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開会直前

 ニコルテス老作の全自動空き瓶生産マシーンに全力で瓶を量産させながら俺は打開策を考える。

 足りない瓶は約6000個。それに対してイベント開始までマシーンをフル稼働させて作れる瓶の数はたったの1000……しかもこれは魔力(MP)を切らす事無く、休憩も挟まずに作り続けた場合の最大数だ。


「ダメだ……どう考えても間に合わねぇ」


 ならいっそ瓶以外の物でも使うか? 液体を入れて中身が漏れ出さない物があるならそれもいいだろう。

 けど運良くそんな物がみつかったとしても数を揃えるにはやはり自作するしかないだろう。そして時間内に揃えられるかって問題が解決しない。


ガコンッ、シューン……


「ん? えっちょっと勘弁してくれよ! なんで止まってんだこのマシーン!?」


 俺のMPはまだ十分残ってるし、材料だって大量に入ったままだ。となれば停止の原因なんて故障以外に考えられない!


「作り始めてからまだ20分も経ってないのに故障とかあんまりだぜ……」

「む……? これは……」

「あ、ニコルテス老。悪いんだけどこいつをすぐに修理してくれ!」

「落ち着け……壊れてはおらん……」

「は?」


 壊れてない? ならなんでまた止まったりしたんだ?

 MPも材料もさっき確認したけど問題なかった。他に停止する原因なんて思い浮かばないが――


「信じられんが……完成した瓶が次の瓶が出てくるのを塞いでおる……」

「何言ってんだよニコルテス老。50個完成してないとマシーンの排出口が塞がる訳ないだろ?」

「じゃから……完成しとるんじゃ……」

「へ?」


 ニコルテス老の指差す方を見てみると、そこには確かに50個の瓶が並んでいてマシーンの排出口を塞いでいた。


「まさか大量生産のスキルの効果がマシーンにも影響しているのか!?」

「ほう……お主そんな便利なスキルを覚えていたのか……」

「よっしゃ! 20分で50個ならギリギリ間に合うぜ! ニコルテス老、念のためこのマシーンをもう1つ組み上げてほしいんだけど……」

「料金は貰うからな……」

「言い値で払うぜ!」

「分かった……はて、設計図は何処にしまったか……う~む、思い出せん」


 くっ、思い出すまで待ってたんじゃ明日になってしまう。多少MPをロスすることになるが、後々の効率が倍になることを考えれば安いもんだ。研究者のジョブの力を見よ!


「研究! レポート! ほら設計図ならこれでいいだろ!?」

「おお、すまんな……研究者のジョブはやはり便利そうじゃのう……ワシも若いうちに取っていればもっと便利な物が作れていたのではなかろうか……」

「今でも十分良い物作ってるって! だから早く作成に取りかかってくれ!」

「む……? そうか……そうじゃな……うむ、それよりも性能を上げて作ってやろう……」

「頼みますニコルテス老!」






 それから3時間が経過し、無事に全自動空き瓶生産マシーン2号が完成した。

 こちらはなんと魔力の変換効率が上昇していて、同じMP消費で初号機の2倍も瓶を作り出せると言うのだから素晴らしい。生産スピードは変わらないみたいだが、ポーションの使用を節約出きるのは嬉しい。


「料金は500万コルじゃ……」

「OK。それじゃ次は初号機の改良お願いします」

「やれやれ……魔力回路の調整だけで済むが……ちと疲れた。休憩してからでも構わんか……?」

「もちろん!」


 改良が終わればさっきまでのMP消費で1時間に300個の瓶が作れる。これならイベント開催までに間に合うし、少しは寝れるかもしれないぞ!


ピロリン!


 ん? 運営からのメッセージ?

 内容は……参加人数確定のお知らせ、ってことはもう0時になったのか。どれどれ? 最終的に集まった人数はっと……。


「10376人か」


 ギルドに確認に行ってからそんなに増えてなくて安心したぜ。千人単位で増えてたらガチで詰んでたわ。

 参加者の内訳はプレイヤーが6972人、NPCが3404人……へぇ、意外とNPCの数が多いんだな。


「おっと、こんなもん眺めてのほほんとしてる場合じゃねぇ!」


 生産力が上がったとは言え、気を抜けば間に合わないことに変わりない。瓶の数が揃うまで油断してはならないのだ!

 とは言うものの、ただ瓶が作られるのを眺めているだけでは精神的に辛い。

 けどマシーンのこのパーツを触ってないと魔力が供給されないし……そうだ、たしかミスリル繊維とか言う魔力を通しやすい糸をエロティカ婆さんが持っていた。あれを腕とマシーンのパーツに巻き付ければ魔力を供給しながら別の作業が出来る筈! そして空いた手で未だに数が揃っていない椅子を平行して作れる!


「こうしちゃいられねぇ、急いで貰ってこないと!」









 そして時間は更に過ぎ去り、バルムンク争奪杯の開催まで残り2時間を切った頃。


「や、やっと終わった……俺は……俺は間に合ったんだッ!」


 朝食やトイレ等の為にちょくちょくログアウトしたが、大量生産のスキルレベルが上がってくれたお陰で時間内に瓶を揃えることに成功した。

 それだけじゃない。椅子だって全員分作れたんだ!


(お疲れ様です旦那)

「ああ、ノクティスか。ありがとう、俺は遂に成し遂げたよ」

(いやーこりゃ凄い数ですね。でもなんでブラウニーさんにやってもらわなかったんです?)

「えっ?」

(旦那がそんなに頑張らなくてもブラウニーさんならちゃちゃっと作ってくれたんじゃないですかね? ほら、あんなでっかい家だってすぐに作っちまう訳ですから)

「その手があったか!」


 ブラウニーさんなら俺がログアウトして寝ている間に数を揃える事くらいなんてことないだろう。

 ……いや、ホームが完成したのは世界樹の果実でやる気マシマシになった結果だ。さすがに通常状態ならそんなに頑張ってはもらえないと思う。つまり任せなかった今こそが正しき選択だ……俺の労働は無駄なんかじゃない……!


「そう思わないとやってらんない……」

(旦那の目が死んだ魚みたいに濁ってまサァ)

「ところでノクティス、何か用か?」

(そうでした! あれからドラゴン倒し続けてたんですがね、集まった素材を何処にしまえばいいのかと思いやして)

「はぁ!? お前らずっとファフニールで遊んでたのか!?」

(へい。と言っても人が集まって来たんで2時間程前に止めましたがね)


 俺が瓶を作り出したのがたしか20時頃だったから……14時間も周回してたのか!? 地図の欠片を集める時間を差し引いてもやり過ぎだろ!


「……ちょっと待ってろ、今参加賞の納品済ませるから。集めた物の確認はその後だ」


 瓶にエリ草ーを詰めて参加賞に登録っと。これで自動的に参加者に配られる。

 優勝景品の竜墜剣・バルムンクも登録して……参加人数多いし幾つかのブロックに分けた方がいいよな。追加で10本くらい入れておけ。後は使ってないSSRカードとデッキを再構築した時に抜いたLRカードも登録する。これで景品の準備は万端だ。


「よし、案内してくれ」

(こっちでサァ)


 ノクティスについて行くとそこにはバルムンクの山と素材の山が再び築き上げられていた。しかも前回より明らかに多いし……。


「お前ら……少しは自重しろよ……」

「ニャー?」


 いや、セレネさん。なんで?みたいな顔されても困るんだけど。


(ウル強くなったー!)

(スクもー!)

(ヴェルもー!)


 兎達はそもそも聞く耳持ってないし。


(ふむ、いささか張り切り過ぎたことは認めよう。だが我はただ自分の食い扶持を稼いだに過ぎん。誉められてもいいのでは?)


 ルクスはアホなこと言ってるし。


「やっぱり早急にダンジョン作って隔離しないと……」

現在のバルムンクの数……394本(景品用も含む)

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