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少女は戦斧と踊る

10時に書き終わってたのに投稿し忘れる痛恨のミス

「くっ、まさかこの俺が敗北するなど……」

「はっはっはぁ! アタシの勝ちだぜ!」


 ぬかった。まさか途中でレベルアップした分のステータスをSTRに全振りするなんて誰が思うよ?

 未だ50に満たないSTRの俺と、戦闘脳で元からSTRが高く木を伐ることに特化したジョブのマロン。二人の実力が逆転するのはそう時間が掛からなかった。


「なんか樵も楽しいな! スパーンって一撃で木を倒せた時なんか超気持ちよかったぜ!」

「今のお前ならトレントの森辺りでいい感じに稼げると思うぞ」


 ライトに聞いた話だと、トレントの森ってのは初心者用のエリアの割りに出てくるトレントが固いらしい。なので討伐に時間が掛かり、わざわざそこでレベル上げをするプレイヤーは少ないんだとか。

 ただし火属性の魔法や樵等の木を伐ることに特化したジョブのプレイヤーにとってはいい穴場スポットに早変わりする。

 しかもトレントの枝は魔法職の使う杖やロッドの材料になるので、経験値と一緒にコルもいい感じに稼げてお得なんだってさ。


「トレントの森って敵が固くて倒すの面倒だって攻略サイトに書いてあったぞ?」

「お前は今樵だろ? 木のモンスターの天敵みたいなもんだろうが」

「お~確かに!」


 てか攻略サイト読んでたのかよ。それなのにジョブの仕組みをあまり理解してなかったってことは……効率いい狩場の情報しか調べなかったなこの戦闘脳。


「さっそくトレントの森行ってくるぜ!」

「その前にファースに戻ってクエストの報告があるだろうが」

「そうだった! 早く帰ろうぜ!」

「本当に戦うことしか考えてねーのな……」







 ファースに戻りクエストの報告をさせる。

 木材の納品は常設依頼なので手持ちの木材が尽きるまで受注、報告を繰り返せるので、一度に大量の木材を集めておけばフィールドを移動する手間を省いて効率よく経験値とコルが稼げる。

 ふっ、自分では一切活かせてないけど普通にこれくらいの知識はあるんだぜ?


「お! まだ木材余ってるけど樵のレベルが最大になったぜ!」

「なら神殿に行って次に育てたいジョブに変えてこい。そうすれば手持ちの木材分のクエストの経験値を無駄にしないですむぞ」

「つまりアタシはより強くなるってことだな! へっへーん、これならきっとすぐに兄貴に追い付いつけるぜ!」


 ふーん。兄弟が先にこのゲーム始めてるのか。

 家の姉さんもΩ様と一緒にスプルドのソフト貰ってた筈だけどやるのかな? でもΩ様の寝心地だからなぁ……あのトイレに行くことすら億劫に感じる抗い難い幸福感に馴れるまではゲームに気が向くこともないと思う。

 俺ですら光介との約束がなかったら1週間はゲームを起動せずに睡眠の幸せを堪能していたろうし、あの姉さんなら数ヶ月単位でだらけていても不思議はない。


「よっしゃ! 戦士のジョブレベルも14まで上がったぜ!」


 早っ!? ジョブ変更から戻って来たことにすら気が付かなかった。


「早くトレントの森行こうぜ!」

「ストップ! その前に装備買い換えるぞ。クエストでコルも結構貯まってるだろ?」

「はっ!? 新しい武器買えるじゃん! 武器屋ー!」

「俺が言うのもなんだけど、防御も少しは考えろよ……」







「へっへっへー! これ見ろよ、超カッケーだろ?」

「それは、ハルバート……!」

「持ってるコル全部使って売ってる斧で一番良いのを買ったんだ! いいだろー!」

「うわぁ……」


 ゲームの中とは言え少しは考えて物買おうぜ。

 たしか大剣より威力が高い物が多いんだっけ。攻略サイトでは威力がある分取り回しが難しいって評価だった気がするんだけど、マロンは上手く扱えるのだろうか?


「武器も買ったしトレントの森に!」

「行くのはいいけど、まずはその辺の雑魚相手に取り回しの練習しようぜ?」

「えー……この辺のモンスターなんて一撃当てれば倒せるんだから練習になんねーよ」

「そりゃその武器なら当てれば一撃だろうさ。当てられればな」

「んだよ、まるでアタシが攻撃当てられないみたいな言い方しやがって……」

「拗ねない拗ねない。練習無しで戦って死に戻ったりしたらダサいだろ? だから少しくらい練習しようぜ?」

「うっ……分かった、ちょっと練習する。けどちょっとだけだからな!」


 そう、俺は軽い気持ちで練習を提案したのだが……


「ほっ! せりゃ! やぁ!」

「なんでそんなに扱い上手いんだ!?」


 マロンが戦斧を振るう度にモンスターが1体、2体と消滅していく。戦斧の重さと遠心力を利用して流れるような動作で次の獲物へ迫り、一閃。この繰り返しで周囲にいたモンスターは粗方倒してしまった。


「ふぃー……なんか途中から楽しくなって夢中でモンスター倒しちゃったぜ。練習はこれくらいでいいよな?」

「そ、そうだな」


 まさか剣を使っていた時に上手くモンスターを狩れていなかったのは扱う武器のレベルがマロンに追い付いていなかったからなのか? さすが戦闘脳、恐るべきバトルセンスだ。


「よし、なら今度こそトレント森だな!」

「言っとくけど俺は行かないからな?」

「えっ、なんで?」

「ファースでやることが山積みなんだよ」

「んなこと言わないで一緒に行こうぜ!」

「まぁ待て。トレントの森には行かないけど、変わりにとびっきりのモンスターとの戦闘を手伝ってやるよ」

「とびっきりのモンスター?」

「忘れたのか? 俺との木材集め競争にお前は勝ったんだぞ?」

「ん~? あっ! とびっきりのモンスターってもしかして!」

「そう! 黄金竜ファフニールに挑むぞ!」


 レベル1なら俺でも勝てると信じて!

いつも読んで頂きありがとうございます。

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