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第五十話 青の巨人

「人狩り…行きましょうか?」

「なにか、物騒な響きだったのは気のせいでやすか?」

「なんのことかしら」

「もういいでやす…」


苦労人気質なマウロは相も変わらず、苦労性。

ドクターは二丁ほど拳銃を持ち、大樹庭園を出る。

付き添うのは、マウロとネロとミント。

然りと、ホルダーを作りそこに仕舞っているドクター。


「向かい先は山ですかな?」

「そうね~。そこの方が狩りやすそうだし、そうしようかな」

「…(こくっ)」


サムズアップするネロ。

早速と、山へ向かう。方角は北の方角。

ちなみにだが、冥界樹はドクターの地下研究所にて上部分のみを出して、地下深くに埋まっている。栄養源は地下水である。

王都の外に造られた、隠れ家から外に出たドクターたちはあるものを創る。

それは、骨と何かしらの皮と革で造られた車であった。


「流石、ドクター様。初めて拝見いたしましたがこれは一体?」

「これはねえ。私の死霊術で型づくりしてから、MPを動力源にしたエンジンを内蔵して、そのエネルギーで骨タイヤを怨念的な力で駆動して走らせているの。昨日造った」

「いつもでやすが、化け物なんでぇ…」

「禍々しいことこの上無いですが、ここまで来ますと神聖さすらも感じるでしょうな」


雑談と言うには恐ろしいメンツと内容だが、一行は車に乗り込み、発車する。向かう先は北の山脈。時速六十キロほどのスピードで疾駆する車。

異世界を走り回る車に対して、驚き逃げるモンスターをネロの骨腕が捕まえ、そのまま圧死させる。しばらくの間、そのような事が続いていくと、ドクターは速度を上げう。すると景色も変わって来る。

緑一面からやがて、茶が混ざり始める。

モンスターも、特色も変わり始め、動物型のモンスターは白色になり、爬虫類型のモンスターは失せ、【王国】にも【帝国】にも属さない領地まで来る。

いや、正確には【王国】に属してはいるが、辺鄙な辺境まで足を運ばないため、王国民にも認知されていないのである。

ドクターはというと…


「冬毛に変わるのは、設定?それとも本当にコロニーなどがあって生活リズム、食物連鎖もあって実際の動物のようにに変わるのかしら。ちょっと解体(バラ)してみたいわね」

「自動運転機能付きとは恐れ入りましたドクター様。いったいどのような原理で?」

「これ事故りやせんよねえ?大丈夫でやすか?…あっ!ネロ、身を乗り出さんでやす。中に戻って下せえ」

「…♪(ワクワク)」


薬品で麻痺させた白い狐のモンスターを片手に観察するドクターに、観察のために自動運転に切り替わった車を興味津々で見つめるミントに、初めて乗る車に興奮して身を乗り出すネロを案じるマウロ。車内はハチャメチャ。


「骨車…とも呼ぼうかしら。で、この骨車は、骨で型どられているけど、その本質は死霊術によって蘇ったアンデット系モンスターなの。モンスターであるなら動くし、主たる私に従うのは絶対で、MPを餌にして動かしてるわけ。マウロ、この骨車は意思を持ってるから大丈夫よ。ネロも、落ちたら拾わないから気をつけなさいよ」


生きたままナイフでモンスターを解体しながらドクターは言う。

マウロとミントは納得する。

ドクターが意地の悪い笑みを浮かべてネロに言い聞かせたので、ネロは怯えて窓辺から離れたのだ。

その様子を見て、三人は笑った。

それからはネロが骨腕だけを動かしてモンスターを狩り、ドクターとミントは解体・研究に勤しみ、マウロは雪景色に変わりつつある景色に目を見張る。

彼は王国領付近から基本動かないので雪が見たことが無かった。


「おっと…何でしょうかな?あれは」


ミントが何かに気が付いた。

一行が前方に目を向けると、そこには吹雪く世界。

現在いる場所と全く違う風景を映し出すのは百メートルほど前の地形。

猛烈な吹雪が山道へと続く道を覆い隠し、白一色に染めている。

視界は悪いことこの上なく、奥行きは見えなく、ドクターとミントの視界内には唯一、【レンドル山脈】と出ている。このエリアの名称だ。

ドスン……ドスン…ドスン。

どこからか、そんな音が聞こえて来る。

やがてその音は大きさを増し、ドクターたちは音源が近づいていることに気づく。

耳鳴りから雑音へ。雑音から囁きへ。囁きから爆音へ。

大から小。小から大。

腹に響く音が接近する。その事実に警戒を深める一行。

真っ直ぐにこちらへ来ているのだ。的確な意思があることに違いない。


「ミントとネロ前衛、マウロ中衛、陣を組みなさい」


車から迅速に降り、無言で従う三名。

合わせるように、白銀の吹雪から黒い影がぬっと顔出す。

その大きさは数十メートルにも及ぶ。

冥界樹と比べればいい勝負をしたであろうその大きさはドクターからすれば巨大。シルエットはヒトガタ。

遠めに見れば、巨人にも見えるそれは姿を見せる。


「デカいわねー」


腑抜けた声を出して、ドクターは見上げる。

薄い青色の肌に、黄金の王冠と鎧を身に着け、灰色の髭を蓄えた巨人。


「OOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」


巨人は咆哮を上げた。同時に膨大なHPが現れる。

ドクターは口端を上げて、台詞を気障らしく言う。


「実験開始」

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