第四話 実験開始!
≪『中級薬物作成』のスキルを取得しました。『初級薬物作成』スキルは消失します≫
そのアナウンスが鳴ると同時にドクターは作業を終え、伸びをする。
「これで終わり~。全部の薬草をポーションに出来たわ」
ドクターは毒ポーションを作り終わった後、森で採取した薬草を全てポーションに加工していた。
その結果がこちらだ。
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初級魔力回復ポーション 状態:良
MPを回復するポーション。状態が良いため苦味は少ない。
初級の為回復量は少ない。
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魔物避けのポーション 状態:普通
モンスターが嫌がる臭いを発するポーション。
強いモンスターは普通に寄って来るから注意が必要。
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魔物寄せのポーション 状態:普通
モンスターが好む臭いを発するポーション。
強いモンスターが寄ってきてしまうこともあるから注意が必要。
悪用禁止(下種顔)
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除草薬 状態:最良
森から取れた薬草なのに何故か除草効果が付いたポーション。
植物系モンスターに掛けると枯れる。
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(こんなもんかしらね。『薬学』スキルのお陰で一度作ったポーションを素材さえあれば作業しないで作れるのは良い設定ね。それにしても説明文がふざけているのは運営のせいかしら?)
ドクターはガラス瓶に入ったポーションを見てふと思う。
(これガラス瓶じゃなくて試験管の方がいいわね。ガラス瓶だとしっくりこないわ)
ドクターはそう思うとメニュー画面を開き、GMコールをする。
GMコールとはゲームマスターコールの略称で文字通りゲームマスターに色々なことを聞くことが出来る機能だ。だがこの様な用途でGMコールをしたのはドクターが初めてだろう。
『はーいこちらGMコールでーす♪要件をどうぞ!』
ガチャリという効果音と共に若々しい声が聞こえる。
ドクターは物怖じせず要件を言う。
「このポーションのガラス瓶を試験管に出来ないかしら?」
『その心は?』
神妙な声でそう問われる。
当たり前だ。本来GMコールとはプレイヤー同士の仲裁やバグ、不明な点などを報告、質問する機能だ。
「その方が面白いし、雰囲気出るじゃない」
『・・・・・・ぶっ!アッハッハッハハハハハハ!最高!君名前は!』
突如としてGMコールは爆笑する。
そして名前を聞かれる。
「ドクター」
『ドクター!いいね!職業も学者だしまさにピッタリだ!いいだろう!君にだけガラス瓶を試験管に変える権利を上げよう!』
目の前にガラス瓶を試験管にしますか?とウィンドウが出て来る。
ウィンドウのYESを迷わず選択するドクター。
そうして押した瞬間ガラス瓶が全て試験管に変わる。
『久しぶりに面白い疑問をしてくれた君にプレゼントだ!』
≪GMから貴女に【試験管入れポーチ】が寄贈されました≫
アナウンスが聞こえたと思ったら次の瞬間腰に試験管が百本は差せるケースが付いたポーチが付く。
『それは僕からのプレゼントだ!試験管は任意でインベントリからポーチに移せるよ!それを活用して頑張ってくれ!』
「そう?ありがとう。助かるわ」
『いーや、気にしないでくれ!じゃあ他にもGMコールが来てるからじゃあね!プレイヤードクター僕は君の活動を応援するよ!』
その声を気にブツリとGMコールが切れる。
ドクターはポーチの動作を確認する。
(どうやらこれは本当に思っただけで移せるようね。本当GMには感謝だわ)
「それじゃ毒ポーションも出来たし、実験に行きましょう」
ドクターは学者ギルドを出て、森へと向かう。
白衣を纏い、腰のポーチに試験管を差した姿は偶然か必然か現実で研究所に勤めていた頃の姿と酷似していた。
「さーてそれじゃ、私の光栄な実験の実験体一号はいないかしら?」
ドクターは一度しか来たことが無いが慣れた足つきで毒ポーションの実験体を探す。
そして五分ほど森を彷徨い、不幸な実験台一号ことフォレストウルフと言う緑の体毛の狼を見つける。
「行くわよ実験台一号君!・・・えい!」
投げられた毒ポーションは山なりに放物線を描き、見事にフォレストウルフに着弾する。
「キャウン!」
毒ポーションが直撃してフォレストウルフは悲鳴を上げる。
それと同時にフォレストウルフの頭上のHPのアイコンに紫色の泡のアイコンが足される。
毒のアイコンだ。
フォレストウルフは遠くから投げられたためかドクターを見つけられず数分彷徨いポリゴンになり、消滅する。
≪レベルが上がりました≫
≪ドロップはインベントリに送られます≫
≪称号:『毒使い』を取得しました≫
「よしっ!実験成功!」
ドクターはインベントリのフォレストウルフの素材を確認して思わずガッツポーズを取る。
そして称号の確認をする。
『毒使い』
毒によりモンスターを倒した時に取得できる称号。
毒の効果を1%上昇させる。
「強いわねこの称号!・・・じゃあ実験を続けようか」
その後もドクターはポーションによる毒殺を続けた。
無くなったら周囲にある薬草を採集して、インベントリにしまってあるポーション作成キットで量産する。
そして毒殺し始めて一時間が経ち、ポーションの数も薬草も増えたドクターの前にとあるモンスターが現れる。
そのモンスターはラフレシアの花に植物の蔦が数倍、太く、長い触手がついたモンスターだった。
ドクターは恐々しながら鑑定を掛ける。
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【名前付きの怪物】幾万もの毒・ラフリシア/LV30
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
巷で話題になっているネームドモンスターだった。
そしてそれを見たドクターは・・・。
「実験台発見!」
そう叫んだ。




