第三十話 アップデート【現実遊戯】
一日で二話投稿・・・心配してくれた方々ありがとうございます!
しかし私は書くのに疲れる一方、物凄く書いていて楽しいので安心下さい!
アイデアを順次送って下さっている皆様本当にありがとうございます!
『アップデート中です。しばらくお待ち下さい・・・データをダウンロードしています・・・』
「遅いわね・・・」
薬味 狂華自宅にてクレアシオン・オンラインのアップデートを待っている狂華。クレアシオン・オンライン公式イベント終了からちょうど24時間後のことである。
今か今かと待ちわびている。
『・・・アップデートが完了しました。アップデートコンテンツ、【現実遊戯】をダウンロード。クレアシオン・オンラインを起動します』
仕事がなくなり、収入が無いのを頭の奥に仕舞い込み、狂華はヘルメット型本体を頭に被り、ベットに体を横たえ、間も無く意識は薄れていった。
♦ ♦ ♦ ♦ ♦
「はい、到着っと」
ドクターがログインしたのは最初の町ルキバル。
次いで現れるのは大量のメニュー画面。どれも全て、アップデート内容に関することだ。
「えーっと・・・裏ステータス、業値の追加・・・モンスター以外の敵モブの追加・・・AIの思考力の進化及び、政策などの指導・・・」
等々アップデート内容を確認しながら確認次第、順次メニュー画面を消す。
その中に一つ気になる点を見つける。
「モンスターの死体留置設定?」
それは設定することにより、モンスターの死体がマップに残り、己で解体することが出来る設定。そのお知らせを見た、ドクターは内心で何事か考え、完結した。
「ま、後で要検証ね」
後は・・・と考え込み、町から町への転移できるシステムなどに目を付けてすぐにメニュー画面からドイルトへと転移した。
転移したのはドイルトの町の外門の地点。そしてドイルトに転移したのもつかの間に町の外に出てある方向へと向かう。ある方向と言うのは、プレイヤーの中で王都、と呼ばれている王国首都がある方向だ。
徒歩で向かうには数時間掛かる場所だ。
それを苦にせずドクターは駆けだした。
走り出して間も無く山道に入る。
山道は入り組んで、木根や木枝があるが称号『軽業師』を活用したり、パラライズドナイフで切り裂き山道を駆け抜ける。緑が生い茂る山の中に白衣は目立つ。
そしてアップデートにはモンスター以外の敵性モブの追加という物がある。その敵性モブはゴブリンやオークなど言ったモンスターではなく、盗賊や野党などが含まれ、詰まる所こうなる。
「ちょっと待ちな、姉ちゃん!!」
「ん?なにかしら?」
山道を駆けるドクターの前に立ちはだかったのはズボラで薄汚れた服装に武装した集団。ドクターを囲むように木の陰に隠れている集団もいるがドクターはそれにも気づいている。
「で、なんの用かしら?」
「それりゃあ・・・なあ、決まってるよなァ?」
山賊と呼ばれる類の敵性モブは周りの山賊仲間に下種びた表情を向け、ニヤリと笑い・・・
「掛かれ、野郎ども!」
「「「オオオォォォ!」」」
♦ ♦ ♦ ♦ ♦
十分後
♦ ♦ ♦ ♦ ♦
「ギャアア!?ひっ!だれか、助け―――」
「もう、どこ行くの?」
「―――ギイヤァァァァ!?」
逃げようとした山賊の一人の髪を掴み、引き戻すドクター。
そして手に持った薄緑の泡立った液体を体に掛ける。
液体は山賊の体に付着した瞬間、シュゥウゥゥゥという音と煙を上げて、装備と肌を焼き溶かす。
液体はドクターが採取した蟻型モンスターの蟻酸だ。
「あら?壊れちゃった・・・」
「――――――」
山賊は痛みにより、白目を剥き、泡を吹き、気絶する。
その山賊をつまらなそうに見つめるドクター。
気絶した山賊を蹴り飛ばし、拘束された他の山賊の元に向かうドクター。山賊のドクターを見る視線は恐怖に染まっている。ドクターを襲った時の下種びた下心のある表情とは真逆の表情。
一方、ドクターは楽しそうに目と口を三日月にしている。
「次は何にしようかしらね~♪」
「ま、待ってくれ!お願いだ!待ってくれ!」
鼻歌さえ歌う機嫌の良いドクターの選別に声が掛かる。
声の主は最初にドクターに話しかけた山賊頭の立場の男。
「何?」
幾分か声の温度が下がったドクターの問いに振るえながら口を開く山賊頭。
「い、い、いや、悪かった!悪かったよ!もう襲わねえし、改心するから許してくれ!?」
「嫌に決まってるじゃない」
一刀のもとに切り伏せた。
「な、何故・・・?」
絶望と哀愁を感じる、震える声にドクターは笑顔で応じる。
「貴方達は私を狙った。なら、私が貴方達を好きにしていいはずでしょう?」
「ヒッ・・・にっ、逃げ―――」
清々しいまでの笑顔を浮かべて、微笑みかけるドクターに、正気を失った山賊頭は体を捩り、逃げようと藻掻く。
「もう、どこ行くの?貴方達は既に私の実験体なのだから」
「い、嫌だ!俺は逃げ―――」
その後三十分に渡り男たちの慟哭は続き、残ったのはひたすら呻き続ける男達だけ。
山賊達のその後を知る者はいない。
「あっ!スキルと称号の確認忘れていたわね。今のうちに確認しときましょうかね」
ドクターは昨日のイベントで取得したスキルと称号を思い出し、走り続けながらステータスを開き、説明を見る。
『皮膚障害耐性』
皮膚に害のある効果を防ぐ耐性。
『吐き気耐性』
吐き気に対する耐性。
『万毒無効』
自身の受ける任意の毒の効果を無効化する。
『万毒転じて万薬となる』
自らに悪影響を与える毒系統状態異常効果だけを反転させる。体に毒は効かず、毒は体に害があるモノだけを苦しめ、毒は己の使命を反することしかできない。常時発動型。
『診察・狂眼』
使用した対象者の状態を確認できる。また、急所、弱点となる場所が分かるようになる。
『予知・狂眼』
自分に・の行った、行われる小動作の予測・予想値をある程度視ることが出来るようになる。
『狂った手術』
生死関係なく傷病者を治療・手術することが出来る。高確率で治療・手術による何かしらの問題点を抱えることになる。
『万毒の王者』
万毒を操り、毒を扱う王としての称号。他に所有者以上に毒を操れる者が現れた場合この称号は譲渡される。毒系の効能を最大10%/1Sまで調整可能になる。
『勇者の仇敵』
勇者の仇敵、またはライバルとしての称号。職業【勇者】との戦闘時においてステータスが5%上昇。与ダメージ10%上昇・被ダメージ10%上昇。
『第一回クレアシオン・オンライン公式イベント空想世界PVP大会優勝者』
初の公式大会で優勝した者に送られる称号。
「こんなものかしらね。耐性系は普通に使えるし、『万毒無効』や『万毒転じて万薬となる』はもうチートスキルのレベルね。狂眼系も戦闘にも他のことにも使えそうだし、『狂った手術』もデメリットはありそうだけど使ってみたいわね。・・・さっきの山賊で試せばよかったわね。失敗した。『万毒の王者』も今のところ私が持ってるし、一応は問題なし。『勇者の仇敵』はそこそこね。一人にしか使えないし、最後のは効果すらない」
疾走しながらブツブツと呟くドクターの姿は奇怪だがAGIが高過ぎる為、一般プレイヤーには何かが通ったくらいにしか思わないであろう。
「・・・・・・あっ」
走り始めて早数時間。
遂にドクターはゲーム内名称でラインライト王国。ラインライト王国首都、通称『王都』へと到着した。




