第十一話 GMの煽りと薬物トラップ
『さーてやってまいりました初イベント!』
ドクターはアナウンスに反応し、目の前に光景に感嘆する。
目の前にはコロッセオがあった。
比喩ではなく、実際に現実世界にあるコロッセオがあるのだ。
イベントの為だけにこのエリアを用意するのはあのGMならではだろう。
(それじゃ、探索しますか!)
ドクターはルンルン気分でエリア内を歩く。
中ではNPCが屋台をやっていたり、プレイヤーが賭けポーカーをやっていたりする。
見ていて飽きることはないだろう。
『それじゃプレイヤー諸君!早くコロッセオ内に入りたまえ!イベントを開始するよ!』
探索を開始してから数十分経ち、ドクターがりんご飴?の様な物を食べている時、再度アナウンスが鳴る。ドクターやエリア内に居るプレイヤーは一斉に動き出し、コロッセオ内に向かう。
コロッセオ内にはプレイヤーが所狭しと座り、NPCがビールやジュースを販売している。
『皆、集まったね?それじゃここにクレアシオン・オンラインの初イベントPVP大会!公式イベント名「空想世界PVP戦闘大会」の開始を宣言するよ!』
(いや、イベント公式名あったのね)
どうせGMのことだ言うのを忘れていたのだろう、ドクターはそう思う。
GMはテンション高めだがプレイヤーは白い目でGMを見る。
『説明を開始するよ!皆コロッセオに来たからどうせ中心で戦うとでも思ってた?残ねーん!本戦トーナメントも特別エリアで行うよ!そして予選のバトルロワイアルの参加人数は全員で・・・なんと13912名です!だから13912人÷4で・・・』
『一ブロック3478人ずつです。GM』
GMが悩んでいるとミルルンの補助が入る。
『そう!一ブロック3478人ずつバトルロワイアルのエリアに今からピッタリ十分後転送するよ!参加する人は準備しといてね!』
そう言い残し、アナウンスは切れる。
そしてプレイヤー達は一気に準備を始める。
ドクターも例外では無く、インベントリ内を整理して薬品も腰のポーチに詰めていく。
そうこうしているうちにもう十分経ってプレイヤー一行の体は光に包まれる。
(ああ、始まる。新薬も試したいし、あのスキルも使えるといいわね)
その思考を最後に視界は光に閉ざされた。
♦ ♦ ♦ ♦ ♦
耳に小鳥の囀る声が聞こえ、瞼を開く。
目の前には、数多の植物や、草木花、木々、であった。
ドクターは視界にあるミニマップの様な物を一旦無視して物陰に隠れる。
するとその数秒後に・・・。
『やっほー!皆元気?あっ、もうやられた人いる(笑)ゲフンゲフん、それは一旦置いといて、バトルロワイアルのルールを説明するよ!ルールはいたって簡単!各ブロック四名になるまでデスマッチ!そして君たちの右上にあるのはミニマップである程度周囲の地形は分かるよ!それでエリアは人数が減るごとに縮小していくから注意してね!後、プレイヤー諸君の戦いはコロッセオにあるモニターで観戦してるから頑張ってね。しーゆー!』
アナウンスは切れる。
そして余談だがこの時、GMに煽られたプレイヤーはこのゲームを辞め、八つ当たりにGMの設立しているゲーム会社を超えるべく新しいゲーム会社を起業して大企業になるのだがまたそれは別のお話。
(序盤は手札を晒さない方が良さそうね。観戦しているプレイヤーに参加者のスパイがいるかもしれないし)
ドクターは観戦しているプレイヤーがバトルロワイアルに参加しているプレイヤーと繋がっていて情報を流すかもしれないと考え、頭の中で目立たず直ぐプレイヤーを倒せる手管を模索する。
「それじゃ、穴を掘ってっと」
ドクターは突如として穴を掘り始める。
そして三十センチほど掘った所で中に黄色の液体に黒い粉末が混ざった試験管を置き、その上から枯れ葉を被せ、カモフラージュする。
「実験開始・・・!」
周囲にいるかもしれないプレイヤーが寄ってこないように小声で実験開始を宣言する。
そうして白衣のポケットから赤色が混ざった真っ黒い色の石ころを取り出す。
この石は準備期間の一週間でドクターがドイルトのダンジョンで発掘した鉱石で名を爆裂石と言う。
詳細はこれだ。
ーーーーー
爆裂石 状態:最良
鉱山にて小確率で入手出来る鉱石。
強い刺激を与えると爆発して高音を出す性質がある。しかし爆発してもダメージは少ない。
ーーーーー
これを木々を縫い、木々の上に向かって投げる。
そしてドクターは思考の中で短く一言。
(小火球)
小さな火の玉が飛来し、宙に舞った爆裂石に飛来して見事命中。
早速一週間前に買った『初級火魔法』スキルが役に立った様だ。
そして爆裂石はというと・・・。
チュドーーーーン!
爆音を上げ、弾け飛ぶ。
それを見てドクターは心の中でガッツポーズを取る。
何故こんなことをしたのだろうか?常人ならばそう思うだろう。しかしドクターには考えがあった。それは・・・。
(これで実験体がやって来る!)
やはりドクターはドクターであった。
十分もすれば爆裂石の爆音を聞いた周囲に居るプレイヤーはドクターの居る場所へと集まる。
当の本人はというと少し離れた場所ある背の高い木の上にいた。
木の上で潜伏して先ほど本人が試験管を埋めた地点を見れる場所でプレイヤーが来るのを今か今かと待っている。
数分後プレイヤーは数名集まり、戦闘を開始する。
そして試験管を埋めた地点付近に来た瞬間ドクターは再度頭の中で魔法を唱える。
(小火球)
小さな火の玉は早いとも遅いとも言える速度で穴をカモフラージュした枯れ葉に命中して引火する。
その時点でやっとおびき寄せられたプレイヤーは火に気づくがもう遅い。
引火した火は中の試験管にも引火して試験管は割れて、そして・・・爆発する。
ズドーーーン!
爆裂石とはまた違う重低音の音が響き爆発する。
「「ギャアアァァァァァ?!」」
森の中に悲鳴が響く。
爆発を耐えたプレイヤーは装備に火が燃え移り炎上していた。
数秒後、おびき寄せられたプレイヤーはポリゴンとなり消えていった。
「よしっ!」
ドクターは満面の笑みを浮かべ、爆発音に釣られて更にやって来たプレイヤーを尻目に木から木へと飛び移り、退避する。
先ほど爆発した試験管の中身は油大蛙というモンスターの可燃性の油と火薬を混ぜ合わせた延焼爆発効果のある薬物だ。
そしてこの後もドクターは薬物を使った罠を仕掛けまくり、森周辺にいるプレイヤーを倒して回った。




