第四十七話 王都動乱・終章 エピローグ
今回は短いです。
短くてすみません…。
次の章の構想を練っていたんです。
次の章は、感想に送られてきた案をかなり使うと思われます。
「あ、終わったのね?」
「はい。終わりやした」
「ふーん…そう」
ドクターは淡々としているがその顔はどことなく、面白く無さげな雰囲気が漂っている。
その理由も、【万矢万貫】の様な強者がいたが故なのだが。
「…やっぱりダメ?」
「ダメでさァ」
「え~、ケチー」
ドクターが先ほどから問いているのは、マウロリー・クロサウの死体の譲渡である。理由もお察しだが、ドクターにとって、英雄程の実験素材も中々にないのであろう。
けど、マウロにとっては折角討った仇を、蘇らせる可能性がある者に渡すのは憚られるのだ。恩や謝辞はあっても渡す通りもない。
「あら。ネロも終わったの?」
「…(こくん)」
いつの間にか、接近していたネロに気づくドクター。
ネロは小さく親指を立てて頷く。
「それじゃ、終わりにしましょうか」
「はい」「…(こくん)」
嫌な笑みを浮かべて、ドクターはある場所に向かう。
その場所は土壁で囲まれていて、大きな衝突音が聞こえている。
一人と二体が行くと土壁は消えて、中から聖職者の男と女が数名いる。
男は終始、笑顔で鉄の棒を振り回して居るが女等はバテている。
男はドクターたちに気づくと、満面の笑みになって鉄棒を振り回すのを止めた。
「これはこれは我が神よ。ご機嫌麗しゅう」
「ずっと足止めしてたのね。ご苦労」
聖職者―――ミントは恭しく、一礼をして印を切った。その姿はまさしく信仰深い聖職者にしか見えなかった。
そんな彼に、ドクターは一瞥をくれた後に歩き出す。
「貴女たちも大変ねぇ。マコトはもうデスペナルティを受けたわよ?」
「なっ…!?」
マコトの仲間は驚愕した表情を浮かべる。
その後に、ドクターを睨む。だが、張本人はどこ吹く風。
「ミント。やって良いわよ」
「承知致しました。では失礼して―――」
ミントは数メートルある鉄塊の棒を持ち上げると、マコトパーティーへ投げつけた。
爆砕音が響いたと共に鉄棒がパーティーを全員がポリゴンへと変えた。
ドクターは満足そうに笑むと、また歩き始める。
向かう先は冥界樹の枝の先。
枝の先にミントを含めて四人が乗ると、軋みを上げて降下を始める。
降り始めた枝は地上から数十メートルまで来たところで停止する。
「あれ、ドクターじゃねえか…?」「悪魔が来たぞ!全員構えろ!殺されるぞ!」「逃げろーーーッ!」
地上は阿鼻叫喚の地獄絵図を描いており、死屍累々の状況下である。
して、プレイヤーとNPCはまだ戦意を失っていない。未だにドクターへと悪意と殺意ある視線を送っている。
「フィナーレと行きましょうか。物語は終わりへと往くものなのだから」
彼女は吊りがった頬を緩めて、呪言を吐く。
「『死霊術』」
その声は言霊と成りて、戦場を揺るがす。
効果はてきめん。劇的な変化が起きた。
戦場に伏していた死体が人外の動きで起き出したのだ。
人体の限界を超えた動きで起きたソレ等は焦点の合わない瞳を動かして、腐臭を感じさせる呼気を出す。
ドクターは戦場にある死体を蘇らせたのだ。
そして、死体は何もこの時、この場で死んだ者達だけではない。
地面が盛り上がり、骨の抜き身が現れる。
幾千、幾万もの戦士たちが踏み固めた、硬い地盤を破って出現したアンデットは、強大で巨大な物。
いくつもの人骨が合わさって、巨大な人型をしているのは日本のアンデットの代名詞。
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PLドクターの配下:我謝髑髏/LV39
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巨大骸骨は主の命に備わって、プレイヤーとNPCの殲滅を開始する。その他数万を含むアンデットも低レベルながらも戦闘を始める。
そこには所属国もプレイヤーもNPCも関係無い。只の虐殺が待っていた。
「ではでは、私もお手伝いを」
「ん?何かするのかしら」
「勿論ですとも。我々、『ドクター職人協会総合教会』はドクター様を支援、信仰するためのギルドであり、同士であるのですから」
仰々しく万歳をして、ミントは信号弾らしきアイテムを射出する。
信号弾は遥か上空中で赤十字を描く。
そして次の瞬間、戦場に異様な集団が。
その集団は全員が聖職服を着ており、姿はミントの劣化版とでも言ったところだろうか。
「あの者等は貴女様の信者であり、私の同士であります。攻撃対象外にして頂けると幸いです。まあ、それでやられても喜ぶ者がいるのですが‥‥」
「…対象外にしとくわ」
ドクター職人協会総合教会が加わった、ドクターの戦力は瞬く間に敵勢力を殲滅し…。
「終わったわね」
程なくして、戦場に静寂が戻る。
「帰りましょうか」
「了解でさァ」「…(こくこく)」「では私もご一緒に」




