グルメフェス開催!
「それではこれよりアドベントグルメフェスティバルを開催しまーす! 食べ物以外の出店や露店も沢山あるので楽しんでいってくださいねー!」
「「「「うぉー!!!」」」」
「店主さんの店は何処だ!?」
「うわ!? マジでエイリアン料理あるし!」
「あはは! なにこれマッズ!」
「違う……あのリャパリャパ炒めはもっと美味かった。こんなんじゃ俺はもう満足出来ねぇんだよぉ!!」
「ブフー、ブフー! し、シフォンたんの手作り料理……たまらんぜぇ!」
普段以上に活気溢れるアドベントのメインストリートには、プレイヤーだけでなくNPCも沢山来ていて現実の祭り並の混雑具合だ。
「はは、スゲーなこりゃ……」
「先週の行列が可愛く見えるわね……」
「おっかしいなぁ、値段高いって告知したんだけとな」
俺の屋台の前には既に人だかりが出来ていて、最後尾がどこまで続いているのか見えない。
ちなみに今回のメニューと値段はこんな感じな。
黄金竜のテールステーキ ★★★★★★
空腹度80%回復 30分間アイテムドロップ率上昇・大
黄金竜ファフニールの尻尾を豪快に焼き上げたボリューム満点のステーキ
噛み締める程に溢れる肉汁は黄金の輝きにも勝る価値がある
一皿150000コル
ゴールデンスープ ★★★★★
空腹度60%回復 60分間LUK上昇・中
黄金竜ファフニールの骨から出汁を取った黄金のスープ
奥深い旨味からは竜の生きた長き歴史を感じさせる
一杯20000コル
竜鱗チップス ★★★★
空腹度20%回復
20分間採取行動時獲得アイテム数増加・小
竜の鱗を食そうなどと誰が思ったのだろうか
本来防具や武器に加工されるであろう高級素材の成れの果て
サクサクとした軽い食感が癖になる
一皿5000コル
滅竜鉄棍・バールムンク ★★★★
ATK160 耐久値400/400
MP+50 対竜・中 詠唱短縮・小
バールのような形をした棍棒
棍棒だがカテゴリーは杖な謎の武器
竜へ与えるダメージが上昇し、魔法が発動するまでの時間が少し短縮される
一本80000コル
どうよこの再設定した値段。一番安い竜鱗チップスでも5000コルもする驚愕のぼったくりプライスだってのに何故こんなにも人が集まってくる!?
「マジだ! マジでドラゴンステーキが食えるぞ!」
「値段高っ!? これ食ったらファフニール周回決定だわ」
「バールムンク? えっバールなのに杖? へぇ、サブ武器にいいかも……」
「何故俺は昨日カードを買い占めてしまったのか! 竜鱗チップスしか買えねぇ!」
「このスープ……澄んだ見た目からは想像できない力強さを感じる。美味である」
まずいな……スープは大量生産の効果でまだまだ残っているが、このペースだと肉がすぐに尽きてしまう。かといってこんな所で尻尾を取り出して解体、なーんてスペースがなくて出来ないしなぁ。
「やベーぞライ! 肉が無くなる!」
「バールムンクが完売したっす! なんでこんなふざけた武器が売れるんすか?」
「チップスも揚げるのが追い付かなくなってる」
「……これはしゃーねぇな。聞いてくれ! 今ある分が捌けたら一旦店じまいだ!」
「「「「えー!?」」」」
だってあの値段設定で商品が一時間持たないとは思わないだろ普通。
「30分くらいしたら再開するから許してくれよ」
「どっか行くのかライ?」
「冒険者ギルドに行って解体所で追加分の尻尾解体してくる。あとは揚げ物用の鍋買い足したりだな」
「なら今から行って来いよ。出来合いの物売るだけなら俺達だけで十分だからさ」
「すまん、任せた!」
「解体所を使わせろだと? おいおいEランクのひよっこ冒険者がそんなデカい獲物仕留めたってのか?」
「そう言うテンプレっぽいのはいいから借りられるのか借りられないのかだけ教えてくれよ! 時間がないんだって!」
「ふん、なら5分で10万コルだ。文句があるなら帰りな」
「5分もあれば十分だぜ! ほら金だ!」
「えっ、ちょっ……」
受付のおっさんはひどく驚いた顔をしていたがどうでもいい。さっさと解体終わらせて鍋買って屋台再開だ!
「お邪魔しまーす!」
「なんだお前、何処から入った!」
「金はちゃんと払ってあるよ! 邪魔だから退いててくれ」
「何言ってやがんだ! ここは俺達の仕事場で……何ィーッ!? ドラゴンの尻尾だとォ!?」
鱗剥いで、肉を骨から外して適切な大きさに切り分ける。
鱗剥いで、肉を骨から外して適切な大きさに切り分ける!
鱗剥いで、肉を骨から外して適切な大きさに切り分ける!!
「な、なんて鮮やかな解体なんだ! 3つもあったドラゴンの尻尾があっという間に素材の山に変わっちま……ドラゴンの尻尾が3つだとォ!?!?!?」
「ゲンさんすまねぇ、変な小僧が来なか……なんじゃこりゃあ!?」
「五月蝿いぞおっさん達! 手元が狂うだろうが!」
「ああ、すまねぇ……いやなんで謝ってんだ俺? 勝手に入って来たのはこいつだよな?」
「出来た! ハッハー、3つ合わせてタイムは4分42秒! 追加料金は払わないぜ?」
「え? ああうん。ところで料金てなんの話……ってもういねぇや。今のはいったい何だったんだ?」
「すまん、実は追い払うために適当な料金吹っ掛けたら普通に払いやがってよ。この金どうすっかな……」
「鍋~鍋~でっかい鍋はどーこだ? そこだァ!」
「ふぇ!? 空から変態が降って来たよぉ……!」
「変態とは失礼な! じゃなくて……幼女よ、そこのでっかい鍋を売ってくれ」
「これはお祭り用の鍋だから売り物じゃないよぉ……」
「なら今は祭りやってるからその鍋の出番だな! グッドな巡り合わせってやつだぜ」
「お祭り?」
「そう! プレイヤー主催の食べ物屋台が集結する食の祭典!
グルメフェスティバルINアドベントだ!」
「屋台も露店もいつも出てるよ?」
「うん?」
言われて見ればその通りだな。普段との違いってなんだっけ?
たしか……参加してる店の商品を買うと売り上げが自動計算されて上位の店に景品がある、みたいなありがちなイベントだったようなきがする。
「まあ細かいことは気にするな。今日はいつもより屋台が多いんだから祭りなんだよ! だから鍋貸してくれ!」
「ほぅ、近所の連中が騒いどったのはそれのことだったか」
「おじいちゃんおかえりなさい!」
「ただいま、留守番ありがとな。その鍋が借りたいと言ったな君。貸してやってもいいがいったい何を作るつもりだね?」
「鱗チップスって揚げ物です」
「揚げ物か……この鍋はスープを作る方が向いておる」
む、ならスープをこいつで作って他の鍋で鱗チップスを揚げるか?
「ちょっと待っとれ、たしか倉庫の奥に揚げ物用の大鍋が残っとった筈じゃ。そいつを格安で売ってやろう」
「お、そんなものあるのか。幾らですか?」
「500万コルじゃ」
「なんて?」
「驚くのも無理はない。こんな格安で買える機会なぞそうそうないからのぉ」
鍋ってそんなに高価な物でしたっけ? 俺の記憶だと2~3000コルで買えた筈なんだけどなぁ。いくらサイズが大きくいって言っても値上げし過ぎだろ!
「揚げ物用の大鍋ですよね?」
「そうだとも、アダマンタイト製の大鍋だ。安いだろう?」
「買った!」
後で鋳潰してインテリアの強化用に使えるじゃん!
「ありがとな爺さん! いい買い物だったぜ!」
「まいどありー」
「ねぇおじいちゃん。あれ売っちゃってよかったの?」
「いいのさ。とっておいてもどうせ倉庫で埃被っとるだけじゃしな。それより今日はもう店を閉めてわしらもお祭りに行こうか」
「うん!」




