屋台の準備
癒しの首輪はかなり良い装備だ。無駄に増えるバルなんとかと比べてずっと使える。
うちの3匹の中だと、やっぱりセレネに付けてあげるのがいいだろう。多少のダメージもこれを付ければ回復できるし、何より猫には鈴付きの首輪のイメージがある。癒しの首輪に鈴は付いていないので改良してからセレネにあげよう。
「ずるい……ライばっかりバルムンク引けるのはずるい! 俺なんて☆3の換金アイテムすら引けないのによぉ!」
「このイベントの目玉商品の筈なのに……そんなにあると有り難みが無いわね」
「そんな剣どうでもいい。お肉は?」
「まだ尻尾はドロップしてないな。そのかわり心臓が1つドロップしてる」
「ハツ……!」
俺はハツ食べたことないけどフィーネはあるのだろうか? 目を輝かせているし食ったことあるんだろうなぁ。今度焼き鳥屋で買って食べてみよう。
「さて、鑑定も終わったしぼちぼちLv2に挑んでみるか」
「次こそ俺もバルムンク引いてやる!」
「ちょっと待って! ジョブ変えてくる!」
マロンはジョブレベルがもう最大になったのか。やっぱりドラゴン5連戦だとかなり経験値稼げるんだなぁ。
「っかぁ~! 疲れたぁ!」
「Lv10までしかないからなのか1つレベルが上がるだけでかなりHPが上がってたわね……」
「うぅ……ハルバート壊れちゃったぜ……」
ファフニールLv2はLv1の倍も体力があった。攻撃パターンは変わらないし威力もそこまで上がった訳ではないけど、長時間の戦闘はそれだけで疲労が蓄積するし、集中力が続かない。
それでもなんとか死に戻りなく全員のLv2を倒した訳だけど、バルムンクを拾えてなかったら5回も倒す前にやる気が尽きてたかもしれないな。
「マロン、そのハルバート貸してみ? 直すついでに強化してやるよ」
「本当!? あ、でもちょっと前にこれで頑張るって言ったばっかなのに……」
「遠慮すんなよ。きっちり料金は貰うからさ」
「なら、いいか……ライリーフ任せた!」
「おう。てことで俺は生産に移るから今日はここまでってことで」
「そうね。一応Lv2は全員分倒せたしいいんじゃないかしら?」
「どう考えても何回か挑み直すの前提のHPだったもんな。5体共1回で倒せたんだから十分過ぎるだろ」
「私も尻尾がドロップしたから満足」
俺も追加で2本尻尾がドロップした。これだけの量があれば暫くはなくならないだろうけど、ノクティスとルクスが戦いたがってるからもっと量が増えることになるだろう。
そうなると今週の屋台はドラゴン尽くしにしても余裕で手元に肉の山が残りそうだな。
ピロリン
そんなことを考えているとシフォンからメールが届いた。内容は勿論今週の屋台をアドベントで出して欲しいって内容だ。フィーネからあらかじめ聞いていたのでOKの返事をサラリと書き返信する。
「フィーネ、今シフォンからメールが届いた。正式に参加するって返事しといたぜ」
「ん。楽しみ」
「ライ~……屋台手伝うからバルムンク1本くれ~……」
「本来の価値からすると割りに合わないんだろうけど……その提案はかなり魅力的だな」
ファースで開催した前回ですら目の回るような忙しさだったんだ。アドベントで開催、しかもメニューはドラゴン尽くしとくればプレイヤーのみならずNPCも大量に寄ってきて過労死レベルの忙しさになりかねない。
「だろ!? ファフニールの素材も全部やるからさ!」
「ライト……せめてイベントの後で頼みなさいよ。この時点で特攻武器を格安で譲ったなんて情報が漏れたりしたらライ君に迷惑が掛かるでしょ?」
「うっ、たしかに……」
「それにLv2の財宝の鑑定がまだなんだからそっちに希望を持ちなさい」
「そうだな……最初と最後はライがラックリンク使ってくれてたんだしきっと引けてるよな!」
「くっ! 俺の貴重な労働力が! おのれリリィ……」
「ちゃんと手伝ってあげるに決まってるでしょ?」
「マジで!? 助かるわ~、前回より絶対忙しくなるから1人じゃ屋台回せる自信なかったんだよ」
「前回より忙しくって……一体何を売るつもりなの?」
「ドラゴンステーキとドラゴンスープとドラゴンの鱗チップス」
「バッカじゃないの!? そんなの私達が手伝ってもパンクするわよ!」
そんなに? と思ったがドラゴンステーキだもんな。実物を食べた俺達だってお代わり確保に向かいたくなるんだし、ファンタジーの定番メニューを食したいプレイヤーは多いだろう。
リリィが呆れてるし、屋台をパンクさせずに回す為に1食の値段を高めに設定した方がいいかもしれないな。
「ステーキは1食5万コル、スープは5000コル、鱗チップスは2000コルにするよ。これなら買おうとするプレイヤーも減るよな?」
「そうね、金策イベントの最中じゃなければその値段でも良かったでしょうね」
「あっ……」
しまった、今はファフニールのおかげで基本皆小金持ちだ。新しく装備を整えたプレイヤーですらその出費を上回る稼ぎを叩き出せる今、この程度の値段は苦にならない! なんなら前回高過ぎて1食も売れなかったブレーネさんの料理だって売れるだろう。
俺は別にコルを稼ぎたくて屋台を出す訳じゃないし、これ以上値上げするのもどうかと思うんだが……。
「とりあえず当日までに丁度いい値段を考えておくよ」
「それがいいでしょうね」
「ライリーフ、アタシも手伝うぞ!」
「お、マロンも屋台手伝ってくれるのか?」
「今日はアタシが色々手伝ってもらったからさ。受けた恩はちゃんと返せって上の兄貴が言ってたんだ!」
「そっか。なら屋台の時はよろしくなマロン」
「うん!」
ちなみに財宝の鑑定結果だが、ライトは案の定バルムンクを引けなかった。他の皆が☆4のアイテムを手に入れているなかで1人だけ1番良いアイテムが☆3の腕輪だったのは少し可哀想だったな。
俺の結果? 共鳴の鈴って☆3のアイテムが出てくれたよ。癒しの首輪と組み合わせられそうなサイズで助かった。
……バルムンク? そんなのもう数えてねーよ。
現在のバルムンク所持数……20本




