第十七話 【狂科学者】の本領を見せてあげる
皆さま、感想大変ありがとうございます!
ですが一日に十数件も送られると返信にも辛いものが・・・ゲフンゲフン!いや本当にありがとうございます!
「ガ、【守護兵】と【剣士】系統の職業の奴は前衛に立て!今は一時協力しろ!」
ドクターを前にした男プレイヤーの一人が震える声を上げ、周囲のプレイヤーに協力を求める。
周囲のプレイヤーはドクターに怖気づいたのか男の声に従い、百数十数人規模の【守護兵】と【剣士】系統職の防衛壁が出来る。
しかしその連携の対象のドクターはどこ吹く風と初級魔力回復ポーションを飲み、MPを回復しており、ドクターの周囲にはそれぞれ試験管を持った『透明腕』が数本浮かんでいる。
「後衛職は後ろに下がって攻撃しろ!早く!」
最初に叫んだ男が中心のリーダーとなり指示を出す。
そして呼応してプレイヤーの防衛壁の後ろから矢と魔法の雨霰がドクターへと飛来する。
ドクターは【赤紫斑毒の三角試験管】を振り、赤紫斑毒を生成し、自分の目の前に左右に振りながら垂れ流す。
「『束縛』」
スキルを発動すると赤紫斑毒はスキルにより空中に固定、いや『束縛』され留まり、即興で猛毒の盾が出来る。
飛来した矢は毒の盾に着弾次第に溶かされ、阻まれる。
「何!?」
壁を形成している【守護兵】の一人が驚愕の声を上げる。が。
既に毒の盾の後ろにはドクターは居ない。
「は?あ、あばばばっばばあばば!?」
ドクターは何時の間にか【守護兵】の一人にパラライズドナイフを突き刺して麻痺させている。
麻痺したプレイヤーの悲鳴に周囲のプレイヤーは毒の盾より悲鳴を上げた一人に注目するがそこには麻痺した男しかいない。
「ぎゃあああああ!?」
再度、悲鳴が響く。
悲鳴が響いたのは防衛線の内側であった。
ドクターは周囲のプレイヤーが麻痺させた男に注目している間に防衛線の【守護兵】と【剣士】の壁をすり抜け、内部に侵入していた。
そうなってはもう手を付けられない。
「右だ、右に行ったぞ!いや左の方だ!」「右とか左とかどこだよ?!」
「あ、見つけたぞ!ぎゃああああ!」
広がるのは阿鼻叫喚。
ドクターはプレイヤーを殺さずに麻痺だけさせて動けなくする。
密集した防衛線はドクターが紛れ込み、高いAGIで走り回り、【守護兵】は逆に低いAGIで身動きが取れず、更に【守護兵】特有の厳つい鎧や兜により【剣士】は視界も悪くドクターを発見することはほぼ不可能となり、そして混乱したプレイヤーはこうなってしまう。
「テメェ今俺に攻撃しようとしただろ!」「はあ!?なんでお前なんか!」
「今攻撃したのお前だな!」「何言って・・・ぎゃああ!」
お互いを知らずに防衛線を張り、協力しようとしたプレイヤーはドクターの攻撃が見えないことに苛立ち、相互不信になり不和が広がり、遂には協力しているプレイヤー同士で戦闘が始まってしまう。
「ひぎゃあああああ!?」「痛い!痛い痛い!」
そして防衛線の一部にポッカリと円が出来る。
円の中心には白衣を纏い、手には赤紫の毒々しい液体の入った三角フラスコを持ち、周囲には半透明な腕が浮かび、手には幾色の液体が入った試験管を持っている。
つまるところドクターだ。
ドクターの周囲には直径十メートルほどの円が出来ており、その周りには地に伏したプレイヤー十数名がいる。プレイヤーのHPバーの上には猛毒を表す紫の髑髏のアイコンが出ている。
そのプレイヤーも数秒でポリゴンとなり、宙に消える。
ドクターを倒すために協力していたプレイヤーはやっとのことでドクターを見つけ、気が立ちながらも包囲網を作る。
「死ねぇ!」
その中の一人が剣をドクターに飛び出す。
剣を上段に構え、振り下ろす。
「死ぬのは貴方よ」
透き通るような声が聞こえ、剣士のプレイヤーは倒れる。
ドクターは振り下ろしをパラライズドナイフで剣を受け流し、パラライズドナイフで切り裂かれたのだ。不幸なことに剣士の男はレベルが低かったので麻痺が解けるにはあと一分は必要になるだろう。
「ピギッ!」
そして倒れたところをパラライズドナイフに貫かれポリゴンとなる。
「次の実験よ」
ドクターは小さく一言告げた。
恐らくこれは他人でなく、己に告げた物だろう。
「これここで使う羽目になるとはね・・・」
ドクターはインベントリより毛皮を取り出し、『透明腕』に持たせる。
毛皮は良質な狼系モンスターの物だろう。
その後も次々と肉、牙、爪と取り出す。
その間、包囲網のプレイヤーはドクターが何をするか分からない恐怖かそれとも好奇心が働いているのか動けない。
「『使い魔生成』」
ドクターは口の中でそう言葉を転がせた。
すると『透明腕』が持った狼系モンスターの素材が蠢き、脈動しドロドロと溶け地に落ちる。
落ちたソレはお互いに絡み合い、溶け合い、混ざり、狼の形を形どる。
ドクターは狼の形をとったソレを『鑑定』する。
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PLドクターの使い魔:ワイルドウルフ/LV5
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包囲網を作ったプレイヤーは本来【召喚士】系統しか使えないスキルを使用したドクターを見て驚愕する。
「アハ!」
野生狼を見て笑い声を上げるドクター。
「それじゃあ【狂科学者】の本領を見せてあげる」
そして宣言した。




