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第十四話 【百腕巨人之王】と実験

「はあ、はあ・・・」


息切れしたドクターは足を休め、約二キロほど先に居る巨大な人型の巨大生物を眺める。

ドクターが走り始めてはや十数分。高いステータスを持つドクターでも二キロの全力疾走は堪える様だ。


「じゃまよ!」

「ぎゃああああああ・・・」


巨大生物から逃げて来たと思われるプレイヤーの一人に毒ポーションを顔面に全力投球して倒すドクター。

先程からあの巨大生物の居る方向からプレイヤーが続々と逃げ出し、その都度プレイヤーを倒しているドクター。

恐らく、後の不安要素を残したくないのだろう。

本人さえ無自覚の科学者故の気質でもあった。


「それじゃ、向かいますか」


そして再度、巨大生物に向かって行く。

既に息切れは無いよう。


「ホントでっかいわね・・・」


思わず呟くドクター。

巨大生物は近づけば近づく程その大きさを増し、圧迫感を醸し出していた。

その姿は簡素な鎧を着用し、手には武骨な棍棒を持つ巨人であった。

棍棒でさえ大きさは二十メートルのビルをも超える。

山脈の合間に立ち、手に持つ、棍棒を振る様は神話の一風のようにも見える。


「あれは・・・多分、プレイヤーを攻撃しているのよね?」


正解だ。

あの巨人はGMが言った通り、プレイヤーが500人になるまでプレイヤーを攻撃し、ポリゴンに変える。


「とりま、『鑑定』・・・・・・【百椀巨人之王(ヘカトンケイル)】?神話に出て来るあの巨人?腕二本なんだけど?」


ドクターが疑問を吐き出す。

そう、呟いた瞬間【百腕巨人之王】がドクターを凄い勢いで向く。


『オオオオオォォォォォオォォッォオォ!!』


雄叫びを上げ、【百腕巨人之王】はドクターの方へと歩き出す。


(嘘でしょ・・・もしかして中身、モンスターAIじゃなくて知能が有ったり?)


考察を繰り広げるがその間にもドクターへと歩む。

体がデカイからか歩みは遅いが一歩一歩ごとは十数メートルを超えている。


「やばっ!早く逃げないと」


そこでドクターはふと思う。


(もしかしてコレ(【百腕巨人之王】)倒した方が楽なんじゃ?だってGMは一定のダメージを蓄積されると、って言ってたし、倒した方が逃げる労力が掛からないし、何より・・・)

「薬の実験が出来る!それじゃあ・・・」


ドクターはいつもの如くそう思い、逃げるのではなく考えを巡らせ、【百腕巨人之王】に向き直り、口を開く。


「実験開始!」


そう叫んだ。

それと同時にドクターの周りに半透明な腕が数本浮き上がる。

その半透明の腕はそれぞれ様々な色をした液体が入った試験管やボトルを持っている。

これは最近ドクターが買った【スキルオーブ】で取得したスキル『透明腕』だ。


「最初の実験は・・・」


頭の中で薬品の配合を確認しながらドクターは【百腕巨人之王】に向かいながら試験管ではなく、ボトルに入った油大蛙の油を【百腕巨人之王】の進路方向に向かってインベントリより大量に取り出しながらばら撒く。


持続(スリップ)ダメージの実験(小火球)」


そして着火。

ゴオオオオォォォと豪炎が燃え盛り、山岳地帯の植物に燃え移り炎上する。


≪レベルが上がりました≫


「あら?誰か居たのかしら?」


炎上した山岳地帯付近にプレイヤーが居た様でレベルが上がったとアナウンスが聞こえるのを尻目にドクターは【百腕巨人之王】を後退しながら観察する。そして【百腕巨人之王】は炎上した地を踏む。

すると【百腕巨人之王】のHPの端っこが一秒毎に零点数ミリドットずつ減る。


「持続ダメージは地形にもよるけど魔法の火は残るみたい・・・でも消火が大変そうだし要注意ね」


ポツリと結果を吐露するドクター。

次に、とドクターは透明腕を操り、【赤紫斑毒の三角試験管】の内部に火薬と油大蛙の油を入れ、『初級水魔法』で水を生み出して少量入れ、『初級火魔法』で急速に加熱し、ジェル状にする。

それと同時に別の『透明腕』で爆裂石をすり鉢で砕き、粉末状にする。

そして更にそれをジェル状になった火薬と油大蛙の油を混ぜた物の中に爆裂石の粉末を入れ、円を描くように振り全体に熱が伝わるように加熱しながら混ぜ合わせる。

混ぜ合わせたモノは徐々に色が黒色の物質に凝固する。


「行くわよ~・・・えいっ!」


それを炎上した地を踏み越え、既に数百メートルまで接近していた【百腕巨人之王】へと全力で投擲するドクター。

投擲された【赤紫斑毒の三角試験管】は称号と高いステータスのお陰で猛速で宙を貫き、【百腕巨人之王】へと向かう。


高速火矢(ハイファイヤーアロー)


ドクターは『初級火魔法』を短く放ち、宙を貫く【赤紫斑毒の三角試験管】へと迫る高速で飛来する火で出来た一矢。

火の一矢は【百腕巨人之王】の間際に迫った【赤紫斑毒の三角試験管】を貫き―――。


『グオオオオォォオォォオォ!!?』


爆裂した。

【赤紫斑毒の三角試験管】の中に入った黒い物質に火の一矢が当たった瞬間、黒色物質は爆炎を上げ、【百腕巨人之王】を包み込む。

黒色物質に含まれている粉末状の爆裂石は火に反応し、炸裂し粉末サイズの爆裂石が【百腕巨人之王】の巨大な体躯に突き刺さり余計に苦悶の声を上げる【百腕巨人之王】を観察するドクター。


「やはり、爆裂石の攻撃運用は物質に混合して火による爆裂を生かして物質から抜け出そうとする力を利用して炸裂させるのが正解ね。次は爆弾でも自作してみようかしら」


ドクターは爆裂石の今後を考えながら危険物を作ろうと思案する。

が、先程の攻撃はかなり有効だったようで【百腕巨人之王】のHPは減少し残り四割となっている。

だが、この場合は残ってしまった、と言うべきだろう。

だってドクターは・・・。


「あら?まだHP残ってるじゃない?まだできるなら次の実験に移りましょう」


次の実験が始まった。

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