第三十八話 王都動乱・破章 水山主の湖山
生存報告を兼ねた投稿です。
話数稼ぎなのは内緒です。
というか、申し訳ないのですがこれからも投稿頻度は遅れそうです。すみません。本当にすみません。
戦争とは毎度の如く被害を被るのは町民や農民である。
これは歴史が語って来た変わりない事実である。
例えば、現実であれば十字軍などが有名であろう。
兵士が正義を抱え、敵国に乗り込み、略奪や凌辱などあり溢れた話である。
戦争においても農村の作物が搾り取られ、仕事の中心である男手も奪われてしまうからして町民も税を上げられ、苦しむこととなる。
そして戦争を起こすためには条件が幾つか必要となる。
一つは国同士が敵対、またはそれに類似した状態であるかだ。
何の関連も、ましてや友好な国同士で戦争は起きないだろう。
して、戦争はまず国同士の仲が第一問題となる。
一つは攻め込む側の国が攻め込める条件下にあるかである。
防備がガチガチに堅められ、兵士の士気も高く、とてつもなく強い人がいる国をどこの国が攻めようか。攻め込む側の国も竜を討伐した者達がいる国に攻めでもしたら逆に国の首都でも落とされてしまうかもしれない。それ程にして国の戦力や士気は深く関連してくるのである。
一つは備蓄関連だ。
戦争を起こすには勿論のこと大量の戦力人材や武器防具などの数々に加え、戦争期間にも比例するが食料なども重要になる。
日本の城などには籠城戦のために城の畳や床、壁などに作物を使っていた国もあるくらいである。
だが、しかして。
その作物は何処から来るのであろうか?
それも面積が広大。水はけなども良く、雨も適度に降り、のどかな田舎などが好まれる。
つまるところ・・・此処。王国外周領地、農村集落だ。
「川上はどこにあるか知ってるかしら?」
「川上、ですか・・・川上ならここから南の山を登ったところに源流があるとかなんとか爺様方が言ってたような・・・」
「そうなの。それじゃ失礼するわ」
ドクターは農民に、にこやかな笑みを浮かべ、農村の出口へと向かう。
農村の中にいる子供たちに手を振りながら笑いかける。
それだけ見ればドクターの行為はごく普通な一般的、友好的なモノに見えるがこれから行う所業をみるからして悪魔の所業と思うだろう。
農村の粗末なモンスター避けの柵を跨ぎ出たドクターは話に聞いた南の小さな山に向かう。
王国領の端っことは言え、モンスターは一応プレイヤーや王国騎士に討伐されているのでモンスターはほとんど湧かない。現れたとしてもすぐに毒ポーションで毒殺してしまうので問題にもならない。
「ここが南の山、ねぇ・・・」
ドクターの目の前にはひょっこりと頭を出す山が姿を見せており、視界上には『水山主の湖山』と表示されている。
「みずやまぬしのこさん・・・であってるかしらね?まあ、行ってみるしかないわね」
『水山主の湖山』に登り始めたドクターは早々に厄介な敵に出会う事になる。
それは蛇系のモンスターである。
この山に出現するのは蛇の見た目を形どるモンスターの群。
某日にてドクターがどこかの勇者に仕向けた漆黒の蛇と似ているものともすれば、緑の鱗に覆われた擬態、奇襲する蛇だったりと弱いながらも厄介な敵にドクターは・・・。
「『死霊術』」
スキルを発動した。
公爵暗殺の一件から、暗殺された張本人にもらい受けたこのスキルは一度しか使ったことが無いスキルだ。
本来『死霊術』とは『闇魔法』系統の魔法スキルから派生した物とこの世界ではそう設定付けられている。
『闇魔法』スキルは【勇者】などが持っている『光魔法』スキルの術者強化や武器に纏わせるなどと違って、反転している。敵対者のステータスを下げる魔法や攻撃特化の魔法が多い。その中には相手を状態異常:混乱にする魔法もあり、その魔法は魔力・・・MPを糸状にして頭に繋ぎ、思考を邪魔する、といった様な本当に使用には創造力が試される魔法である。
『死霊術』はそれを応用したものとされ、MPを糸状にして死体に繋ぎ、疑似的な生命を与えるスキルである。
それは想像するのがとてつもなく難しいのだが、ドクターに掛かれば一回目で成功したものである。
そしてここにはドクターが設定メニューで設定を施したお陰で大量に残った蛇系モンスターの死体が大量にある訳である。
それに向けて死体を操り、使役する『死霊術』を行使した場合にどうなるかは一目瞭然だ。その結果はドクターの視界の先で物語っている。
「えっぐぅ・・・・・・」
スキルを使った本人さえもが引く程の惨状である。
毒殺された蛇の腐り、穴が開き、切り裂かれた体は血と腐肉の臭いを振りまき、謎の呼気を上げて、生きている生者ならぬ生蛇に向かって猪突猛進し、欠けた牙で噛みかかる。
生来、鼻が良い蛇系のモンスター特有の特徴を持つモンスター共は腐った腐肉の蛇軍団に対しそそくさと退散する。それに加えて、ピット器官と呼ばれる器官を持つ蛇は体温で判断することも出来るが目の前の変温動物として己と同じ姿なのに冷たい肉の塊は不気味に見えたのかもしれない。
そうして死者の行軍は奧へ、奥へと進む。
程なくして山の頂上付近へと到着する。
そこは湧水が湧き出ていて大きな池の様になっていた。周囲には草木が生い茂っている。
この原水の湧きどころはここら王国の村周辺の川へと繋がっている。
その場所へとドクターが近づいたその時、湧き場の水中から大きな影が上がって来る。ドクターは危険をいち早く察知し、その場から飛びのく。
「なっ!?」
その行動が正解であったことを早くも知る。
ドクターの生み出した死霊の軍団が影から放たれた水の砲に弾かれ、粉々になったのだ。
そして水鉄砲の元を辿るとそこには湧き場から頭を傾がせた巨大な蛇があった。
すかさず『鑑定』を発動させるドクター。
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エンシェントスネーク/LV43
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レベルと名前兼種族名を見たドクターは一言、
「アレ、欲しいわね」
と言った。




