28.お迎え
マティスより数分遅れて双子達もやってきた。
それを見て様子を伺っていた集落の狼獣人達も安心したように各自の家に帰って行く。
そして私達も家に帰ると、ソファに座って一連の出来事を説明した。
「サキとアーサーはオイラ達が守るから気にしなくていいよ!」
説明を聞いて、リアムが開口一番そう言ってくれた。
マティスとユーゴも頷いている。
「ありがとう。だけどね、一旦アーサーは私と契約しているって周知した方が安全かなぁって思ってる。もしかしたら、そのせいで今はアーサーの事を知らない人にまで知られて狙われるって危険があるのも、否定できないんだけどね。それで……できれば神殿に行くのに三人についてきてほしいなぁって……。三人もここでの生活があるから無理にとは……」
「「「行く!」」」
珍しくユーゴまで大きな声で即答した。
「マティス、ユーゴ、リアム、ありがとう」
「生活の事なら心配ない。以前にも言ったと思うが、フェンリル様が顕現された時のために何があってもいいように蓄えは代々してきているからな。王都に屋敷を構える事も可能だぞ」
心強い……!
「あ、だけどマティスはこの集落の長だよね? それは大丈夫なの?」
「それも問題ない、サキが従魔契約で主になった時点で、我々の役目は終わったも同然なんだ。すでに何人かはこの集落から旅に出たり、移住している者もいるぞ。恐らくオーギュストは遺跡よりアーサーから話を聞いて、文献との内容が正しいか調べるためについてくるだろうな」
『あの猩猩獣人の親子までついて来るのか。まぁ、確かに我と話すたびに興奮しておったからな』
思い返すとオーギュストもアルフォンスも、過去の話や世界の理の話をアーサーがすると、子供みたいに目をキラキラさせて質問攻めにしていたもんね。
そんな時はアルフォンスも普段のナルシストな言動は一切なかった、学者としての素質があるのだろう。
その夜、マティスは集落の皆に事情を説明して、留守の間家の管理を頼んできたと教えてくれた。
翌日、私達は荷物をまとめてサミュエルを待った。
しかし現れたのは白装束集団と、商人のおじいさん、そしてサミュエルと同じ髪と瞳の色をした綺麗な顔の青年だった。
「サキ、考えてくれただろうか」
「…………誰?」
『「「「「「「えええぇぇぇぇえ!?」」」」」」』
その場にいたほとんどが驚きの声をあげた。
なんで皆そんなに驚いているの!?
『サキ、こやつはサミュエルだぞ。昨日本来の姿で来ると言っていたであろう』
「えぇぇっ!? サミュエルなの!? だって大きいよ!? あんなに可愛かったサミュエルが……サミュエルが……っ! てっきり髪と目の色変えてるくらいだと思っていたのに!」
「ンンッ! 私がサミュエルだ。 それで、どうするか決めたか? もし不安なら今後も私が共に行動しよう」
咳払いをして仕切り直した青年改め、サミュエル。
「うん、行く事に決めたよ。その代わり、マティス達も一緒に行く事が条件だけど。フェンリルの眷属だから、私がいない時の通訳もしてもらえるでしょ。あとは……あの親子も」
私の視線の先を皆が見る。
そこには大きな荷物を持った、満面の笑みの猩猩獣人親子がいた。




