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第三十六話 王都動乱・破章 堕ちた英雄

≪暗殺ギルドより報酬金が送られました。詳細は暗殺ギルド証よりご確認下さい≫


ドクターがトンデモな義足を作成した(のち)にアナウンスが鳴る。暗殺ギルドが報酬を暗殺ギルド証に送った時の報告確認だ。

【屈服せし巨人王の義足】の調整やリハビリをしていたドクターは報酬をコインよりインベントリに移し、自分もまた、行動を開始した。


「まずは納品用の毒ポーションを暗殺ギルドに納品ね」


広大な地下の地下通路を通り、階段を上がる。

階段を上がるとそこには()()()()()()()()()()()

この家はドクターがもしもの為にあり余るマネーで購入した二つ目のマイホームである。これにはゲーマーである狂華と研究厨のドクターのマネー使いを呆れる他無い。

だけども今回は幸いした。

スラム街は公爵暗殺容疑・・・いや、暗殺者であるドクターを見つけんがためにスラム街の方のマイホームは騎士や街兵に固められてしまっているからこちらのマイホームに来たのは正解だった。

であるからしてドクターは王都の物品店が立ち並ぶ、目抜き通り―――通称、大通りへと出た。

それからスラム街近くにある暗殺ギルドへと急いで行った。

カトラに毒ポーションを卸し、状態が良かったので報酬も割高になった―――が既に2億マネーを持っている為に無関心であったが。


「マウロは?」

「あの情報屋めでございましょうか?」

「そうその情報屋。薄汚いアレ」


ふむ、と首を傾げて思案するカトラ。妙齢の男性がやるのもどうだろうと思うドクターであったがカトラがやるそれは様になっていた。

心当たりがあるカトラは指を弾き、語る。


「そうでございますね。あのマウロとかいう者は確か表のバーで変装して飲んだくれてると思われますが」

「そう。ありがとね」


ドクターはマネーを少しだけポン、と置き、表の酒場へと出た。

その中で厚着の丸い体系の男を見つけて、声を掛ける。


「情報を売りなさい」

「・・・その声、姉さんですか?」

「姉さんって言うのやめなさい」

「やっぱ、あねっさんじゃないでやんすか!」


大声を上げたために変装していたマウロは店主に睨まれる。

一度大きく震えて、持ち直したマウロはドクターに向き直る。


「聞きやしたよ、姉さん。依頼成功したらしいじゃないですか。おめでとうございます。・・・・・・それで依頼とはなんでさぁ」


マウロは幾分か音量を下げて話始め、ドクターの表情を見て声調を真剣な物へと変えた。


「この紋章の貴族、または有力者は知ってるかしら?」


そう言って取り出すのは自らの元足を吹き飛ばした金色の装飾が施された銀の矢。矢を見たマウロは形相を歪めた。忌む物を見るような視線で。


「これをどこで?」

「依頼でちょっとヘマして、ね」

「そうでさねえ・・・これは金は要らんです」

「?」

「これは個人的なモノもあるんでさ」


今度は逆にドクターがマウロの表情を見て、耳を傾けた。一言一句聞き逃さぬように。

重苦しいモノを聞かせるが様にマウロはかつてを思い出しながら声と喉を震わした。


―――かつて、王国にたった数人で竜を倒した者たちがいた。

竜それは別名ドラゴンと呼ばれ、モンスター界でも人間界でも最強としての地位を確立していた。しかしその竜に数名で挑み、勝った者達がいた。

一人は万物をも断ち切る天才剣士、

一人は何物をも貫く鬼の如き槍使い、

一人はどの様な負傷をも治癒する救世主、

一人は竜の息吹すらも防ぐ鉄壁の守護、

一人は何里をも離れていても当て、刺す、長弓使い。

この五名が三日三晩掛けて最強の種、ドラゴン種を倒した。

王国の民や王侯貴族、王族は彼、彼女等を褒め讃えて、爵位を持つ物には階級を上げ、持たない者には最上位爵位を授けた。

そして五人は、”英雄”と呼ばれた。

英雄達は己が倒した、ドラゴンの血肉を食らい、不老不死・・・とまではいかずとも、遅老超生命となった。

老いは、遅滞し、肉体は常に活性化し、超人の膂力を見せた。

だが、いつしか英雄の幾名かは長い長い人生に嫌気が差し、自害をした者もいた。その内には民からも慕われていた者もいた。

残った者達はその者等を愚かと嘆き、己が欲望を無辜の民にぶつけ始めたのだ。

スラム街に居る者達だからと攫い、拷問し、弄び、絶望させた。

それを娯楽として遊んでいた英雄はいつしか堕ちたとまで言われ始め、あの言葉は更に彼らの行為を促進、悪化させた。

勿論、被害者には家族もいるわけで―――



「あっしの親父もその内の【万矢万貫】と呼ばれる弓使いに殺されたんでさァ・・・」


涙ぐんだ、声でマウロは語った。

脳裏には無残な姿にされた父親の姿が浮かんでいた。

それを聞いたドクターは・・・。


「マウロ。貴方は情報屋なんでしょう?」


かつての問いを再びぶつけた。


「・・・え?あ、はい。そうでやすが・・・」

「ならば、働きなさい。私の為に、そして貴方の為にも」


そう言って頬を上げた。

これも、またいつかの様に。

復讐と少年への恩返しとどこかの情報屋の為に。

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