異国の姫1
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こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。
設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。
今日は久しぶりに街に出た。
公爵邸に帰ってから全く外に出ていなかったので、王都での用事を一気に済ませる。
セレス家にも顔を出した。
セバスチャンとモランにも、改めてセレス家経由で手紙を出した。
2人にはいつまで経っても心配ばかりかけていて、本当に申し訳なく思っている。
だから「私はもう大丈夫」だと手紙に綴った。
久しぶりに傭兵組合にも顔を出す。
「ジーク隊長、お久しぶりです。
密輸品の時は本当にありがとうございました」
「嬢ちゃん、久しぶりだな。
あの時はいきなり連絡が来てびっくりしたけど、良い仕事ができて良かったよ。褒美ももらったしな」
「公爵様もお喜びでしたよ」
「そういや嬢ちゃんは、今、公爵家にいるんだっけ?今日も護衛は付いているんだろうな?」
「えっ?あ、はい、離れた所にいるかと思います」
「なら良かった。少し前に王都近郊で人攫いがあってさ。それが長い黒髪の子ばかりなんだよ。嬢ちゃんも気いつけなよ」
「そうなんですか?知りませんでした。
もしかしてジーク隊長に護衛依頼が来ているのですか?」
「まあな。幸い俺の隊の範囲は被害はないけど、気をつけるに越したことはないからさ」
「ありがとうございます。気をつけます。
ちなみに今はどちらの護衛についているのですか?」
「ナユタ領だよ。
ほら、元ドロール領の南の方」
✳︎
「お嬢様、お疲れ様でした。
これで打ち合わせは終了です。
見本品ができましたら公爵邸にお届け致します。
クローディア公爵夫人が帰国されましたら、よろしくお伝え下さい」
ニコライさんがニコニコして言う。
また新しいことを企んでいるようだ。
「承知しました。よろしくお願いします」
「ところでお嬢様、最近物騒ですので、御身お気をつけ下さいね」
「ニコライさん、それって長い黒髪の子が攫われたという話ですか?」
「ええ、お耳に入っておりましたか。
昭国人気にあやかって、長い黒髪の子の人気の出ているようで、とうとう人攫いまで」
「……そうですか」
私はチラリと頭の中で思った。
昭国文化を広めることを目的にした自分にも、責任の一端があるのではないかと。
「僭越ながら、お嬢様が責任を感じることはありませんからね」
「……そうでしょうか?」
「この流れは、個人の力でどうなるものでもありません。お嬢様がご自身の所為などと思われるのは、思い上がりですよ」
できる商人ニコライさんは、私のことも見透してしまう。その上で真剣に言ってくれていた。
師匠らしい励ましだと思った。
✳︎
公爵邸に帰ると家令が慌てて出て来た。
少し前に王宮から遣いが来たと言う。
私宛の手紙を預かっているとのことで、早速中身を検める。
それは王太子殿下から私への
王宮への呼び出しであった。
まもなくクローディア公爵夫妻は帰国する。
そのタイミングの前に呼び出されるということは……。
もう憶測しても仕方ない。
今夜、ユリウス様に王宮に行くことを報告しなければ。
もし予定が調整できれば、ライオール殿下とミア様にもお詫びに伺いたい。
それもユリウス様に相談しよう。
私は、最後に王宮で見た王太子殿下を思い浮かべる。
冷や汗が出る。
今までの自分は、気配が鋭いことに助けられてきた。
ああ、でも、
世の中には知らない方が良いこともあると思う。
いつもありがとうございます。
『異国の姫』の後に最後の話入りたいと思います。引き続きお付き合い頂ければ幸いです。
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