周回後の一時
「おっ、もうログインしてたのか。今日もばんばんファフニール狩ろうぜ……ってなんか既に疲れてないかライ?」
「は、はは……ちょっとな……」
「まさかそこに雑に積み上がってるバルムンク・レプリカでもスキル無しで作ってたとか? いくらレシピの武器が簡単に作れるからってこりゃ作りすぎだろ」
「……だよ」
「え?」
「それ全部本物だよ」
「……は? えっ、嘘だろ? うわっマジで竜墜剣・バルムンクじゃん!? 何だよこの数!」
俺の疲労の原因は勿論ファフニール周回作業にある。
やはり鳥ガーハッピーの力は凄まじく、Lv10の討伐に至るまでそう時間は掛からなかった。
とは言えファフニールもレベルが上がるにつれて本来の力を発揮し始めたので、そこそこ緊張感のある戦いにはなってたんだよ。
本来ファフニールがブレスをHP減少のトリガー以外で使い始めるのはLv5かららしく、HPに加えて攻撃パターンも増えてより集中力が要求されるようになったのだが……ファフニール君には相手が悪かったと思ってもらうしかないような蹂躙がLv9まで繰り広げられた。
そして問題はLv10。この野郎、開幕からいきなりブレスでパーティを壊滅させに来やがった。
幸い俺達は全員飛べたのでなんとか避けることに成功したが、普通のパーティならあのブレスで全滅だろう。さすがに死に戻ってからの再チャレンジでも開幕ブレスって展開はないだろうけど、あのアホみたいに多いHPをデスペナ状態で削るのはキツいだろうなぁ。
おっと、話が逸れたな。
勿論開幕ブレスだけが問題じゃない。真の問題は仲間にこそあったのだ。そう、ノクティスとルクスの中に眠る野生の闘争本能が目を覚ましてしまった。
ファフニールLv10の高い体力はノクティスの連射を受け続けながらも反撃を可能にする。そしてそれはこれまで一方的な蹂躙しかしてこなかったであろうノクティス達が体験する、本当の意味での戦闘だった。
そりゃ集中するし、テンションだって上がる。加えて全力が出せて勝てばご馳走まで手に入る。彼等にとってこんなに楽しいことはないだろう。俺は結局30回もLv10を周回させられた。
「そんな訳で今日はもうファフニールと戦いたくない」
「いやどんな訳だよ!? Lv10周回って何!?」
「開幕ブレスはもう嫌なんだよ……」
ちなみに周回作業中、地味に開幕ブレスを避け損ねてドラグディザスターさんが壊れてたりするのは内緒だ。
ライトとバルムンクを使った世界一豪華なジェンガで遊んでいるとマロンがやって来た。
「あっ、ライリーフ! もう武器直った!?」
「おはようマロン。ちゃんと出来てるぞ、ほれ」
「お~、なんか強そう!」
マロンは昨日俺がログアウトした後に再びログインしていたらしい。だが武器を持っていなかったのであまり楽しめなかったのだとか。
「予備の武器と防具は持っておいた方がいいぞ」
「えー……いいよめんどくさい」
「また装備を修理に出したときに楽しめないぞ?」
「いいの! アタシの装備はこいつらだけって決めてるんだ! それに、次から修理中は生産職やってみることにしたし」
「ふーん?」
チマチマしててみみっちいとか言ってたのにどんな心境の変化だろうか? しかしマロンが生産職か……なんとなく5分くらいで飽きてそうなイメージがあるけど、戦闘中と同じくらい集中力が発揮できればなかなか凄い物を作るかもしれないな。
それから少ししてフィーネとリリィもログインしてきた。
「ようフィーネ、アクセサリー出来たから渡しとくな」
「ん。ありがとう」
「へぇ、綺麗なアミュレットね……ちょっと欲しいかも」
「効果的にリリィが持った方が強そうな仕上がりになってるぜ。一応もう一個作ってあるんだけど……買う?」
「……幾らかしら?」
「んー、宝石とか使ってるし……12万コルでどうだ?」
「買った!」
「はいまいどー」
ちっ、即決か。際どい衣装の撮影させてもらう代わりに値引きする作戦だったのに。
そんな邪な考えを抱いている俺の背中に何かが飛び掛かってきた。
「とぅ!」
「のわっ!? な、なんだ!?」
「あはは! お久しぶりっすねライ! あたしのナックルダスターは出来てるっすか?」
「ルルか! ええい、こういう事はライト相手にしろよ!」
「ひょわ!? な、なんでそこでライトが出てくるんすか……!」
「災厄戦前の打ち合わせの時のフィーネとの会話を俺が聞いていないとでも思ったのか? リア充スレイヤーの超感覚はラブコメの波動を許さないと知るがいい」
「あの時いきなり暴れだしたのはそんな理由だったんすか!? てか違うっすから! 別にそんなんじゃないっすから!」
はっはっは、顔を真っ赤にしながら否定するルルは可愛いなぁ。でもそろそろ俺の頭をシェイクするのは止めてほしい。
「ぜぇ……ぜぇ……危うく吐く所だったぜ」
「ハァ……ハァ……ゲームなんだから吐く訳ないっすよ」
「さてナックルダスターだったな。色々あってガントレットになっちゃったけど許して?」
「よく平然と話題変えられるっすね……かなり強そうな仕上がりになってるんでさっきの事と合わせて許してあげるっす」
「サンキュー。あ、ライトは難聴系主人公一歩手前の鈍感さだからもっとおもいっきりアピールした方がいいぞ」
「だから違うって言ってるじゃないっすかー!」
こんなに騒いでライトに聞かれないのかって? 奴はマロンとのバルムンクジェンガ対決に熱中してるからルル達がログインしたことにすら気がついてないよ。
現在のバルムンクの数……83本




