第二十話 賭博と本戦トーナメント始動
「「「ワアアァァアァァァァァ!!」」」
「うるさっ」
ゲームを開始して数秒後のこと、ドクターは開始直後にそう言った。
コロッセオ内はひび割れんばかりの歓声が響いている。
中央のリングにはゴブリン数体とオークという豚の魔物が戦っているのが見える。
あれは、ドクターがログアウトしてから十数分後に一人のプレイヤーがGMに「モンスター同士が戦っているのを見たい」という願いを言い、GMが「面白そうだねソレ!」と言い、ゲームの管理AIが止めるのを尻目に本線開始時間までの待ち時間消費企画だ。
「ふむ・・・面白そうね。賭けもやってるのかしら」
ドクターの視線の先には、プレイヤー同士がマネーを出し合い、賭博表を作っている。
時間もたったのか周囲はドクターにわき目も降らずに観戦している。
「ゴブリンに100000マネー賭けるわ」
「あいよっ!気前良いね、ハイこれ!」
「ありがと」
プレイヤーの一人にマネーを渡し、札の様な物を貰う。
周りのプレイヤーはオークに賭けているようでゴブリンには少ない様だ。
ゴブリンの倍率は5倍でオーク1,5倍だ。
「ブヒィィィ!」
「グギャ!」「ギャアア!」「ギュ!」
オークがゴブリンの一体を棍棒で吹き飛ばし、壁に激突する。
その間にゴブリン二体が回り込むが、オークは棍棒で薙ぎ払い、二体とも吹き飛ばす。
「おっしゃ!これは勝ったな!」「ああ!150000マネーも賭けた甲斐があった」
「いや分からないぞ、ゴブリンはまだ死んでいない」「でももう終わっただろ」
プレイヤーからも声が聞こえ・・・。
(いや、オークが勝つことは無いわ)
内心、他人を馬鹿にしながらドクターは戦いを観戦する。
オークは勝利を確信し、油断したのか棍棒を振り上げて勝利をアピールしている。
「ブヒィィ!プギャ!?」
「ギャギャギャ!」
それを背後から隠密して近づいたゴブリンが欠けた短剣でオークのデカイ背中を突き刺し、オークが苦痛の声を上げる。
「ブヒィィィ!プギャ!」
「グギャギャ!」
ゴブリンを振り放そうとするがゴブリンは短剣を握ったまま離さない。
むしろ余計に短剣が食い込んでいる。
「ギャア!」「ギャギャ!」
「プギャアァァ!?」
残った二体もオークに攻撃し、オークは地に伏せる。
まばらに沸く、歓声。やはり、ゴブリンに賭けていたのは少数だったようだ。
「5倍の倍率よ、早く頂戴」
「おっ!当たったんだお姉さん!運がいいねぇ。・・・これが500000マネー」
「頂くわ」
ホクホク顔のドクターはインベントリにマネーを仕舞いながら時刻を確認する。
時刻は十二時。本線トーナメント開始の時刻だ。
『プレイヤー諸君!モンスター同士のバトルも終わった所で本戦トーナメントの時間だ!』
「「「おおぉぉぉぉーー!」」」
GMの声が響き、反応するようにプレイヤーの歓声も続く。
『簡単にルールを説明するよ!16人でトーナメントをしてもらって勝った人が優勝だ!戦うエリアは運営側でランダムに決めて、トーナメント参加者は特別に試合観戦の出来る個室を与えられるよ!個室かどうかは個人で決めてね!そして優勝者には王都の一等地から最底辺までのすべての場所に決定権が得られるマイホームが与えられるよ!』
「「「おおーーーー」」」
どんよりと呻きが広がる。ドクターも例外ではない。
マイホームと言うのはゲーム内での拠点となる場所で個人特設のエリアとなり、各ギルド外での作業や製作以外にも食事や家具の設置、デザインの変更も出来る。
更に王都はゲーム内で進んだ町で全ての場所から選べるというの破格のことである。
しかもドクターは学者ギルドでは無く、きちんと作業できるスペース、場所、拠点が欲しかったのでピッタリである。
『それじゃあ早速、個室に移動する参加者はウィンドウからYESを押してね!』
ドクターはYESを押した。
『トーナメント表を作るか!』
「「「いや、まだ作ってないんかい!」」」
プレイヤー全員の声がハモった。
そしてドクターは個室に転送された。
「ここは・・・割といい部屋ね」
転送先は十畳ほどの部屋であった。
大型テレビにテーブル、イス。テーブル上には菓子が数点と水差しが。
その中ドクターは調薬を始めた。
(さっきの予選は爆裂石とかを予選中に直で磨り潰してたけど、一対一の試合中だとできそうにないから考えないといけないわね・・・そういえば【赤紫斑毒の三角試験管】には所持している薬品、薬物を混合する能力があったはず。でも爆裂石、薬草は薬品とか薬物ではないし・・・)
しばし悩み込み・・・。
「そうだ!もしかして薬品物類は試験管に入っている事では!」
いそいそとドクターは用意を始める。
すり鉢に爆裂石を入れ、磨り潰す。磨り潰し終わった爆裂石を試験管に入れる。
次に木の実を磨り潰し、町で買った小麦粉を混ぜる。それも試験管に入れ、先ほどの試験管を含め、二本を腰のポーチに入れる。
そしてドクターは【赤紫斑毒の三角試験管】を手に持ち、「混ざれ」と念ずる。
すると、【赤紫斑毒の三角試験管】の中には白茶の粉末に砕かれた爆裂石が混ざった物が現れる。
「成功!やっぱり試験管の中の物は薬品物に判定される!後はこれを・・・」
ドクターは【赤紫斑毒の三角試験管】の中の混合物を穴の開いた紙玉の中に入れる。
入れ終わったら紙玉に薄紙を糊付けしていき、白い紙玉が完成した。
白い紙玉の効果は叩きつけると中の爆裂石が反応して小爆発を起こし、紙玉も爆破。その反動で小麦粉が舞い上がり、視界を塞ぎ、木の実の茶色で更に視界を悪化して、あわよくば木の実が口に入り、中毒も起こす、という煙玉モドキだ。
煙玉モドキをインベントリに仕舞うドクター。
その後も用意を続け、十分後のこと・・・。
『は~、やっと終わった・・・。あ!トーナメント表、作り終わったから発表するよ!え~、では一回戦目から・・・』
GMがトーナメント表を作り終わったそうで組み合わせを発表してゆく。
『一回戦目は・・・ドクターVS無月!二回戦目は・・・』
ドクターは一回戦目に決まった。




