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お店にやってきたルーク達(2)

 「ねぇ、ルークさんこの指輪凄く可愛いわ」

 メキシムが甘ったるい声でルークに話しかけている。

 まだ相思相愛のいちゃつきならナタリーとギルでなれているけど、学園ハーレム達の甘い声ってなんか微妙な気分になる。

 というか、9人で固まって動くなよと言いたくなる。ルークの周りに群がる女×9人。何で全員美少女なんだろうって本当に常々疑問に思う。フェロモンでも出てて美少女にしか作用されないのだろうかとでもいいたくなってくる。

 ちなみにメキシムが手に持っている指輪は《誓いの指輪》といってナタリーが提案して作られたものだ。年中イチャイチャしているナタリーは恋にうかれているとでもいうか、ギルに夢中だ。冷めてる期間がないバカップルである。

 そんなナタリーの考えた《誓いの指輪》をナタリーとギルも装着している。もちろん、ただの指輪ではない。相手を生涯愛することを誓うという名目のもと作られたその指輪は可愛らしい見た目に反して若干呪いの類を連想させる効能だ。

 「《誓いの指輪》ですって、愛する人とはめるためにあるのね。素晴らしいわ」

 「………メキシム。それはそんな可愛らしいものじゃないから無闇に名前に騙されて買うなよ」

 思わず口に出してしまう。本当にそんな可愛いものではない。確かにペアリングであるけれども。

 「《誓いの指輪》ははめている者同士で約束し、指輪についている魔石に血をたらすことによって効能を発揮する。そしてその約束は一種の呪いのように使用者を縛り付ける。約束を破った際には、指輪から軽い電流が走る仕組みになっている。はじめは軽い電流だが、約束をどんどん破っていくと即死につながるほどの電流が流れる。そして一度はめたらその約束を解くために、わざわざお金を払って効果を無くしてもらうか、自力で解除するかしかない」

 《誓いの指輪》の説明をしながらも、恐ろしい魔法具だよなと思う。

 ちなみにこの指輪、割と浮気防止のために女性陣に人気な魔法具だ。中には浮気性な男が寝ている間に血を流し、約束を取り付ける女もいるというのだから何だか恐ろしいものである。

 合意でならともかく、無理やりつけられたら知らないうちの約束のせいで一々体に電流が走るのだ。

 指輪は小さいからそれに術式を組み込むのは結構難しいものである。僕も作るの手伝ったけど、難しかったし。

 それにこれって尋問にも使えるし…。例えば嘘をつくなと約束して、《誓いの指輪》を使用すれば、嘘を付くたびに電流が流れるのだ。

 使い勝手次第でこの《誓いの指輪》も色々な使用法があるものである。まぁ、ナタリーとギルは『他の人間と体を重ねない、結婚しない、ずっと一緒にいる』何て言う約束だ。

 「ふふ、流石ユウは魔法具の事詳しいわねぇ」

 面白そうに優しく笑っているのはミサ姉だ。そんなミサ姉は魔法具の一つ一つを手にとってまじまじと見ていた。

 ミサ姉は僕やルークの通っている学園の卒業生だ。今は17歳で、この街からすぐに行ける隣の領地の領主の娘である。

 結構頻繁にここにやってきてるからすっかりなじんでいるけれども。

 「……でもこれがあったらルークをわたくしだけのものに…寝てる間にでも約束をブツブツ」

 そして、アイワード…。ばっちり聞こえてるんだが、ルークは都合よく聞いてないけど。アイツなんで毎回こういうの一切聞いてないんだろ。

 地元ハーレムメンバーは、アイワードに警戒したような視線を向けているし、女同士のガチバドルとか昔から見たことあったからなれてるけど怖いよなぁと思う。

 あのお手伝いさんのルークを襲う事件より前では、ルークへの感情までは調査されずにお手伝いさんが雇われていた。その頃のお手伝いさん同士のバトルも色々と恐ろしいものだった。

 そういう目でルークを見ている人間を警戒した古株のお手伝いさんに向かって、ルークに夢中な人は『独り占めしたいんでしょ』だのいって喚いてた記憶があるのだが、子供に夢中になってるあんたら怖すぎると思う他なかった。年相応の男に熱を上げるならともかく年齢差を考えてくださいと思う。

 そんなお手伝いさんもルークの前ではにこにこしていたりしていたしなぁと思う。

 「ルー君、これ可愛いよー」

 マー先輩はそういって可愛らしく笑って、ルークに魔法具を差し出している。

 他が色々やってる隙にすかさずルークに話しかけているあたり、マー先輩って結構やるなぁと思う。

 「あー、抜け駆けはいけないんですわ!!」

 「抜け駆けではないでしょ?」

 「いえ、あなたはいつもわたくし達の目を盗んでルークに…っ」

 「チャンスがあるなら話しかけるのは当たり前だよー?」

 マー先輩が笑いながらも、敵意のまなざしでアイワードを見据えている。要するに学園ハーレム陣が色々としている中で、マー先輩はちゃっかりルークの傍をいつも陣どっていたらしい。

 「ユウ、私これもらうわ。それと騒いでごめんね?」

 「ううん。シル姉のせいじゃないからいいよ。確かに大勢で来られるのは困るし、早く帰ってほしいとは思うけど、シル姉達はちゃんと魔法具買ってくれるし…」

 ルークが来る時、やってくるハーレム陣に貴族や商会の娘とかも結構来る。そういう昔馴染みの面々は結構迷惑かけてるしって何か買っていってくれるのだ。カトリーナは花屋の娘だけどルークと一緒にいるためだけに一番安い魔法具をいつも買っていく。本当ルークにもったいないと凄く思う。

 「じゃ、私は先に外でてるから」

 ちなみにルークと一緒にやってくるハーレム達にはきっちり買い物しないなら出ていく、そして買い物が終わったらさっさと出ていくように頼んである。だからシル姉は外で待ってるとさっさと出て行った。

 本当地元の人達はまだいいんだけどなぁ、と思う。

 「えーと、メキシム達も買うの買わないの? まだ見てるならいいけど、買い物しないならすぐ出て行って、あと買い物終わったらルークがまだだろうと出て行ってくれよ」

 どうせ聞かないだろうけど、そう言えば学園ハーレム達に睨まれた。

 「何故あなたにわたくしが指図などされなければならないのですの」

 「そうです。ルークさんがいる所が私の居場所なのよ」

 「そうだ! それに客に向かってそのような態度は――…」

 「あー、ユウ君ごめんね?」

 上からアイワード、メキシム、アフライ先生、マー先輩だ。そして、ルーク。魔法具を熱心に見ながらミサ姉とカトリーナと会話を交わしているからって周りの声聞こえてないのが本当に色々凄いと思う。

 「あなたたち煩いと追い出されるわよ? バカな人達で、ユウも大変ね」

 挑発するようにそう告げて、バカにしたようにメキシム達――もちろんマー先輩除く――に言い放つ。

 「なっ――」

 何だか反論しようとする中で、ルークが丁度良く魔法具一つを手にとってこちらに向かってくるから、学園ハーレム面々は恐ろしくなっていた顔を瞬時に笑顔にかえて、ルークに群がっていく。

 マー先輩だけはこっちにやってきて、

 「欲しいのあるけど、お小遣い前だから今は変えないや。だから今度お小遣い入ったら買うから予約しといてもらえるぅ?」

 そんな風にいった。後から聞くとマー先輩の実家は甘やかされるような家ではなく、定期的なお小遣い以外はバイトするかなんだかんだで手に入れないと手に入らないらしい。

 ミサ姉もカトリーナも、ユキノもルークも買っていったし、マー先輩は予約していったけど他3人は何も買わなかった。

 買わないなら出て行けといっていたのに、本当に営業妨害なのであった。

 ルーク達が去っていたのを見つめながら、僕ははぁと疲れたように思わず息を吐くのであった。


 夏休み中に何か問題が起こらなければいいと思うが、起こる気がしてならない僕であった。

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