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料理と甘味は別物

 地下闘技場の闘いに勝利したことで借金がちゃらになり、更に俺の賭けた20万は2億になって戻ってきた。

 カジノのオーナーさんが金貨の詰まった大きな袋を直々に手渡してくれたのだが、何故かまだ仄かに暖かいバニーガールの衣装も一緒に入っていたことが非常に気になる。気になるが、せっかくなので貰っておこう。いつか使う日が来るかもしれない。

 そうだ、オーガナイトのドロップアイテムも忘れてはいけない。

 レアモンスター達を合成した奴からはさぞいい素材が手に入っていることだろう。



蒼角剣・モノケローム ☆☆☆☆☆

ATK480 耐久値800/800 INT+50 AGI+50

聖獣の守り 癒しの波動

※女性専用装備

ブルーソードユニコーンの蒼角を加工した剣

清き乙女のみが手にすることを許される

病魔を払い、傷を癒す力がある


漆黒の隠し爪 ☆☆☆

ATK220 耐久値300/300 AGI+20

クリティカル発生率上昇・中

クリティカルダメージ上昇・中

※アサシン系ジョブ専用装備

アサシンタイガーの爪を加工した暗器

黒き獣の本能は的確に命を刈り取るだろう


猛き闘争の腰巻き ☆☆☆☆

DEF10 耐久値500/500 STR+400

格闘ダメージ上昇・大

※男性専用装備

※他の武器、防具と併用不可

グラップルオーガの腰巻き

漢なら拳で語れ



 む、ドロップしたのは装備に加工済みの物が3つだけか。

 素材を落としてくれた方が俺的には嬉しいんだけど、まぁ落ちなかった物は仕方がない。

 にしても全部に特殊な条件がついてるな。

 現状俺が使えるのは腰巻きだけか……ネタ装備っぽいけど結構強いな。テキストも効果もシンプルで漢らしい。

 でもモノケロームが使えないのは残念だ。見た目は超格好いいし、ステータスも上がり聖獣の守りで状態異常になる確率が大幅に減少する。加えて癒しの波動でHPが徐々に回復していくなんて強力すぎる。

 角がそのままドロップしていれば男も使えるように加工できたかもしれないのに。ハァ……しゃーない、これはソフィアへのお土産にしよう。

 隠し爪の感想? たぶん使わない、以上。




 かなり稼げたので今日の所はログアウトしようとホテルに向かったのだが、まだノクティスが戻って来ていない。

 そこらのモンスターにやられることは無いだろうから心配はしていないが、何か面白いものでも見つけて遊んでいるのだろうか?

 まぁ部屋の窓でも開けておけば戻って来た時に入って来るだろうしログアウトしよっと。


「ふぅ……さて飯でも作るか」

「私がカレー作ってあげたよーん!」

「うわぁ!? あだっ! ……雪音さん、かってに人の部屋入って来んなよ」


 びっくりして頭をΩ様にぶつけてしまったじゃないか。

 ここのところ遊びに来ていなかったので油断したぜ。


「いいじゃんかー、私と悠君の仲でしょ? 昔は私のお婿さんになるーとか言ってたんだし実質ここは私の部屋でもあると思うの!」

「何その超理論! はぁ……ガキの頃の俺よ、汝は何故そんなアホなことを口走ってしまったのか……」


 てかそれって言葉の意味も分かっていない無垢な子供に、私のお婿さんになると言ったらこのお菓子をあげよう!とか言って無理矢理言わせたやつじゃん。


「そんな残念なことしてるから美人なのに彼氏が出来ないのでは……」

「うん? 何か言ったかな?」

「ナンデモナイデス」

「ふっ、美人の一言がなかったらうっかり去勢していた所よ?」

「バッチリ聞こえてるじゃねーか……」



 リビングに移動して雪音さんの作ったカレーを一緒に食べる。

 どんなアレンジをしたのか分からないが、後味だけが妙に甘ったるい。これは本当にカレーなのだろうか?


「雪音さん、食べ物で遊んじゃダメだよ」

「えー? 私はかなり本気で料理したんだけどなー。美穂ちゃんのお口には合わなかったかぁ……」

「カレーを不味く出来るのってある意味才能だよな」

「不味くはない、ただ絶妙に食が進まないだけ」

「あー、確かに。口に入れて飲み込むまではギリギリ普通だもんな。後味が次の一口を阻害してくる感じ?」

「二人とも酷くない!?」


 うちは父さん以外かなり料理が得意な方だ。なので必然的に舌も肥える。そんな俺達の前に謎アレンジを施した料理を出せばどんな感想が出るかなんて分かりきっているだろうに。


「でも前よりは食べられる料理になってるから、次はアレンジなしで基本に忠実に作ってみて」

「あぃ……でも甘い方がスイーツ的で美味しくなぁい?」

「ノン。スイーツとご飯は別物。ちゃんとしたご飯の後だからこそデザートのスイーツが輝くの」

「見た目麻婆豆腐なフルーツポンチ……嫌な事件だったぜ」

「うっ、流石にあれはやり過ぎたと思ってるわよ……」


 この人の厄介な所は普段は普通の味覚をしている所だろう。

 美味い物は美味いと感じるし、不味い物は不味いと正確に識別している。

 それなのにいざ料理を作らせて見ると全てが甘味に支配されてしまう。

 先程挙げた麻婆豆腐を筆頭に、バニラアイスの味がするシチューや黒蜜味のすき焼き等。料理の常識を越えた品々を提供されたものだ。

 それを思えばこそ、今回のカレーは十分に食べられる範囲だと言える。

 母さんがいればもっとまともな味に落ち着いただろうに……


「あれ? そう言えば母さんも父さんもいないのに雪音さんが来てるのって珍しいな」

「あ、本当だ」

「実は美穂ちゃんに頼まれてた物が漸く手に入ってね。それを伝えに来たって訳! 明日には設置工事に移れる筈よ」

「流石雪音さん。グッジョブ」

「でしょう? 私は誉められて伸びるタイプだから料理の方も誉めてくれると嬉しいなぁ?」

「甘味を抜けばたぶん美味しい」

「逆転の発想で元から甘い料理だけ作ればいいんじゃね?」

「もっと普通に誉めて欲しい!」


 スプルド第二陣の参戦は近い。

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