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【俺様フェンリル】の飼い主になりました。異世界の命運は私は次第!?~悪を成敗!頭を垂れて我につくばえ~  作者: 酒本アズサ


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76.突発クエスト

 山猫獣人の子供を拾ってから十五分ほど馬車を走らせたところに、三百世帯くらいの村があった。

 これまでの村と同様、塀があっていざという時は門を閉ざして防衛できる造りだ。



 マジョイル国への街道なのだが、サショイノ王国と繋がっている街道に比べて人の行き来が少ない気がする。

 マジョイル国が王制でないのと関係しているのだとオーギュストが教えてくれた。



 何が言いたいのかというと、ぶっちゃけ(さび)れている。

 その証拠に門に誰もおらず、勝手に出入りできる状態だった。



「なんか……宿屋もなさそうだねぇ」



「そうだね、商隊(キャラバン)なんかは節約のために宿屋に泊まらないし、滅多に客が来ないんじゃ生活できないだろうから淘汰(とうた)されるんだろう。せめて住人が多ければ食堂と兼業できるだろうけど、この人口じゃあ食堂や酒場を経営しても儲からないだろうから」



「なるほど」



 オーギュストと話している間にも、私達の馬車は村の中に入っていってるのだが、誰も出て来ない。

 普通は好奇心旺盛な子供とか、野次馬根性で近寄って来る情報通のおば様が出て来るのに。



「人の気配はしているな。どうも警戒されている気がする……」



『うむ、どちらかというと、怯えているというのが正しいな』



「……んっ、ハッ! だ、だれ!?」



 馬車が停止したせいか、山猫獣人の子供が目を覚まして飛び起きた。

 正に毛を逆立てるとはこの事だ。



「私達は旅の途中の冒険者だよ。街道を走っていたら、森から出てきたあなたが馬車の前で倒れたの、覚えてない?」



 できるだけ優しく話かけると、少し考えてから顔を上げた。



「わたし、わるい人たちにつかまったの! それでむちゅうでにげて……ぐすっ、おうちにかえりた……あれ?」



 山猫獣人の子供は、泣きそうになったかと思うと、スンスンと空気中の匂いを嗅いで馬車から飛び降りた。



「おかあさ~ん! おとうさ~ん!」



 ああっ、私の癒しが!

 ……ではなく、どうやらあの子の家はこの村にあるらしい。



「ルネ!?」



 一軒の家から山猫獣人が二人飛び出して来た。

 それを皮切りに次々に人が集まりだしている、ルネちゃん可愛いもんね。

 しかし中にはなぜかまだ不安そうにしている人もいるようだ。



「あなた方がルネを助けてくれたんですか!? ありがとうございます!! それで……あいつらは……?」



「あいつら、とは? その子は森の中で街道に飛び出してきて倒れたから、ここまで連れてきただけだ」



 マティスが説明すると、村の空気が一変した。

 そういえばさっき、ルネちゃんが悪い人達に掴まったって言ってたもんね、逃げた事に気付いたらまた捕まえに来るのかもしれない。

 私は馬車を降りて事情を聞く事にした、母親の胸で泣きつかれて眠ったルネちゃんの顔を見たら当然の行動だろう。



 村人達の話はこうだ。先週から森の中に盗賊団が根城を作り、どうも指名手配から逃げている途中で、村を襲って食料と共にルネちゃんを人質として連れ去ったらしい。

 村の門を閉ざす事も禁止され、また来る言い残して行ったそうだ。



「ふむふむ、その盗賊団は何人くらい? この村の食料で(まかな)えるくらいだから、規模は大きくないでしょ?」



「そうですね……、現れたのは七人でした。そう多くはないものの、我々は戦う事が不得手でして……。かと言って国や冒険者ギルドに助けを求めたらルネを殺すと言われてどうしようもなく……」



 アシルと名乗ったルネちゃんのお父さんがしょんぼりと肩を落とした。

 七人か……それくらいなら私達でなんとかなるかな。

 チラリとマティスを見ると、私の考えをわかっているのか頷いてくれた。



「アーサーもいるし、どうにか」「おいおい、なんでガキがここに戻ってんだよ!!」



 酒やけしたようなダミ声に振り返ると、薄汚れた男達が村の中に入って来た。

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