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第三十五話 王都動乱・序章 【屈服せし巨人王の義足】

マイホームに入ったドクターはこと切れた少年の亡骸を抱え、ボロボロの見た目の屋内を行き、粗末なベッドをどけて、下の床を剥ぎ、現れた()()を下った。

ここはドクターが暗殺ギルドに加盟するのに伴って保険の為に作った作業用の地下室だ。一階のボロボロの母屋はフェイクである。賢者の石を作ったのもここである。

少年の亡骸を簡易ベットに寝かせて、自身の打ち抜かれて吹き飛んだ片足を思い、溜息を吐く。


(まずは私の片足をどうにかしないといけないわね・・・)



治療法や代用法を考え、一つだけ浮かび、


「はぁ・・・」


再度溜息を吐いた。


「まさか私自身が実験台一号になるとはね」


欠損した片足を治す方法は一つだけあった。

それはドクターが一回も試したこともないスキル。『狂った手術マッドネスオペレーション』であった。

『狂った手術』。それは傷病者を高確率で完治、またはそれに近い状態まで治療することが出来る、半分チート染みたスキルではあるがその反面、治療には同じく高確率で何かしらのデメリットを抱えることになるピーキーなスキルでもある。

そのスキルを未だ使えずにいたドクターであったがここで自分の欠損した足を治療すると共にスキルの実験をしてしまおうという魂胆なのだろう。

だがプレイヤーの欠損にこのスキルを行使するには一つだけ問題がある。

それは―――。


「無くした片足をどうやって治療するのよ?」


そう。それはプレイヤーの四肢欠損の治療するには無くなった部分がないと出来ないのだ。プレイヤーの体液や切り離されたプレイヤーの欠損部位は地面に着後十秒以内に拾わないとポリゴンとなり、消滅してしまうのだ。

四肢欠損の人為的な治療には欠損した部位が必要となるのだ。

【魔法使い】系統の派生職の【僧侶】系統の上位職のスキルなどであれば治せるであろうが、ドクターには生憎そんな知り合いはいない。


「アレ使うしか道はないわね」


一筋の光明が見えたドクターは部屋を移動して学校のグラウンド並みのデカイ空間に這い出る。

そしてあるものをインベントリより引き出す。

それは地下室を埋め尽くすほどの()()な足であった。地下室はドクターがモンスターの実験や戦闘実験などの理由によりマイホーム権利でそこらのグラウンドよりもデカく設定されているがそれを埋め尽くすほどの大きさであった。

その足を改めて『鑑定』するドクター。




ーーーーー


百腕巨人之王(ヘカトンケイル)】の巨大足 状態:最良

GM考案モンスター、【百腕巨人之王】のドロップの足。

使い道に困るものだが神話の巨人王であるがために秘める力は計り知れない。


ーーーーー




「これをどうやって加工したものかね・・・」


ドクターはそれから数時間かけて『変形』スキルや魔法スキル、アイテムを用いて骨格をゴリゴリと削り、人間サイズまで凝縮させた。途中、一階に憲兵が押し入るというアクシデントがあったが地下室のことはバレなかった。

凝縮された【百腕巨人之王】の巨大足はアイテム名を【百腕巨人之王】の小足へとアイテム名を変えて、秘めたる魔力と力強さをオーラとして放っていた。【百腕巨人之腕】をモザイクの掛かった断面に合わせて遂に狂気的な実験が始まる。

ドクターはゆっくりと息を吸い・・・吐き、思い切って狂気的な呪言を口に出した。


「『狂った手術』」


意味ある言葉を発したその時にドクターの足と【百腕巨人之王】の小足を魔力の糸状オーラが縫い込まれ、包み込んで繋ぐ。


「クッ!?・・・痛ッ!」


そう上手くは行かず、勿論のこと巨人の王の素体遺物とも言えるものをただの人間を受け入れる訳もなく、ドクターには骨格が変形し、捻じ曲がり、筋肉筋が切れて千切れて生成される感触が与えられる。まさに試練ともいえよう。息も切れぎれに回復ポーションを何本も呷り、回復しつつ足を押さえるドクター。だが、そんなことを知ったことかと主ならんとするものに苦痛を与え続ける。


「ドロップ如きがッ!私のッ!邪魔をするなァッ!?」


ドクターは猛ける。吼える。

痛みを与える()()()モノに暗黒の魔力と化した憤怒を叩きつけ、覇道を唱えて屈服させんとする。神物に匹敵するソレをたかがと評して力を籠める。ドクターを邪悪と神聖なる覇気が覆う。

だがしかし、それは無駄では無く、【百腕巨人之王】の小足は次第に肌色に染まり始め、太さが収縮、拡大を続ける。

やがて、オーラは収まり、赤みを帯びた片足が顕現した。

ドクターのサイズに合わせたからか細く見える足はポキッと折れそうに見えるが、芯筋が一本しっかりと入り、筋肉は柔軟も柔くも一本一本が針金の様に引き締まり、しなる。現実世界に降臨した神仏の一つに見えるのは相違ないだろう。


「は・・・フゥ・・・」


己の一部と化した足との激闘を終えたドクターは開始と同じく息を深く吸い、吐いた。それから笑みを浮かべて歓喜を心に秘め、『鑑定』を行った。





ーーーーー


【屈服せし巨人王の義足】 SP+80 (右足攻撃時のみ)STR+50 AGI+150 (右足のみ)VIT+100 


GM考案モンスター【百腕巨人之王】の足を無理やりに変形させて義足とした装備。

それは神話の巨人を屈服させた証であり、称号でもある。

譲渡不可能。ドロップ不可。不壊。


ーーーーー




「あっ、これって装備枠なのね」

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