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地下の覇王

「ではこれを装備して名前を呼ばれるまで待機していろ。呼ばれたらすぐに出るように」

「はーい」

 おお、けっこう雰囲気ある装備だな。性能はどうだろう。



剣闘士の剣(レンタル品) ☆☆

ATK60


剣闘士の鎧(レンタル品) ☆☆

DEF50


剣闘士の腰巻(レンタル品) ☆☆

DEF20


剣闘士の首輪(レンタル品) ☆☆

DEF5



 うわ、思った以上にショボいな。

 もしやこんな装備でレアモンスターと渡り合ってる地下牢周回勢って何気に強かったりする? 


『さぁ皆様、ついに本日のメインイベントのお時間です! その幸運で2億コルを稼ぐも一瞬にして多大な負債を背負った憐れな負け犬、ライリーフ・エイルターナー!』

「誰が負け犬か!」


 呼ばれたから飛び出したが、いきなり負け犬呼ばわりは酷くないか?

 いったいどこのどいつが……ってバニーちゃんじゃん。何故マイクを持ってノリノリで司会しているんだ?


『負け犬らしく吠えることだけは一流のようですねー。さてさて、続いては彼が相手をするモンスターを紹介しましょう! その圧倒的強さはまさに伝説。かつてこの地下闘技場で多くの猛者達を屠った悪夢が今甦る! 融合超越魔獣キメラティックケイオス、究極甲蟲鎧騎・オーガナイトレクイエムゥ!!』

「ウォォォォォ!!!」


 な、なんだあれ!? こんな奴がいるなんて聞いてないぞ!

 おそらくキメラと言うからにはモンスターを合体させた物なのだろう。

 二足歩行しているし、名前的にもベースはグラップルオーガか?

 全身を黒光りする甲殻で覆われたその見た目は、鬼と言うより人形の虫の方が近い気がする。

 大きさはおよそ3メートル。右手に蒼く輝く剣、左手に亀の甲羅のような盾を携えるその姿は、なるほど騎士に見えなくもない。

 ん……? これキメラってより、鬼に他のモンスターの素材を装備させただけなんじゃないか?

 

『あっはっは! あまりの絶望感に声も出ないようですね! さぁ皆様、この憐れな負け犬がオーガナイト相手に何分持つか予想してみましょう! 賭けの受付は3分後に終了ですのでお早めにー』


 たぶんここで出現する5体のモンスターが合体しているんだろうけど、アサシンタイガーの要素が見当たらないな……。

 本人に聞いてみるか。


「なぁオーガナイトさんよ、虎要素は何処にあるんだ?」

「ハァ……」


 ため息を吐きながら、そっと下半身の甲殻をずらして中を見せてきた。

 悲しきかな、どうやらアサシンタイガーは鬼のパンツになってしまったようだ。


「いくら本物の虎皮でもトラ柄じゃないパンツは気分が盛り下がる……」

「あ、やっぱり鬼ってトラ柄に拘り持ってたりするんだ」

「格好いいからな」


 ……格好いい? うーん、鬼の感性はわからんな。


『締め切りまであと1分、どうやら5分も持たないと予想する方が多いようですねー? どうですかライリーフ・エイルターナー、貴方は誰にも期待されてないみたいですよー? あ、ちなみに3分も持たずに負けた場合借金は減らないのでせいぜい頑張ってくださいねー』

「げ、マジかよ。てか今更だけど何でバニーちゃんが司会やってんの?」

『知りたいですか? そんなの私のプライドを踏みにじった貴方がボロ雑巾のようにメッタメタにされる姿を実況したいからにきまってるじゃないですか』

「やだ、この娘怖い……」


 怒りをギリギリ抑えながらの笑顔も怖かったが、今の一見普通に見えるのに瞳の奥が負の感情で満たされたサイコスマイルには及ばない。


『せっかく私の独断で店側に借金を移したんですから……せいぜい足掻いて私を楽しませて下さいねー?』

「うへぇ……店側にメリット無いのになんで借金を肩代わりしたのかと思えば私怨かよ。よく店に怒られなかったな」

『怒られましたよ? ま、貯金下ろして4億キャッシュで投げつけてやったらオーナーも黙りましたけどね!』

「それオーナー死んでない……?」

『まだ息はしてたし大丈夫でーす。さて、雑談はここまで! やはり皆さんオーガナイトの勝ちに賭けてますね。貴方が勝つなんて誰も考えていないみたいですが、今のお気持ちは?』

「……まぁ妥当だろう。けど一つ間違いがあるぜ」

『間違い?』

「俺が勝つって考えてる奴が1人いる、俺自身だ。賭けの受付はまだ終わってないよな? ここではチップじゃなくて直接コルを賭けてるみたいだし、俺に有り金全部賭けさせてもらうぜ」

『ぷふっ……い、いいでしょう、特別に認めてあげますよ。負けて全てを失うといいわ!』


 俺が賭けたのは20万コル、そして予想が的中した時の倍率は驚きの1000倍と来たもんだ。

 ここで鬼に勝てたなら負けを帳消しにしてフォル婆との勝負にも勝てるだろう。けど――


「……」

「まぁ相手が堂々とお前に勝つ、なんてほざいてたら殺る気満々にもなるか」


 そこにパンツの柄を気にしていたアンニュイな鬼はもういなかった。


「ウォォォォォ!!!」


 地下の覇王の咆哮を合図に、闘いの火蓋が切られた。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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