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王都の子供達とカードショップ

 割りと重要そうなフラグを回収し損ねていたことにテンションがやや下がってしまったが、それでも欠片も情報がなかった状態からは大幅に進歩した。

 クエスト『シリウスの輝き』も達成条件がフードの男を追えに変わってたし、着実にこのクエストのクリアには向かっている筈だ。

 それに、エイルターナー公爵もフードの男の情報が入り次第俺に情報を渡してくれると言っていたので次の目撃情報が入るまでは放置でもいいだろ。闇雲に探しても見つかるとは思えないしな。

 おっと、もうこんな時間か。一旦ログアウトして夕食作らなきゃ。






 何故俺の取るアサリばかり砂入りなのか……。

 アサリの酒蒸しを作ると何故か俺が取るアサリにだけ砂入りのアサリが混ざっている。

 砂抜きはきちんとしているし、他の家族は誰も砂入りを引き当てないのに俺だけが引き当てるのが最高に腑に落ちない。

 以前アサリが最後の1つになるまで手を出さずにいたことがあった。他の家族は皆美味しそうに食べていたし、なんなら家に来ていた雪音さんや光介だって美味しそうに食べていた。それを見て安心して最後の1つを口にした俺だったが、案の定砂が入っていたのでしたとさ。

 はぁ……でも好きだから月一くらいで作っちゃうんだよなー。


「気を取り直してカードショップでも探すか……」


 再度ログインして王都を散策する。

 魚屋、八百屋、武器屋、肉屋、防具屋、鍛治屋、本屋、薬屋、魔法具屋……うーん、全然カード売ってそうな店がないな。

 仮にも国が信仰している神の一柱が遊びの神なんだからおもちゃ屋くらいあってもいいと思うんだけどなぁ。……ん?


「げーっ、またゴブリンかぶったー!」

「いっくん、もうゴブリンでデッキくめば?」

「つよいのだされたらかてねーじゃん!」

「そう? あ、ちーちゃん、そのオーガとハートパピヨンでこうかんしよー」

「いいよー」

「あーっ! ずりーぞケイ! ちー、おれのゴブリンとこうかんしてくれ!」

「かわいくないからや!」

「くっそー!」


 おっ、広場で遊んでる子達カード持ってんじゃん! 売り場聞き出すチャンスだぜ!


「なぁお前ら、ちょーっといいか?」

「は? なんだよにぃちゃん」

「だめだよいっくん! しらないひとはなしたらおこられるよ!」

「ふしんしゃだよ! じあんだよ!」

「こ、こいつら……」


 俺はまだ高校生だぞ? 何が悲しくてこの歳で不審者扱いされにゃならんのだ!


「は、ははは……ちょっとそのカード売ってる所教えて欲しいだけなんだけどなぁ」

「にぃちゃんもカードであそぶのか?」

「いっくん!」

「だめだよー!」

「(しっ、いいからおれにまかせとけよ)」


 何を企んでるのかは知らんが知恵比べならこんなガキに負ける気はしない。どんな手でも打ってくるがいい!

 あ、ステータスは俺の方が低いんで実力行使は勘弁な。


「べつにおしえてやってもいいぜ? でもタダってわけにはいかねーよなー?」

「ほほう、俺から情報料を取ろうってのか? ちゃっかりしてんなぁ。でも知らない人から物を貰うなって教わらなかったのか?」

「いわれたー」

「わたしもー」

「ちょっとおまえらはだまってろよ! もらうんじゃなくてろーどーのせいとーなほーしゅーだからいいんだよ!」

「なるほどな、ビジネスなら仕方ないか。で? 俺は何をお前らに渡せばいいんだ?」

「あそこのダンゴとあっちのジュースぜんいんぶんだ!」

「……ジュースはいいだろう。でもあの団子屋、やけに高級感漂ってない?」


 老舗の和菓子店みたいな佇まいしてるんですけど……ちょっと興味あるから後で自分用に買いにいこう。


「へん! あそこのダンゴがかえないならじょうほうはわたせねーな!」

「いっくん、あそこのおダンゴすっごくたかいっておかーさんいってたよ」

「きぞくさまもかうっていってたー」

「だからおまえらはだまってろってば!」


 ほっほーう? このクソガキ、そんな高いものを高々カードショップの情報として吹っ掛けて来やがったのか。

 まぁ億越えの資金がある俺には余裕で買えてしまうわけだが、それはそれ。これはこれだ。


「おいクソガキ、そりゃいくらなんでも吹っ掛けすぎだろ? 情報には適切な価値ってもんがある。それが守れないようなら、お前はいつか痛い目をみることになるぞ」

「……」

「あそこの串焼きとジュースくらいなら買ってやるから教えてくれよ。な?」

「……わかったよ」


 3人に串焼き3本ずつとレモネードっぽいジュースを買ってやり、漸くカードショップの場所を聞き出せた。


「ここを真っ直ぐ行って2回目の十字路を右に曲がった3つ目の建物か。教えてくれてサンキューな」

「……ふん」

「にぃちゃん、くしやきありがとー」

「ジュースおいしー」

「どういたしまして。んじゃ、また会うことがあればカードで勝負でもしようぜ。じゃーな」






「はっ、だれがするかよ……」

「いっくんよわいもんねー」

「うっせーぞケイ!」

「もー、ケンカしちゃだめだよー」

「べつにこれくらいケンカじゃねーよ!」

「ねぇいっくん、さっきにぃちゃんにおしえたのカードうってるとこじゃないよね? にぃちゃんにどこのばしょおしえたの?」

「んなもんふしんしゃにおにあいのばしょにきまってんだろ。 ケッケッケ!」






「えーと、ここを曲がって3つ目だから……ここか。すいませーん、カードくださーい!」

「ん?」

「あれ?」


 おかしいな、どこからどう見てもカードショップには見えない。

 建物の中には衛兵達が大勢いてまるで詰め所だ。と言うか詰め所じゃん。


「何か事件でもありましたか?」

「あ、いや、間違えましたー……」


 ……ふぅ。

 あのクソガキィ! 絶対に許さねぇ!

 天翔天駆を発動し最短距離で広場まで戻る。


「くっ、いない! いや、そこかァ!」

「げぇ!? もうもどってきやがった! ほらちーもケイはしれ!」

「うひゃあ!」

「おにごっこだー!」

「この、待ちやがれ!」



◆ ◆ ◆


 ライリーフが子供達を追い始めて少し経った頃、衛兵詰め所にて。


「何!? 子供が不審者に追われているだと! 全員、直ちに現場へ向かうぞ!」

「「「「応ッ!」」」」



◆ ◆ ◆



「ふはははは! もう逃がさんぞ貴様ら!」

「うわー! つかまったー!」

「キャー! たべられるー!」

「くっそ、なんでそらとべんだよアンタ! ずりーぞ!」

「はっはー! 何とでも言え! さぁ、今度こそカードショップの場所「いたぞー!」を?」


ドドドドドドドドド!!!!


「な、なんで衛兵の大群が……」

「にぃちゃん、はたからみたらこどもおいまわすふしんしゃだからね」

「しかたないね」

「へん! ざまーみろ!」

「こ、この野郎! お前がちゃんとカードショップの場所を教えてくれてればこんなことには「確保ォ!!!」

「「「「ウオオオオオオ!!」」」」




 数十分後、どうにか誤解は解けて俺は釈放された。

 ついでにカードショップの場所も教えてもらったが、見張りっぽい人達が俺の後をつけて来ている。あのクソガキ、マジで許さん。今度会ったら大量のレアカードを見せびらかしてやる!

やっぱり眠くなると途端に話が自分の手を離れて動きだしますね。

ストーリーの制御なんてとうの昔に諦めてるのでいいんですけど。

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