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その時は本気で逃げることにします〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様、続〜  作者: みのすけ


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異国の姫5

お立ち寄り頂きありがとうございます。

こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。

設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。

王太子妃宮を出て、王太子宮を経由して馬車にのる。


しばらくして、ユリウス様が馬車に乗り込んできた。

王家直属の者を表す正装に身を包んでおり、王太子殿下の名代あることを示す装飾を付けている。


彼が私を見て少し驚いた。



私も少し驚いた。


私はてっきり侍女と一緒の馬車に乗ると思っていたから。



「王都を出るまではゆっくり過ごして良いとの、王太子殿下のご配慮です」



フェンが馬車の外から声をかけて、そして扉が閉められた。



「……」



「……」



しばらく沈黙が支配する。



「……レイ、その装いは?」



「王太子妃殿下の命です」



私は光沢のある紅の生地に白の差し色、金の刺繍の入った着物を着ている。

それに合わせて髪を結い上げて、髪飾りをたくさん付けている。というか、髪に飾りを刺している。簪という飾りだそうだ。



「良く似合っているけど、髪型が気に入らない。



ユリウス様に引き寄せられる。

彼の唇が首筋に触れる。



「ゆ、ユリウス様、痕は付けないで」



「首筋を出し過ぎだろう?

これでは注目を集める」



「私は注目を集める役目なのだそうです」



「だとしても、割に合わない」



「?」



ユリウス様は王太子殿下に「セレス嬢を着飾っておいたから、ユリウスも気に入ると思うよ。だから彼女の役目には手を出さないでね」と言われたそうだ。



うーん、王太子殿下は一体何を考えているのだろうか?


ユリウス様は殿下の名代で視察へ行く役、私は途中まで同行する異国の姫役。

接点は限られているのに、わざわざ釘を指すような事を言われるなんて。



「レイは化粧映えするのだな。別人の様に見える」



私が考え事をしているうちに、ユリウス様がまじまじと顔を見ていた。



「普段はあまり化粧をしないですから」



今日は衣装に合わせて化粧も濃いのだ。

特に目元が強調されるような仕上がりで目尻に朱色系をのせている。こういうことは初めてで、自分でも別人に見える。



「確かに異国の姫に見えなくもない。

もう他の男に見せたくない」



そう言ってユリウス様が抱きしめてくれた。



「ユリウス様が気に入って下さったなら、着せ替え人形として頑張った甲斐がありました」



私も彼の背に手を回す。



「今からでも耳に魔導具を付けてはだめ?」



「今回はだめです。揃いの耳飾りだとわかると、ユリウス様の醜聞になってしまいかねないので」



私は今は別人を装っている。

それなのにユリウス様と揃いの耳飾りを付けていると、ユリウス様の不貞が疑われてしまうのだ。



「醜聞など、レイが術にかかるより些細なことだ」



「そうならない様に、私も王太子殿下に交渉したのですよ。

そうしたらこれを貸して下さいました」



私は頭に刺さっている簪のうち一つを指差す。

銀の枝と紅の丸い飾りの着いた簪である。


ユリウス様は簪を見て驚いた。


「これは王家所有の術返しの魔導具が付けてある。かなり貴重な物だぞ」


「えっ!そんな貴重な物なのですか?」



「ああ、俺も直に見るのは二度目だ。

こんな貴重な物を加工して持たせるなんて、王太子殿下は相当レイを気に入っているな」



「そんな貴重な物を髪につけて、無くしたらどうしましょう?

私もう、この簪を外したいです」



「それはだめだ。

逆に無くさない様にしっかり身に付けていた方がいい」



「……はい」



しょんぼりして諦めた私を、ユリウス様が面白そうに覗き込む。



「そういう顔をすると付け込まれるぞ」



そう言って唇を奪われた。

いつもありがとうございます。

『異国の姫』の後に最後の話入りたいと思います。

引き続きお付き合い頂ければ幸いです。


評価頂いた方々、ブックマーク頂いた方々、リアクション頂いた方々、毎回励みになります。

ありがとうございます^_^

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