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その時は本気で逃げることにします〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様、続〜  作者: みのすけ


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後宮20

お立ち寄り頂きありがとうございます。

こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。

設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。

「おい!なんで私達がこのようにコソコソする必要がある?」


私はビヴィ公爵子息と連れ立って、後宮の敷地を人目につかないように移動していた。


「ビヴィ公爵子息は目立ちますから、念には念を入れてコソコソしているのですよ」


後宮に入れるのは限られた男性のみ。

そこに大貴族の公爵家子息が現れたら、侍女達も色めき立つ。しかも彼はまだ若い。


「それは後宮だから仕方ないだろう?」


いい年した大貴族の子息が、こんなことをさせられて戸惑っている様子が声色から伝わる。


「その通りです。その効果が早速出たようです」


「効果?」


「ビヴィ公爵子息、あちらを見て下さい」


私は物陰から見える、侍女の後ろ姿を指す。

向かい側に男性の姿もチラリと見える。

2人は立ち話をしているようだ。


「うん?王弟妃宮の侍女頭ではないか。

あと、あれは本家の……なぜ、こんなところにいる?」


「彼らが話している内容を聞いてもらえますか?」


私はビヴィ公爵子息を、彼らの話し声が届くところまで誘導する。


男性がエダ様を一方的に責めるような声が聞こえる。その剣幕が一段落した後、男性は苛立つ声色で続けた。


「……一体、どうなっているのだ⁈」


「申し訳ございませんが、もう私には抑えられません。セレス嬢は家に帰さないと、職務を辞すと言っております。後宮に入ってから一度も家に帰さないなんて、約束と違うと言っていて……」


こちらは侍女頭エダ様の声。


「ならばまた謹慎させればいい。今度はもっと長い期間閉じ込めろ。適当な罪を言い渡して」


「その手はもう使えません。前の謹慎の時も他の者にまで不審に思われる始末。侍女頭として、宮を混乱させることはできません。これ以上はもう……」


「協力しないと、お前の娘がどうなってもいいのか?嫁いだ先を追い出されて困ることになるぞ。孫娘も婚約を控えているのだろう?」


「それだけはやめて下さい。娘や孫は関係ないですから」


「ならば黙って指示に従え」


「ゔゔ……」

エダ様の泣く声がする。


するとビヴィ公爵子息がスッと立ち上がって、彼らに近付いていく。


「おい、何を話していた?」


そしてエダ様と相手の間に立つ。


「これはビヴィ公爵子息、どうされました?」

男性の困惑する様子が声から伝わる。


「適当な罪を作って謹慎させろと聞こえたが?」

ビヴィ公爵子息のはっきりとした声が響く。


「な、何のことでしょうか?」


「協力しないから、娘を使って強要するのか?」


「そ、それは仕方なく……」


「何が仕方ないか、詳しく聞かせてもらおう。

侍女頭は後で話を聞かせてもらうから、今は宮に戻る様に」


「は、はい」


ビヴィ公爵子息が、エダ様と話していた相手を連れて行く。


足音が聞こえなくなってから、私は立ち上がりエダ様の方へ向かう。



「エダ様、ありがとうございました。

辛い役目をさせてしまい申し訳ありません」


「いえ、大丈夫です」


「後はビヴィ公爵子息に任せれば、大丈夫ですよ」


「本当にありがとうございました」


「王弟妃宮に戻りましょう。

皆心配していますから」



✳︎



ビヴィ公爵子息が連れて行った男性は、エダ様を脅して不当な指示を出していた者だ。

私が本格的に動く前に、その者を押さえる。


そのために私はビヴィ公爵閣下に「御子息を後宮に遣わしてほしい」と願い出ていた。


「御子息」とは次男で、上級官吏のビヴィ公爵子息のこと。特使の件で私が牽制した人だ。


長男は公爵家の跡取りなので、次男は官吏となり王宮内でのビヴィ公爵家の影響力を制御する立場にあるのだろう。


ビヴィ公爵子息は上級官吏としての評価が高い。

伝統を重んじる家柄において先例に偏りがちな決定を、状況に応じて柔軟に対処できる能力がある。

次代の王宮を担う人材だ。


他方、ビヴィ公爵家の中では比較的年若い部類に入るらしく、その実行力を買われてまだ使われる立場でもある。


だから特使の件で、彼は命じられて動いた。彼に命じた者が当主ではないのなら、一族の重鎮にあたる貴族に、私を廃す意思があったのだろう。


ビヴィ公爵家当主の意向を受けて息子を後宮に遣わしてもらえれば、後宮を取り仕切っている役職者は焦るだろう。


当主の次男で一族では上の立場、かつ有能な官吏であるビヴィ公爵子息なら、エダ様の置かれた状況を改善できると考えた。


エダ様には「セレス嬢が家に帰りたいと言ってきかないので、自分には手に負えない」という演技を頼んでいた。


後宮においてビヴィ公爵子息は目立つので、彼が後宮に遣わされたことを知った上で、手駒のエダ様に騒がれたら、相手はすぐに釘を刺しにくると思っていた。


だから現場にビヴィ公爵子息を立ち会わせ、彼が動くように仕向ける。


ビヴィ公爵子息が職務に対して真摯に取り組む姿勢であることは、彼の手掛けた仕事の結果を見れば分かっていた。


エダ様にはこれからも重要な仕事がある。

それに支障が出るようなことは避けたいし、王宮妃宮に影響を及ぼす外部勢力はなるべく排除しておきたい。


王宮妃宮の主人はルイーゼ様なのだから。

そしてルイーゼ様には主人として必要な権限を取り戻して頂く。

ここまでお付き合い頂きました方々、いつもありがとうございます。

完結に向けて、見届けて頂けると嬉しいです。


評価頂いた方々、ブックマーク頂いた方々、リアクション頂いた方々、毎回励みになります。

ありがとうございます^_^

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