異国の姫2
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こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。
設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。
「セレス嬢、久しいな」
私は王太子宮に参上し、首を垂れる。
「お目にかかれて光栄です、王太子殿下」
「堅苦しいのはいいよ。ユリウスから聞いたけど、記憶が戻ったんだって?」
柔らかな物腰が、今は少しこわい。
でも相手に気付かれてはいけない。
そうすればあっという間に、付け込まれてしまう。
「はい」
「で、記憶を失っていた間のことは覚えてないと?」
「はい、誠に申し訳ございません。
クローディア公爵子息より、記憶を失っていた間に王太子殿下に色々ご配慮頂いたと伺いました。
お気遣い頂き、ありがとうございました」
「気にしなくていいよ。君はオリバーの大事な妹だし。それにね、セレス嬢。君はオリバーを見出しただろう?
その時から、私は君に興味を持っているんだよ」
「兄の剣技は誰が見ても素晴らしいと思います。私が見出したなんてことはございません」
「謙遜だね。君には人を見る目がある。
君が見込んだ人はその後飛躍したね。
オリバー、セレス伯爵、ニール教授、クローディア公爵、ヤン殿下、もちろんユリウスも」
「買いかぶりでございます。お名前を聞いた限りでは、ご自身の力を示されて評価された方々ばかり。私は何もしておりません」
「本当に自覚がないのかな?
だとしても、そうは思わない者はいるよ。
私のようにね」
「誤解を招いたのなら申し訳ないことでございます」
「くくく……そうきたか。
記憶がない君のために今一度言おう。
私なら君を守ってあげられるよ」
王太子殿下は気付いている。
私が彼の家から干渉を受けていることを。
たぶん昔のことまで調べたのだろう。
当主不在の、セレス子爵家の当時を。
確かに私個人が彼の家に対抗する場合、王太子殿下の庇護下にあれば軽々に手出しはされないはず。
しかしそれは、王太子殿下の陣営に取り込まれるということ。私を守るという名目で人質にもできるということ。
それはクローディア公爵家とセレス伯爵家の動向に少なからず影響を与えてしまう。
特にユリウス様のこれからに、足枷をつける様なものだ。
将来の国王になる王太子殿下の陣営に与することは決して悪いことではない。だが王家には王家の思惑があり、貴族の家の利益になるとは限らない。
だから王宮では、貴族としてのバランス感覚が必須なのだ。
そのためにも、王家との適切な距離感が必要になる。
「……勿体無いお言葉ではございますが、記憶をなくした私には全く心当たりがなく……」
これが、この場でできる私の精一杯の対応。
今はこれで切り抜けられても、
次は同じ手は使えないとわかっていても。
「まあ、そう言うと思っていたけれど。
今日のところはこれくらいにしようかな」
王太子殿下は軽い口調で続けられた。
「ところで、今日君を呼んだのは一つお願いがあってね。
君には2日程、昭国ゆかりの姫の振りをしてほしいんだ」
「昭国ゆかりの姫……ですか?」
「そう、それでドレール地方に行ってほしいんだ」
いつもありがとうございます。
『異国の姫』の後に最後の話入りたいと思います。引き続きお付き合い頂ければ幸いです。
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