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第四十九話 拳銃

「こっちでも出来るもんね~」


ドクターは現在、冥界樹にて大樹庭園。

その場所で、ある作業を行っていた。

『変形』を使用して、鉄インゴットを機械部品に変形させて色々しているのだ。

中には物騒なモノもあるが、螺旋になった筒状の物や、グリップに似た何か。

隣では、マウロがドクターが製作した部品を組み立てており、ネロは紅茶を入れている。その手際はプロ並み。


「我が主神よ。例の物を持って参りました」


ふと声が掛かる。

禍々しい冥界樹に乗り込める者も貴重であるが、声を掛けた男の名はミントと言った。

ドクターを信奉する余り、「ドクター職人協会総合教会」というギルドを設立した男。

そして幾刻か前にドクターはミントに依頼をしていた。


「ドクター様に依頼して貰ったことに加え、貴女様に貰いました素材を使ったために皆のやる気は凄いものでしたよ」

「それはよかったわね。で、物は」

「こちらに」

「……上出来」

「ようございいました」


ミントから手渡されるのは四角い箱。

中には金色に光る、円錐の物。

それは三つの部品から構成されていて、それぞれ、パウダー、プライマー ケースという。

まあ、直球に言うと、銃弾だ。

リアルで機械いじりに嵌まったドクターは、クレアシオン・オンラインでもできるのではないかと思い、実行に移した結果―――。


「まさか、銃弾の製作依頼が来ようとは、光栄なこともあるものですね。マウロ殿がそろそろ組み立て上げるころ合いですかな?」

「そうでさァ…。設計図が有るからと言って簡単にはできやしないもんでしょやこりャ」


ドライバーなどの工具を持って、ドクターが作った拳銃の部品を組み立てるマウロ。


「それにしても、AIが了承する物かしらねえ。この武器。まだこのゲームに無いんでしょ?」

「大丈夫ではないでしょうか。新武器…拳銃などの銃火器類であろうと最終確認先はGMです。あのGMならば銃であろうと喜んで承諾するでしょう。しかしダメージなどの減衰はあると思いますが」


ドクターは、拳銃の各部位を魔力ポーションを飲みながら量産する。

またもゲームバランスを崩し始めた一幕。


「ああ。ミントに一つ頼みごとをしようと思ってたのよ」

「なんですか?何でもやりますよ。王都爆破ですか?帝国爆破ですか?聖国爆破ですか?」

「なんで全部爆破なのよ。違う。私が頼みたいのはネロの育成よ」


ネロがドクターの近くに侍る。

今のネロの格好は燕尾服。少年執事然としている。


「この少年ですか」

「そう。私のデスペナルティを一回分救って貰った恩があるから配下にしてるのよ」

「なんと!それは丁重に扱わねばならぬ相手ですな!」


大げさに驚いて、ネロを見つめるミント。

その眼差しは、相手の本質を見抜こうとする鋭く、昏い眼である。

堂々と見つめ返すネロ。死んでいるからなのかは分からないが中々の胆力。

どちらも濁った様な目で見つめ合い、しばしの時が過ぎる。


「良いでしょう。で、この少年には何を指導すれば宜しいのでしょうか?我が主神よ」

「んー。双剣と多対一の戦闘をお願いできるかしら?」

「分かりました。明日からでも始めましょう。よろしくお願いしますネロ」

「…(こくこく)」


ネロは頷いて、ミントと握手を交わした。


「出来やした!」


声が上がる。

マウロが声を高らかにして、拳銃を持ち上げている。

ついに完成した。


「おめでとう。じゃ、頂戴」

「はいでやんす。どうぞ姐さん」


渡された黒塗りの拳銃を手にして、遊ぶドクター。

銃弾が込められたマガジンを拳銃に込めて、リロード。

地面に向かって足を三度ほど蹴りつける。

すると、どこからともなく樹木の手が伸びて来て、その先に大きな実を成らす。

クリフォトとは言葉は通じないが意思疎通は完璧なドクター。

ガチャ、と音を立てて拳銃を両手で構えて、引き金に手を掛ける。

空中に留まっている実に向けて、引き金を引く。


パァン!


甲高い破裂音を立てて、弾が発射される。

銃口から飛び出た銃弾は高速回転を決めながら真直ぐに飛び、実に当たる。

実に弾頭が食い込み、食い破る。

彼方へと消えゆく弾を見送り、振り返る。


「大成功」

「良かったでやす」

「凄いですね」


賞賛を受け取り、得意げに鼻を高くするドクター。

この者達はドクターが何故、銃を扱えているのかに注目しないのか不明である。が、実際にこの拳銃の攻撃力はそこらの武器の数倍はあるため、強武器である。


「マウロ」

「なんでやすか?」

「量産頼んだわよ」


マウロは絶望した。

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