眷属であることを証明せよ
書き終わってしまったので投下
本日2話目ですのでご注意を
「ふむ、この者がライリーフとやらか。そして連れているのは間違いなくフォーチュンダークのようだな」
俺は今玉座の間で王様相手に跪いている。周りには貴族が並んでいて俺の様子を伺っているようだ。
セレネ? まだ頭の上だよ。さすがに爪は引っ込めてくれたぞ。
「嗚呼、可哀想なフィリックちゃん! たったの3日でそんなにも痩せ細ってしまって! お父様、この者は打ち首にしましょう」
「これマドレーヌ。公務中は陛下と言いなさいと言っているだろう」
セレネのパーフェクトなスリムボディを可哀想呼ばわりとは言ってくれるなこのお姫様。この完璧なボディラインを見てその反応が出るなんてお宅の猫ちゃん太り過ぎなんじゃねーの?
「娘がすまんな。して、そのフォーチュンダークを何処で手に入れたのか聞かせてもらえるかな?」
「はい。あ、自分はプレイヤーですので口調やマナーが怪しいことについてはどうかご容赦頂きたく……」
「うむ、許そう」
「感謝します陛下。こいつは自分のスキル、眷属召喚を使用した際に現れたのです」
「眷属召喚……西方に住まう吸血鬼の一族や一部のモンスターが使用するスキルか」
へー。吸血鬼もいるんだ。
しかもモンスターとは別区分な辺り、転生システム使えばプレイヤーも吸血鬼になれそうだな。闇魔法とか使うと強そう。
「見たところ人種のようだが、そのスキルを何故使えるのだ?」
「……先の災厄を倒した際に入手いたしました」
「ほほう、此度の災厄を滅ぼしたのはおぬしであったか」
おお、なんと……、とか周りがざわついてるけど原因も俺だからなぁ。バレたら洒落にならん!
「ではそのフォーチュンダークが召喚したものであると証明できるかね?」
「証明? えー、少々お待ちを……」
セレネのステータス画面でも見せればいいのか? 確かここをタップして……んん!? 眷属とか一言も書いてないんだけどぉ!?
あるぇ? これって俺の眷属だって証明するの限りなく無理じゃね? このままだとセレネが姫さんに持っていかれて俺は牢獄行きでオレンジネームになっちゃうんじゃ……。
「おい貴様、早くしないか」
「ちょ、ちょーっと待ってくださいね?」
「証明なんて出来るわけないわ! だってその子は私のフィリックちゃんなのだもの」
くっ、お姫様うぜぇ! てめえの所のデブ猫(仮)と俺のセレネを一緒にすんなっての!
しかしこのままではセレネが俺の眷属であることを証明出来ない。一体どうすれば……!
考えろ、考えるんだ俺! セレネが俺の眷属だと証明する方法はなんだ? お姫様のデブ猫(仮)ではないと認めさせるにはどうすれば……は! デブ猫(仮)が見つかればいいのか!
あまり気乗りはしないがこの場で見つけ出すことが出来る可能性はある。大丈夫、確率は収束する。次の使用はきっと俺の有利な展開になると信じるしかない。
それはそれとして、成功確率が高くなりそうなこともしておこうと思う。俺はセレネに小声で指示を出す。
(セレネ、この部屋にいる1番LUK高そうな奴にラックスティールだ!)
「ニャ?」
(ばれなきゃ問題ない、やっちゃいなさい)
「ンニャウ」
……どうやら成功したらしいな。後ろの方にいた警備兵の一人が腹を抑えて走って行くのが見えた。
古くなった食べ物でも食べてて、運が低くなったことであたったのかな? すまんな、名も知らぬ兵士よ。
(次は俺にラックパスで盗んだ分のLUKを送ってくれ)
「ニャーゥ」
(……よし、LUKが500も上がったか。思ったよりいいぞ!)
これで準備は整った。後は乱数の女神が俺に勝利を運んでくれると信じるしかない。
「お待たせしました陛下。これよりセレネが俺の眷属である証明をいたしましょう。つきましてはこの場でアーツを使用する許可を頂きたく存じます」
「いいだろう。許可する」
断られたら無理矢理アーツを使用してリターンホームでとんずらこくことも考えていたのだが、すんなり使用許可が下りてしまった。
「陛下! いくらなんでも危険すぎます!」
「この者がどのようなアーツを使うかも分からないのですぞ!」
「なに、問題なかろう。余の側には最強の騎士が控えているのだ。いかなアーツからも必ず余を守り抜いてくれるさ」
「勿体無きお言葉です陛下」
あ、王様の隣に控えてたのってソフィアだったのか。ほにゃんとした雰囲気が消えてたから気がつかなかったわ。
エイリアンを素手で圧倒する奴が盾まで持ったフル装備でいるんだ。これで万が一アーツが攻撃になってしまっても王様は安全だろう。
「ではいきます! バタフライエフェクトォォォォォォ!」
「「「「「はいぃ……!?」」」」」
ふはははは! 周りの貴族が豆鉄砲食らった鳩みたいな顔になったぜ!
そりゃそうだろうよ。あれだけ自信満々な感じでアーツの使用を求めておきながら運ゲー仕掛けるんだもん。俺だって同じ状況なら何やってんのこいつと思う。
俺を中心に過去2回使用した時を上回る数の蝶が舞う。それはさながら竜巻のようで……ちょっと猫探すだけにしては派手すぎない?
いやいや、きっとこの演出は俺の願いに近い結果が出そうだから荒ぶってるってだけだから。そうだよね? そうだと言ってくれ!
ほどなくして蝶達は虚空へと消え去っていき、そこにはただの静寂が訪れた。
「……」
「……」
「……」
「「「「……」」」」
「あ、あっれぇ? おっかしいなぁ……」
あれだけ派手だった演出は一体なんだったのか!?
「……今のが一体何の証明に――」
そう王様が問いかけた時だった。
ガラガラドッシャーン! と天井の一部が崩れて俺めがけて降って来やがったのだ。
「うおわぁ!?」
「ライリーフ君! セレネちゃん!」
「うっ……ぐ、ゲホッゲホッ。なんか重っ……セレネ無事か?」
「ブニャアァ」
「あれ? お前なんかすごい太ってね? この一瞬で何があったし」
「フィリックちゃん!」
「ゴバァ!?」
お姫様に容赦なく蹴り飛ばされた。落ちてきた瓦礫ごと俺を蹴り飛ばすとかどんな脚力してやがるんだよ……!
「ニャー……」
「おお、セレネ。無事だったか」
「ニャア!」
「痛ぁ!?」
おもいっきり顔面を引っ掻かれた。もしやあのデブ猫(真)を一瞬でもお前だと思ったことに怒ってるのか? ははは、可愛いなーもー!
「フィリックちゃんたら何処に隠れていたの? すっごくすっごく心配したのよぉ?」
「ブニャア? フゴフゴ……ブニャアァ!」
「もう、そんなに興奮してどうしたのフィリックちゃん?」
なんだ? デブ猫が暴れ始めたぞ? 妙に血走った目で息荒くセレネを見つめているような……。
「はっ! そいつオスじゃねぇか!」
「??? フィリックちゃんはオスよ? 当然じゃない」
くそ、始めにいなくなった猫の性別を確認すればこんな面倒なことにはならなかったのか! ちゃん付けだからメスだとばかり思ってたぜ。
「ブニャアァ!」
「あ、フィリックちゃん!」
「ニャ!?」
姫様の拘束から無理矢理抜け出したデブ猫がセレネに迫る。
この野郎、俺のセレネにナニしやがるつもりだ!?
「ブニャアァ!」(オデと合体して家族になるんだょお!)
「させるかファッキンデブ猫が! 余分な脂肪全部削ぎ落としてから出直してこい!」
「プギョエ!?」
「フィリックちゃん!?」
「あ、しまった……」
思わず王族のペットを蹴り飛ばしてしまった。
王様と姫様とその他貴族大勢と兵士達の目の前で。
……誰かここから無罪勝ち取れるような凄腕の弁護士知らない?
いつも読んでくれてありがとうございます
人から奪ったLUKは時間経過で奪われた人へ戻ります
おまけ
とある兵士の戦い
ドンドンドン
「入ってまーす」
「クソ、ここもか!」
一体なんだってんだ?
いきなり便意に襲われたと思ったら何処のトイレも使用中か故障中だと?
自慢じゃないが俺はこれまでの人生常にラッキーの連続だった。
道を歩いていたらたまたま硬貨を拾うなんてことはしょっちゅうだし、金貨を拾ったことだってある。
硬貨を拾おうとしゃがんだ俺に物取りがぶつかって転んで逮捕なんてこともあった。
飯の時だって普通より肉が一切れ多く入ってたり、開店一万人目の記念に毎回トッピングが3つまでタダになる券ももらえた。
城の兵士になれたのだって色々なラッキーが重なったおかげだ。
なのに、なのにそのラッキーボーイな俺がトイレを確保できないだとぉ!?
「くぅ、し、城のトイレは全滅だ……いや、女子トイレなら空いてるかもしれない」
大丈夫、俺の運を信じろ!
きっと男子トイレが全滅なのも女子トイレに行けば良いことがあるからに違いない!
「も、もう少しだ。もう少しだから持ってくれよ俺の尻……」
あと200メートル。
この距離を制すれば俺の勝ちだ。
幸い便意の波は凪いできている。
これなら一気に駆け抜けることも可能!
「だがだからこそ堅実に行かねば……」
走った時の衝撃が波に変化をもたらす危険性もある。
慌てるな俺、急がば回れの精神だ!
「はぁ……はぁ……よ、よし周囲に人はいないな?」
なんとかたどり着いた。
ここは滅多に人の通らない区画のトイレ。
ここまで来ればもう安心だろう。
俺は便意に勝利したのだ!
「さて、早速用を足すとする、か……?」
「な、ななな、なぁ!?」
し、しまった! お貴族様のご令嬢じゃねぇか!
俺としたことが、最後の最後に気が緩んでトイレ内の確認を疎かにするとは!
「け、警備兵! 痴漢ですわー!」
「ち、違うのですお嬢様! これには訳が、うぐぅ!?」
と、特大の波が来やがった!
これはいかん、もう痴漢でいいからとにかくトイレに入らねば……
「そ、そこをどうか退いて下さい……もう私は限界なのです」
「い、いやぁ! こっちに来ないでーっ!」
「大丈夫ですかお嬢様、ってお前こんな所で何を!?」
「せ、先輩……俺は、もう限界で、あ。」
その後、俺は何故かあのご令嬢と結婚することになった。
意味がわからない?
安心しろよ、俺にも意味がわからない。
あんなものを見せられた責任を取れ、だったかな?
とにかくこれで俺は貴族の仲間入りさ。
やっぱり俺って超ラッキーだわ。




