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普段の日常

 子供達と別れ、リターンホームでファースに戻った俺を出迎えてくれたのはセレネだった。


「ニャー」

「ただいまセレネ。部屋に入ってるなんて珍しいな」

「ニャウ」

「おお……俺がいない間に随分沢山アイテム集めたんだな、えらいぞー」

「ニャフン」


 LUKが高いだけあってレアアイテムっぽい物がいくつかある。本当に俺の眷属は優秀だなぁ。


(セレネの姉さーん? いきなり走り出してどうしたんです……って旦那じゃねーですかい。いつの間に帰って来たんです?)

「ようノクティス、帰って来たのはついさっきだよ。にしてもセレネ、わざわざ出迎えるためにここまで移動したのか?」

「……」


 ふっふっふ、今さらそっぽ向いたってそれが照れ隠しだってことはバレバレだぜ。


「留守番で寂しかったのか? 可愛い奴め!」

「ニャー……」

「はっはっは! 遠慮するなもっと撫でてやるぞー」

「ニャ!」

「あっ、待てよ! もっと撫でさせろー!」


 むぅ!? 地味に逃げ足が早くなってるだと! だが逃がしはしないぜ! ヒャッハー!


「とはいえ1人じゃ前回のおいかけっこと同じ結果になりかねない。悪いが数に頼らせてもらうぜ? おーいノクティスー! セレネ捕まえるの手伝ってくれー!」

(任せてくだせぇ旦那ァ! 姉さん、お覚悟!)

「ニャ!?」

(ふぁ……騒々しいぞ貴様ら。我の睡眠を妨げて何をしてふぎゅ!?)


 セレネのやつ、進行方向から現れたルクスの顔面を踏み台にして華麗に方向転換を決めやがった! しかも向かった方向は――


(ぬわぁ!? ルクスの野郎はともかくあっしまで足場にするなんて酷いじゃねーですか!)

「何今の動き! セレネよ、貴様いつから忍の者になった」


 超COOLなんですけど!なんて興奮してたら今回も敗北してしまった。次のおいかけっこでは絶対勝ってみせるからな!

 割りとどうでもいい誓いを胸に俺はログアウトした。





 翌日の放課後。


「悠、これからどうするよ?」

「スプルドはメンテだもんなー」


 スプルドは新イベと第二陣の受け入れ、そして新システム導入のために今日の昼から水曜日の夕方まで長期メンテナンスを行うらしい。

 ここ最近ずっとスプルドばかりやっていたので、メンテが終わるまで何をしていいのかちょっと迷うな。


「とりあえず本屋にでも行って適当な懸賞雑誌でも漁るか」

「本屋かー。俺の買ってるマンガ新刊出てたっけな……? あ、今日は夕飯食いに行くから俺の分も準備ヨロ」

「あいよー」


 なら今日は質より量だな。久しぶりに餃子パーティーでも開催するか。


「んじゃ、本屋の後はスーパーで買い物だな。荷物持ち手伝えよ?」

「もちろん! して、今日のメニューは?」

「ふっ、今日は餃子パーティーだ! 焼いて焼いて焼きまくるぞ!」

「フーゥ! テンション上がるご機嫌なメニューだぜ!」


 ちなみに学校帰りに夕飯の買い物ができてしまうことから分かるように、俺は我が家の食費を預かっている。

 節約した分は小遣いに加算していいことになってるから、これでも割りと買い物上手なんだぜ?






「ただいまー」

「おじゃましまーす」

「お帰り悠二。光介君もいらっしゃい」

「父さん? この時間に帰ってるなんて珍しいね」

「おじさん久しぶり」


 結構夜遅くまで帰って来ない筈なのにどうしたんだろ?


「はっ! もしや会社クビにでもなったのか!?」

「縁起でもないこと言うんじゃない。今年からVR部門に転属することになったんだけど、今日やっと仕事の引き継ぎが終わってね。明日からVR部門らしくフルダイブで出社することになって、そのための機材テストをするよう命じられて家に帰ってきたと言う訳さ」

「へー。でも日本の会社でVR空間内で仕事するって珍しいね」


 日本はVR技術断トツでトップな癖に変な所で懐古主義な所があるせいでいまだに満員電車に揺られながらの出社がデフォルトだ。既にアメリカとかヨーロッパではVR空間で仕事する企業の方が多いっていつかニュースでやってたっけなぁ。


「うちの社長が相当VRに力を入れてるらしいからね。たしか最近話題になったゲームにも技術協力したって聞いたんだけど……なんだったかな」


 もしかしてスプルドだったりして……いや、そんなわけないか。


「それより父さん、今日の夕飯は餃子パーティーだから父さんも準備手伝ってよ」

「餃子パーティーか……すまん悠二、ちょっとビールを買ってきてからでもいいか?」

「いいけど……まだ冷蔵庫に入ってなかったっけ?」

「せっかくだからプレミアムなやつを飲みたいんだ」


 そんなキリっとしながら宣言することでもないだろうに……。


「分かったよ。その代わり俺らのジュースも買ってきてよね、あとアイス」

「なっ、バカな……悠二が食費から5000円も渡してくれるだと!? 熱でもあるんじゃないか悠二?」

「失礼な」

「こういう所観てるとおじさんと悠って本当に家族なんだなぁって実感するわ」


 光介よ、それは普段俺があんな感じで人を煽ってるって言いたいのか? ……否定できねーわ。


「それじゃあ直ぐに戻るから、タネを作って待っててくれ」

「「いってらっしゃーい」」


 実に足取り軽やかに出かけるものだ。


「さて、サクッと準備を終わらせますか!」

「イエーイ!」

「悠二も光介君も楽しそうね」

「「!?」」

「ただいま。これお土産ね」


 か、母さん! いつの間に背後に……?


「お帰り母さん。てかこれ何? 石?」

「月の石」

「は?」

「月の石」


 いや、それは聞こえてるから。にしても月の石って……今回はどこまで旅して来たんだこの人。


「マジで月の石!? スッゲー! 俺も貰っていいんですか!」

「もち」

「やっふー!」

「なんの疑問もなく喜べる光介が羨まし……待った、母さんが帰って来たってことは」

「当然私もいます!」

「雪音、ちゃんと玄関から入って来なさい」

「はい先輩! 以後気をつけます!」


 どうやら今夜はいつも以上に賑やかな食事になりそうだ。

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次の石って億くらいした気が、、
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