ダンジョンの新しい中ボス
順調にダンジョンの探索を進める俺とセレネ。
迫り来るモンスターを薙ぎ倒し、隠し部屋も全て見つけ出し、そして壁の隠し採掘ポイントもコンプリートしてついにボス部屋に到着した。
前回はマッディウォーターゴーレムがボスをやってたけど今回はどうかな? 扉を少し開けて中を覗いてみる。
「……」カタカタ
スケルトン……いや普通のスケルトンじゃなさそうだな。装備が豪華だし骨の色が赤くなってる。この距離で鑑定できるか?
モンスター
レッドボーンジェネラル Lv21
血のように真っ赤な色をしたスケルトン
将軍らしく装備がちょっと豪華
そんなに強くなさそうだし中ボスってとこかな?
どうやら拡張されたダンジョンはボス部屋より先があるみたいだ。
「とりあえずあいつを倒すぞセレネ」
「ニャ」
思い切り扉を蹴り破り先手必勝!
「サイクロントマホーク!」
「……!? ……!」カタカタカタ
残念! 首を狙った一撃は頭を取り外す事で回避された!
「そんな避けかたアリかよ!?」
「ニャー!」
「……!!」オロオロ
セレネ、なんて恐ろしい子……!
回避するために手で持った頭をすかさず駆け寄りタックルで吹き飛ばすとは我が眷属ながらえげつないぜ。
遠くに頭が転がって行ってしまったレッドボーンジェネラルはフラフラした足取りで頭を拾おうとしている。
「分かるよ。ラジコン操作って結構難しいよな」
でも容赦はしない。仮にも将軍なんて名前が付いてるんだ、奥の手の1つや2つ持ってるだろう。それを使われる前に戦闘を終わらせてやる!
「セレネ、ラックスティールだ」
「ニャ!」
「……!?」
レッドボーンジェネラルがカタカタ、ガシャンと音を立てて転倒する。どうやら足が縺れたみたいだ。
「分かるよ、ラジコン操作って本当に難しいよな」
「ニャー」
セレネがラックパスで奪った分のLUKを送って来た。増えたのはたったの5だけ、めっちゃLUK低いのにそれすら奪われたから転けたのか……可哀想に。
「っと、同情してる場合じゃねぇや。一気に畳み掛けるぞセレネ!」
斬撃より打撃の方が効きそうなので今回はバールムンクを装備する。
振りかぶって~スイングッ! もういっちょスイングッ! そして吹き飛んだ所にセレネが新しく覚えたアーツ、グラビティスタンプを叩き込む。
うちの猫ちゃんは運と影の他に重力まで操れるようになっていたのだ!
そろそろ本当にただの猫なのか怪しくなってきたけど気にしない気にしない。鳥ガーハッピーに比べればこれくらい可愛いもんだろ?
「お、さすがに高そうな防具装備してるだけあってHPの減りが鈍いな」
セレネの攻撃を諸に食らったのにまだHPが3割も残っている。
「ニャ」
「ちょ、あいつの武器スティールしちゃったのか!? それはさすがに酷くない?」
アイテム
骨将の刀 ☆☆☆☆
ATK450 耐久値10/10
明鏡止水
ボーンジェネラルが携えている刀
とても強力な反面、使い方を誤れば直ぐに壊れてしまう。
威力高ッ!? あ、でも耐久値がゴミみたいなのか。
でもって明鏡止水の効果は……クリティカル発生時のダメージ増加と耐久値減少無効?
えっと、たしかクリティカルだとダメージは1.5倍になるから……明鏡止水の効果込みだと竜以外が相手の時のバルムンクより高火力になるのか。しかもクリティカル出し続ければ壊れることもない、と。
「地味にやベーなこの武器。ちょっと使ってみるか」
「……!?」オロオロ
「えーと、刀を振る時は円運動がどうちゃらこうちゃらって昔テレビで見た気がするから……こうか!」
「……!!」ヒョイ
「もういっちょ!」
「……!!」ヒョイ
「避けるなこの! あっ」
使い方が悪かったみたいでレッドボーンジェネラルに当たった途端に刀は砕けてしまった。
刀が砕けると同時にダメージなんてなかったろうにレッドボーンジェネラルもorzみたいな感じに倒れた。あ、頭とれてるから正しくはo rzか。
「……」ふるふる
「ニャー……」ぽふ
「セレネ、スティールで奪ったのお前なのに何で平然と慰めに回ってんの……?」
その時だ。
部屋の隅の方に転がっていた頭蓋骨の目からカッと赤い光が放たれレッドボーンジェネラルは禍々しいオーラに包まれた。
「ニャ!?」
「いったいなんなんだ!?」
ゆらりと起き上がるレッドボーンジェネラルからは何か凄みのような威圧感が感じられる。
「……」
死なば諸共、相棒の敵は死んででも討つ。言葉は発して来ないがきっとそんな感じに違いない!
「……!」バッ!
レッドボーンジェネラルが勢いよく手を突き出すと床に魔法陣が展開され、そこから次々と真っ赤なスケルトン達が現れる。
「いや、あの……ちょっと待って? それ何匹出てくるの!?」
10、20……まだ出て来るのかよ。結局召喚が止まるまでに50体も出て来やがった。
スケルトンは雑魚モンスターとは言えこうも数を揃えられると少し圧倒される。
「ニャー……」
「ちょ、なんだよそのジト目は? 元はと言えばお前があいつの刀スティールしたからだろ!?」
「ニャ」ふいっ
「くそ、私は悪くないもんってか!? 可愛いから許す!」
「……!!」
「「「「……!!」」」」
「うわ、来やがった!」
この野郎、ボスとしての威厳なんて捨て去って数で押し潰そうって魂胆か!
「サイクロントマホーク! サイクロントマホーク! ちくしょう、全然行進が止まらねぇ!? はっ、そう言えばスケルトンは死霊系のモンスターだよな? だったらこれでもくらえ、ニ"ャーーーーーッ!?」
さすが災厄すらのたうち回るとっておきの聖水だ。飛び散った水に触れたスケルトンが全て昇天してしまうとは素晴らしい!
「フハハハハハ! これさえあればこっちのもんだぜ! そーれニ"ャーーーーーッ!? ニ"ャーーーーーッ!? もういっちょニ"ャーーーーーッ!?」
「……!?」
「ちっ、今のが最後のニ"ャーーーーーッ!?だったか。だが召喚されたスケルトン共は全て浄化された……観念するんだなレッドボーンジェネラル!」
「……」
「ほう、俺に介錯しろと? 潔いな」
刀を使うモンスターだけあって武士道精神に溢れている。
「では……って頭もう落ちてるよね?」
「……!」
「なっ不意打ちだと!? しまっ」
「……! ……!」ポカポカポカポカ
「……」
「……! ……!!」ポカポカポカポカ
どうやらあんなピーキーな刀を携えていただけあってレッドボーンジェネラルさんは技量特化のモンスターだったみたいだ。繰り出される拳の一撃の威力は1しかない。
一生懸命ポカポカ叩いてくるけど、普段空気な俺のリジェネ能力で回復しきれてしまう程に低いダメージで悲しくなる。
「セレネ、止めを刺してやってくれ。俺もう見てられない……」
「……ニャ」
「……!?」
セレネのキャットスタンプが背中に炸裂し、レッドボーンジェネラルさんは完全に沈黙。程なくして光の粒子になって消え去った。
《第一階層のボスが討伐されました》
《次の階層に進みますか? YES/NO》
「セレネ、次から敵モンスターの武器奪うの禁止な」
「ニャ」
何とも言えない微妙な空気の中、俺達は次の階層へと足を進めた。
ちなみにレッドボーンジェネラルさんは♀です。
ネームドモンスターに昇格を夢見る17才の女将軍なのです。




