらい起きたって不思議じゃねぇだろうが!」
グゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!
「わわっ、揺れが大きくなってる!?」
「下から何か近づいて来てるみたいだ!」
「ね? ポーション買ってきて良かったでしょ?」
「言うなマロン。俺は悪くねぇ……!」
グゴゴゴゴゴゴドゴォォォォオオンッ!!!
「キシャァァァァアアア!!」
モンスター
タイラントデモンズワーム Lv57
魔界の地中に潜む凶悪なワーム。
十分に育った個体は上級の悪魔をも餌とする。
「ふぅ……良かったなお前達! 念願のレアモンスターだぞ!」
「俺達が狙ってたモンスターはこんな厳ついのじゃねーから!?」
今回の相手は地面から生えてきた見えている範囲だけで10メートルを越える巨大なワーム君。これ、どう戦えばいいんだろうか……?




