第二十三話 準決勝【破壊者】ミント 後の助手
私は!書籍化を目指しています!どうか高ポイント評価を!
というわけで(どういうわけ?)投稿が少し遅れんました!すみません!(土下座)
「新しいスキルの確認しましょうか」
個室に戻って来たドクターは開口一番そう言った。
『冷静』
どのような状況下でも冷静になれる。
常時発動型
「『冷静』、ねぇ・・・微妙」
そう評した。
このスキルの取得したのはドクターがキノミヤの攻撃を防ぎ、ビルの屋上からの落下にも冷静だったからだろう。スキル無しで冷静にいられるドクターをして、だからこそスキルとして必要かと考えたのだ。
「まぁ、いつか使い道があるときが来るわよね」
疑問は終わった。
それから準決勝に向けて素材の試験管への移し替えと薬の補充を開始した。
数十分後・・・。
『バトルエリアに転送します。しばらくお待ち下さい・・・』
「これで準決勝ね・・・ここで負けたら冗談にならないわね」
『転送します』
ドクターは戦意を昂らせ、浮遊感に身を任せた。
♦ ♦ ♦ ♦ ♦
『バトルエリア名、野戦決戦場!広さは直径1キロの円形野原!遮蔽物も無いし、正面から真っ向勝負!バトルスタートまで十秒!』
「真っ向勝負・・・ヤダわ」
準決勝のエリアは辺り一面野草しか生えない荒野であった。
ドクターの居る場所から対角線上の場所には人影も見える。
(ホント、最悪・・・なんで私が真正面から・・・)
愚痴りながらも準備を開始するドクター。
『スタート!』
準決勝が始まった。
ドクターが動き出し、同じくエリアに居る人影も移動を始める。
まず初めに取り出すのはいつもの油大蛙の油である。
油大蛙の油が入ったボトルを左手に持ち、右手にはパラライズドナイフが握られている。
「ハァッ!」
一喝して、周囲の草を薙ぎ払い、パラライズドナイフを握ったまま、パチンと指を鳴らした。
(小火波)
鳴らした指から、ドクターの前方へと小さな火の波が寄せて着火する。
追加にと言わんばかりにドクターは、油大蛙の油が入ったボトルを燃え移った草へと投下する。
火の勢いは激増して炎へと昇華し、燃え盛る。
草を薙ぎ払ったドクターの周囲には引火せず、人影のある方へと炎の波は押し寄せる。
炎の波は無差別に燃やし、人影に迫り―——
「大津波!」
勇ましい一声が響き、炎の波に激流の波がぶつかる。
両者は轟音を立て、水蒸気となり熱風へと変わる。
熱風は激流の波を放った人影に返り、ドクターにも吹き付ける。
「クッ!」
ドクターは熱風の暑さにHPがジリジリと削れる、焦燥と熱風が頬を撫でる不快感に顔を歪める。
だが、人影は水蒸気と熱風を切って、ドクターに接近する。
「土槍」
人影は中距離から土で出来た槍を飛ばす。
『初級土魔法』でも出来る魔法でそれなりに威力がある魔法だ。
土槍は猛速でドクターに迫り・・・。
(水螺旋柱!)
渦巻く水流の柱が現れ、土槍を溶かし、泥へと還す。
水流の柱は力なく崩れ、地面に吸収される。
「クソ!MPほとんど持ってかれた!」
毒づきながらドクターは中級魔力回復ポーションを一息に飲み干し、MPを回復する。
「なんだ?相手は美女?」
水蒸気を切って出て来たのは、髪は無作法に跳ね上がり燃え盛るように真っ赤。装備は金ピカの全身鎧に大剣を持っている。顔は獰猛に笑っていて、精悍と言える顔立ち。
「貴方が私の対戦者?」
「おお、そうだ。俺様は【破壊者】、ミントだ」
「【破壊者】なのにミントなんて、可愛らしいわね?」
「ほっとけ・・・」
ミントは気にしていたようで項垂れる。
「それよりも、今は対戦だろ?」
「そうだったわね。ごめんなさい」
ドクターは背中に手を回し、ゴソゴソとしながら一礼をする。
「様になってんなぁ・・・それじゃ行くぞ!」
「悪いけど、来ないでくれるかしら!」
ミントがドクターに突貫し、ドクターは背に回していた手に握られている試験管をミントに投擲する。
投擲された試験管はスキルや称号の重複効果で高速でミントにぶつかり、中身を撒ける。
「グガッ!んな!これは・・・」
ミントは膝を付き、動きを止める。
「アハッ!大成功!やっぱりプレイヤーや普通のモンスターには効くのね」
ドクターは笑う。
試験管の中身は神経毒に属する物だ
斑蛙と言うモンスターがいる。斑蛙はルキバルの町の近くにある森の中に住み、全長十センチという体躯を生かし、森に入った小動物を神経毒を飛ばし、身動きを止めて肉食動物に止めを刺してもらい、余った肉を食べる―――という設定の―――モンスターの毒をドクターが回収した物だ。
「クソがッ!なんでここで動けねぇ!俺は負けられないんだ!」
「ふーん・・・なんで?」
対戦相手にも関わらず疑問を口にするドクター。
ミントは諦観と不屈を感じさせる顔で語る。
「・・・俺はこのゲームで最強と呼ばれていた」
「それで」
「・・・だが、いつかは分からないが俺よりも強いとか言う奴が現れた。他の奴等はソイツのことを【勇者】とかと呼んでいた・・・」
「【勇者】・・・」
ドクターは記憶を手繰り、【勇者】に関する記憶を引っ張り出す。
(確か掲示板で【ハーレム野郎】とか【チーレム】とか【ヤリチン野郎】とも呼ばれている男のことだったはず・・・)
「ソイツは開始初日で世界級依頼をこなし、職業を特殊職の【勇者】に就いていた。そして【勇者】は剣に魔法、弓、斧まで何もかも扱かえるとか言って周りは最強と呼んだ。俺は俺以外に最強と呼ばれている奴に興味を抱いて、【勇者】に挑んだ」
「もしかして・・・」
「ああ、そうだ・・・俺は負けた・・・。俺はこのゲームの世界でこの大剣だけで最強と呼ばれていた俺が【勇者】に手も足も出ずに負けた!」
ミントの表情に影が差す。
「俺は負けてから『負け犬』や『元最強』と呼ばれた!それからもう一度、最強と呼ばれる為に大剣以外の武器スキルや称号を集め、魔法スキルを習得した!だが、俺は・・・」
「負けたのね」
聞き手は一言に切り捨てた。
「・・・ああ」
「貴方はそんな理由で負けられないと?」
「そんな理由・・・?お前に何が分かる!?」
ミントは吼えた。
ドクターは一笑に付した。
「分からないわよ?」
「なら何故!?」
「貴方はその【勇者】を追いかけているからよ」
「【勇者】、を追いかけてい、る・・・?」
「ええ」
そしてドクターは膝を付くミントの前で手を広げ、叫んだ。
「貴方は!ミントは!【勇者】に憧れているだけ!」
「な!そんなことは―——『ある!』んな・・・」
ミントの言葉に割り込むドクター。
「ミント!貴方は【勇者】に負けて、悔しくてそして【勇者】に憧れた。だから【勇者】と同じ多様な武器スキルや称号、魔法スキルを手に入れようとした。貴方はそこで【勇者】と同じ道を辿った!」
「・・・そうだ」
もはやミントの声に力は無く、俯いている。
のドクターは道化の様に空に手を広げ、クルクルと回る。
「そこで辿ってしまったから負けたのよ」
「なに?」
ミントは顔を上げる。
ドクターは指を付きつける。
「【勇者】に負けて、追いかける!ああ、鬱陶しい!面倒くさい!何故そこで己を磨かなかった!?」
「・・・・・・ッ!」
「何故!その大剣で【勇者】に勝とうと思わなかった!?」
「・・・ッ!」
「なんで他の武器に逃げた!?浮気した!?称号や魔法スキルは良いだろう。だが何故【勇者】を辿った!?何故己を磨かなかった!?」
「ッ!」
ミントの顔は泣きそうになり、唇を噛み過ぎて血が流れ、ポリゴンになっている。
「勝負とは実験である!勝負とは勝利して満足せずに研鑽し新たな技術を習得し、実験して更に己を磨く!敗北して己の欠点を見つけ、修正し、補い、実験し、勝てるようにする!それが勝負だ!お前はそれから逃げて【勇者】を追ったのだ!お前の大剣にすら浮気して!」
「・・・」
ドクターは珍しく熱っぽく語り、
沈黙が広がる。
「それが貴方の敗因よ。【勇者】や私との敗因。貴方が【勇者】に勝ちたいのなら私の元に来なさい。勝てるようにしてあげるわ」
「・・・ああ」
その言葉を最後にドクターはミントの首をパラライズドナイフで切り裂き、試合は終わった。
ミントの最後の言葉は短く、しかしそれは神聖な物を崇める様な物でもあった。
『個室に転送します。次は決勝戦なので休憩時間に三十分与えられます』
「ハァ・・・」
ドクターは息を吐き、思う。
(あ~あ、言っちゃった。私の元に来いなんて、柄じゃないのに・・・)
十数秒前を思い出す。
(まあ、いっか!来るかどうかは彼次第・・・来るなら受け入れるだけ)
この時、後にミントが【狂信者】と呼ばれ、ドクターを主とするドクター教をクレアシオン・オンラインで開き、クランを創設し、ドクター本人の助手になることなど誰も思いもしなかっただろう。
私は!書籍化を目指しています!どうか高ポイント評価を!
というわけで(どういうわけ?)投稿が少し遅れました!すみません!(土下座)




